短期連載
  佐渡の話2 〜笹川十八枚村物語〜 /第9話 「法被の風景」
文/写真 崎谷浩一郎
   
 
 
 

 2013年3月に案山子型解説サイン(通称:たもっちゃん)の取り付けは無事に完了した。笹川に本格的に関わり始めておよそ1年少し。モノは小さいけれど大きな成果になった。ひとつひとつ、微妙に表情が違う案山子が新たな笹川の住人(正確には十(・)人ではなく十二(・・)人であるが)になり、笹川に新しい風景が生まれた。

   
 

 ただ、笹川の風景で、気になる風景があった。それは毎年4月15日に行われる"祭りの風景"である。この連載の第1話(http://www.m-sugi.com/89/m-sugi_89_sakitani.htm)でもご紹介した祭りである。僕たちが初めてその祭りに参加したのは、2012年の4月15日だった。朝、神社の境内に集まると青い法被が配られ、僕らもそれを着た。法被を着て神社の本堂にあがり、祝詞をあげて、ホラ貝を吹きながら獅子とともに集落を周る。

   
 
  2012年の祭りの合間の風景
   
 

 しかし、皆が着ているこの法被。彩度高めの青をベースに鮮やかな赤の襟元に「アルコール共和国」と書いてある。聞けば、昭和58年に佐渡市が合併する前に、地元真野町を酒どころとして観光PRするためにアルコール共和国として宣言したもので、当時は大統領とかもいたらしい。それはいいとしても、春の訪れと1年の五穀豊穣を祈る笹川集落の祭りの風景の中で、どうもこの法被の風景にだけは違和感を覚えた。

   
 

 それから1年後の2013年3月、再び笹川は祭りの季節を迎えようとしていた。新しいサインも立ち、初めての祭りである。笹川の法被はつくりたいね、と南雲さんと話はしていた。あとはタイミングと予算が問題だった。やるとすれば、タイミングは次の祭り、予算は…何とかしよう(笑)。ということで法被をつくることにした。『…それくらいのことはやろう。ぼくらは笹川の成功を死守する責任と日本の未来にメッセージを残す責任がある。』当時の南雲さんからのメッセージだ。熱い。

   
 
  笹川法被のデザイン
   
 

 法被のデザインは南雲事務所の出水さんがやってくれた。法被や手ぬぐいはスギダラでお手の物という。色は藍(愛)をベースに、南雲さんが考案した笹川のロゴマークと虎丸山のモチーフが白抜きで背中にあしらわれた。胸元には虎に丸、砂金採りの川が裾を取り巻き、襟元には「笹川十八枚村砂金山」と入れた。砂金山としての誇りは今も集落の方々から失われていないと感じていた。

   
 
  2013年の祭りの合間の風景
   
 

 2013年4月15日。昨年に引き続き2度目の笹川の祭り。今回は初めて佐渡に上陸した出水さんも一緒だ。東京で実寸大模型をつくっていた出水さんは初めて本物の案山子サインに出会えって、感動もひとしおのようであった。もちろん法被は、笹川の人たちによく似合い、案山子サインにもよく似合った。何より笹川の風景によく似合っていた。

   
 
  笹川法被を着こなす案山子サイン
   
 
  後ろ姿も決まってる
   
 
  笹川法被を着て皆で記念撮影(撮影:出水さん)
  (つづく)
   
   
   
   
  ●<さきたに・こういちろう>
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