特集 Obisugi Design in New York
  「若者、馬鹿者、よそ者」と「よそ者になった出身者」で地域を変える
文•写真/齋藤隆太
   
 
  「クラウドファンディングってなんね?ふーん・・・」

2012年4月、10年前に上京して離れたふるさと宮崎で、僕は多くの人を相手に、必死に説明に回っていた。
それから2ヶ月後の6月末、地域×クラウドファンディング「FAAVO(ファーボ)」の
最初の展開エリアである「FAAVO宮崎」をスタートさせた時、まさに夢見ていた風景が、
今目の前にあることが心の底から嬉しいし、誇らしい。

それこそ、「飫肥杉世界展開プロジェクト」の姿である。

元々、クラウドファンディングとはインターネットを介して、個人や団体のアイディアに
少額の支援金を集める手法の名前である。クラウド(crowd)は群衆、ファンディング(funding)は資金調達の意味を持つ。
1980年〜バブル期のモノの絶対価値が評価された時代から、失われた10年と呼ばれる不景気の時代しか知らない世代が社会に出始めて、モノを背景にあるストーリーを含め「共感」で購入するような傾向をうまく捉えて世界中で流行している手法だ。
世界的には、一つのプロジェクトで10億円を超えるようなオバケプロジェクトも出てきている。

「Favorite(好きな気持ち)」と「Action(行動)」の頭文字を取った造語であり、この「共感」の部分を「ふるさと」に求めようとしている、正確には思いださせようとしているのがFAAVOだ。

つまり、遠い昔に過ごしたふるさとへの気持ちを支援金という具体的なアクションに転換する仕組みである。民間版の"ふるさと納税"と置き換えるとピンとくる方も多いのではないだろうか。
このFAAVOを企画した私自身も宮崎の出身で、「地元と繋がりたい!」「地元のために何かしたい!」と思うものの、具体的に動けていなかったタイプであるし、東京に出てくると、同じ思いを持った地方出身者は山ほどいる。その発露が県人会であり、地元愛である。

ふるさと納税よりももっと気軽に、簡単に地元とつながれること、「出身地と出身者をつなげる」ことをFAAVOはコンセプトとしている。
補助金や助成金でなく、出身者からの支援金で地元の地域活性化プロジェクトが動き出し、うねりを起こし、地域を少しづつかえていくような世の中にしたい、と考えていた。

飫肥杉世界展開プロジェクトでは、東京にいながら少しではあるがその手助けができたかな、と思っている。アイディアレベルで大きい夢を打ち出した齋藤潤一代表に、豊かな個性が持ったメンバーが一つのチームになり、FAAVOの中で、大きいチャレンジを成し遂げてくれた。本当に感謝しているし、見ていてカッコ良かった。

「そんなことできっこないよ」と言われがちな地域の中で、逆境を恐れずに一日を踏み出し、存在感を発揮し、結果まで出していく。しかもそれが、国や自治体のお金に頼らない、出身者たちの想いの乗った支援金で。
こんなプロジェクトが日本中で巻き起こり、クラウドファンディングを使うのが普通になる。そして、地方の面白い人達が顕在化して、東京の一極集中から地方に平坦に人が散らばって住むようになる。本気でこのような社会を目指してFAAVOをこれからも運営していきたい。
   
 
   
   
   
   
  ●<さいとう・りゅうた> 株式会社サーチフィールド FAAVO 事業責任者
   
 
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