杉々つながる 読者つぶやきコーナー
  読者からの投稿ページです。日頃思っていること、最近あったこと、何でもok。つぶやいた後は、次の方を指名していただきます。どんどんつながる「スギずな」です。
 
  No.003 「木造の可能性」
  文/遠藤啓美
   
 

大きな施設を木造で設計する機会が増えてきた。 少し前までは大空間を必要とする施設は、基本設計の段階から迷いなく鉄骨造もしくはRC造で計画を進めていたが、最近はまず 「木造で出来ないか」 を検討する。 そのため弊社では、この数年間で幼稚園・診療所・高齢者施設・集会施設など、大空間を有する木造建築の実績もかなり増えてきた。 宮崎県でも県産材の利用に力を入れているが、これは2010年に施行された「公共建築物木材利用促進法」により、国が率先して公共建築物の木造化を促進している流れで、全国的にも学校や保育所などの教育施設はもちろん、これまであまり木造では建築されなかったものまで木造建築にする動きが進んでいる。 

出来るだけ木造建築としたい理由はいくつかあるが、ひとつは温暖化対策などの地球環境保護に貢献できるということ。 また、杉などの地元資源が使えるということ。 それにより地元産業が元気になるということ。 そしてもうひとつの理由が木造の最大の魅力だと思うが、木造空間が与える心地よさは人間の五感に癒しを与えてくれる、ということだと思っている。 
木は自然素材であると同時に、日本の風土に根付いた伝統的な素材であることから、本能的な居心地の良さを私たちに与えてくれる。

その日本の伝統的な素材が、いま新たな素材として未知の可能性を秘めている。
木材の研究が進み、これまでは不可能だった耐火建築物要求の建築も木造で実現可能になってきているということと、プログラムソフトの進化により、構造解析がこれまでよりも手間をかけずに出来るようになってきたということで、いままで木造ではありえなかった大規模建築物が木造で挑戦されてきている。 
日本の伝統と現代技術の融合による新しい木造空間がどんどん生まれようとしている。
2020年の東京オリンピックに向けて、世界に発信する新発想の木造建築物とは、果たしてどのようなものなのか・・・…、とても楽しみにしている。

   
 
  弊社設計の物件、延岡市内の木材加工工場です。
   
  ●<えんどう・ひろみ> 小嶋凌衛建築設計事務所 勤務  一級建築士
   
 
   
   
  No,002 「杉の味」
  文 / 末永慎治
   
 

杉材を使って家具・建具を作らせていただく時に、お客様によく言う言葉がある。
「合板を作った品物は翌日から古くなりますが、本物の材料を使って作ると、翌日からこの家に合った味が出ます」と。
日光に当たり、薄い白ピンクの木肌が飴色に変色し、湿気・脂っ気などを吸い込み、その家の条件によって、その製品は自分なりに成熟していく。

そんな事を思うようになったのは、最近の事だ・・・。
もうすぐ還暦の時になり、自然物のわびさびが少しずつわかってきたのだろうか。
本物の木は夏に水分を含み、若干だが膨らみ、冬にはその水分を放出して少し痩せる。
それは使っていただくお客様へ最も気を使うところでもある。
当然、そのたびに、2ミリ3ミリの誤差が生じるので、それを許さないお客様には不向きである。
大敵は、つけっぱなしのエアコンと直射日光!
この場合、痩せるのみで、おまけに木目が曲がっていると乾燥と同時にねじれてしまう。

家のデザインや周りの雰囲気、ライフワーク、動線から建具・家具の材質・形・色を決めていき、お客様と膝をつき合わせて作っていく。
一つとして同じサイズ、デザインの物はない。

今、その醍醐味を、大学を卒業して後を継いでくれた息子と味わっている。
幸いにも、今年32歳になるその息子と一緒に28歳の娘も汗を流している。
子どもたちが、木材のわびさびをわかるようになるまでは、もう少しかかるだろうが・・・。
いつまで同じ仕事が出来るのだろうかと思う、今日この頃である。

   
  ●<すえなが・しんじ> 有限会社末永家具 代表取締役 
   
 
   
   
  NO.001 「杉建具のススメ」
  文 / 土井裕子
   
 
 家をリノベーションして3年になる。築42年のコンクリートの家だが、家業が生コン業ということもあって、まだ河原から砂利や砂が採れていた頃のコンクリートなので、区体は大事に残す事にした。
 自分達の年齢も考えてバリアーフリー仕様にするため、すべてのドアをトイレも含め、杉の障子の引き戸にした。
 これには別の思いもある。
 宮崎県の杉は「長伐期化」を進めている。一方、長伐期で作れる無地や柾の柱を必要とする家はほとんど無くなって来ている。鴨居、長押の付いた部屋はもう無いに等しい。それで長伐期で太く成長した木に付加価値を付ける使い道として、建具ではと考えてみたのである。
 結果は大成功。框を大きく取って少し洋風に作った障子には、ワーロンを入れて破れにくくしている。トイレも外から人の気配が分かってなかなかに良いし、昨今はバリアーフリー化の進展で、エマージェンシー機能の付いたしゃれた鎌錠も手に入る。
 
   日本は大工だけでなく、建具や指物の職人の技術も世界一であるが、建具は既製品に押され、親しくしていた建具屋さんが廃業してしまい、今回は昔、隣組で、親子二代に渡って付き合いのある末永家具さんに、諸塚の杉で作ってもらった。
 次は、こんな建具をカリフォルニアあたりに売れない物かと考えている。
 スギダラメンバーの方で、輸出に強い方がいたら是非、考えて頂けないだろうか。
   
  ●<どい・ゆうこ> NPO法人五ヶ瀬川流域ネットワーク 理事長
   
 
   
   
   
   
 
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