ATELIER MUJI有楽町『木を見て森を見る!』展 (ワークショップ特集)
  東京_国産材をつかった生活を豊かにすデザイン

 

   
 
   
  めんどくさいことってそんなにダメですか?
  和田浩一
   
 

2016年10月9日、僕は鹿沼にいた。その2年ほど前から参加している『鹿沼のすごい木工プロジェクト』の活動で『鹿沼のぶっつけ祭(現鹿沼の秋祭り)』に参加するためだった。前日から鹿沼に入り、宿泊先のロッジで明け方まで酒を酌み交わし、一緒に泊まっていた大学院生に偉そうに講釈を垂れている、ただのめんどくさいオッサンだった。二日目の昼前、熊本から直行だという若杉先輩が現れた。僕の顔を見るなり開口一番「和田くん!!コイヤやるばい!!」。二日酔いと寝不足で頭が回ってなかった僕は「(なんかわからんばってん)わかった!!やるばい!!」と二つ返事。
その日からちょうど2年後の2018年10月12日にコイヤが発表された。

6年ほど前だったか、若杉さんから突然電話がかかってきた。「和田くん!!なんでキッチンって一個しかなかと?」(そういえば、この人はいつも突然だ)「若杉さんも気づいたばいね。そぎゃんたい!!やけん、俺はもがきようとよ」
ウチの事務所は住まい、とりわけキッチンに関することをメインの生業としている。常日頃『キッチン』に向き合っているわけなのだが、日本のキッチンは実に嘆かわしい。10の家族があれば、10の食生活=10のキッチンがあってしかるべきなのに、一つしかない。バリエーションがない。扉をはずしてしまえばどれも一緒。メーカー間の差も全くない。もちろんそれを許してしまうユーザーも悪い。しかし一番悪いのはメーカー。「ウチのキッチンはお掃除が楽だし、収納もたっぷりだからこんなに素晴らしいのですよ〜」と耳障りのいい言葉ばかりが並ぶ。しかしそれらの言葉は、裏側にある省力化やコスト削減の隠れ蓑でしかない。そう消費者は巧みに騙されている。メーカーはモノを愛でることを考えず、いかに効率よく、安く作れるかが目標となりそれを実現することがサラリーマンとしての人事評価につながる。
それを採用する工務店も悪い。メーカーの便利な商品、簡単に利益が取れそうな商品が一番だという。そのくせコンサルティング会社からの怪しい提案にホイホイ手を出す。全て周りが用意してくれる。何も考えてない『くれくれ』工務店が実に多い。施主には「◯◯のショールーム行って、キッチン決めてきて」と完全な放置プレー。ここ数年、工務店相手に話をする機会が多いのだが、自分が建てている家に使うドアのレバーハンドルの高ささえ知らない工務店が実に多いことには開いた口が塞がらなかった。

めんどくさいことってそんなにダメですか?

だって、ヒトってこんなにめんどくさいんだよ(若杉さんを見てみ)。そのめんどくさいヒトが集まって家族なんだよ。めんどくさいから愛せるんじゃん。めんどくさいから愛されるんじゃん。そんなヒトが使うモノなんだからキッチンもめんどくさいんだよ。めんどくさいからそのキッチンを愛でることができるんじゃん。

10月12日
大阪でのキッチンイベントから有楽町MIJIに直行。前日の設営に立ち会えなくてごめんね。何もない真っ白な空間から始まる『木を見て森を見る!展』、ワクワクしかない真っ白な空間でのオープニングトークショーには立ち見が出るほどの人で溢れた。資料をまとめていた小山さんから「和田さん枚数減らして!!15分だよ!!200ページもあるよ〜〜」と言われたが、「大丈夫!!4.5秒で1ページ!大丈夫だから」。僕もめんどくさい。

10月14日
午前、専門学校で授業をして、午後、MUJIに直行。
キッチンをつくるワークショップ。10人の方が組み立てに参加してくれて、およそ一時間でキッチンの組み立ては完成。そのほとんどの方が、そのあとの「キッチンを塗る」のワークショップまで参加された。自分が使うキッチンを自分の手でつくることができるなんて、誰の頭の中にもそんなイメージはないだろう。自分で組み立てれば構造が理解できる。自分で塗装すればメンテナンスもできる。
例えば北欧家具はいい木を使い、きちんとメンテナンスをして長く使われる。おじいちゃんの代から100年使っているダイニングチェアーなんて当たり前。だから水がついても大丈夫で、あまりメンテナンスをしなくてもいいウレタン塗装ではなく、(難しいわけではないが)頻繁に手入れが必要なソープフィニッシュで仕上げる。つまりわざとめんどくさい仕上げにしている。
さすがにキッチンをソープフィニッシュで仕上げることは避けた方がいいと思うが、ウレタン塗装でもペーパーを当てて研磨して、再塗装することができる。オイルフィニッシュでもいいだろう。

 
     
自分でつくるKOIYAのキッチン。自分でメンテナンスできるKOIYAのキッチン、長く愛して、すごーく愛して。
例えば北欧家具はいい木を使い、きちんとメンテナンスをして長く使われる。おじいちゃんの代から100年使っているダイニングチェアーなんて当たり前。だから水がついても大丈夫で、あまりメンテナンスをしなくてもいいウレタン塗装ではなく、(難しいわけではないが)頻繁に手入れが必要なソープフィニッシュで仕上げる。つまりわざとめんどくさい仕上げにしている。
さすがにキッチンをソープフィニッシュで仕上げることは避けた方がいいと思うが、ウレタン塗装でもペーパーを当てて研磨して、再塗装することができる。オイルフィニッシュでもいいだろう。
自分でつくるKOIYAのキッチン。自分でメンテナンスできるKOIYAのキッチン、長く愛して、すごーく愛して。
 
     
 
   
 
 
     
 
   
 

●<わだ・こういち> 株式会社STUDIO KAZ

 
   
  より愛着のもてる日用品
  吉田道生
   
  コイヤプロジェクトで私も「ティッシュケースづくり」「コーヒードリッパーづくり」のワークショップをやらせていただきました。木でできた日用品を買って使うのではなく、木の日用品を自分で組み立ててみて、より愛着のもてる日用品として使ってもらいたい!そう考えて行ってみたワークショップです。
私が仕事している細田木材工業は建築系の木材の製造会社で、大きな木の加工は得意なのですが、日用品のような小型の木材加工にはあまり向いていないのです。でもレーザーカッターといういい機械がありこれを使って木材の残材を加工しティッシュケースやコーヒードリッパーのキットをつくりました。

参加して下さった方たちに、レーザーカッターで加工された木のパーツをサンドペーパーで磨いて仕上げ、ボンドで張り合わせて組み立ててもらいました。
今回参加して下さった方たちは男性より、女性の方や親子連れの方が多く、皆さん順調に組み立てを進めてくださって良かったです!今まではモノづくりのイベントに関わるのは男性が多かったと思いますが、これからのモノづくりを推進してくれるのは女性たちだなと今回も感じました。
今回のワークショップで私は、参加者の方たちの組み立てが順調に進んだら、もう一つ組み立てしてもらおうと、おまけのキットも用意していました。ティッシュケースのおまけはポケットティッシュ用のミニティッシュケースキット!コーヒードリッパーのおまけはコースターキット!でした。このおまけキットもとても好評で用意しておいてほんとに良かったです。
またこうした参加者の方たちと一緒に木のモノづくりを楽しむワークショップをこれからも是非やっていきたいと思います。今回のワークショップでは、コイヤプロジェクトの方たちや、良品計画の方たちに大変お世話になりました。ご支援いただきどうもありがとうございました。
   
 
   
 
 
     
 
   
 
   
 

●<よしだ・みちお> 細田木材工業

   
 
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