特集 延岡・城山の杉ベンチ
  2つの思いを込めた「延岡ベンチ」
文/写真 土井裕子
   
 
 
 

 国際ソロプチミスト延岡が35周年を迎え、延岡市へ記念寄付の相談に行ったところ、市長さんから「延岡市のセントラルパークである城山の鐘突堂広場に、ベンチが欲しい」というお話しがあった。

 このベンチには、様々な思いを込めたいと、早速、日向駅にある杉のベンチの事を思い出し、月刊『杉』に連絡をすると、編集部の内田さんから南雲勝志先生を紹介され、現地城山を見ていただくことになった。

 現地には、延岡市の都市計画課も来て下さり、日向駅舎等で南雲先生のデザインを実際に制作された海野建設の海野さんも同行して下さった。

 サイズや、機能についてなどの打合せを行い、しばらくすると、海野さんを通じて設計図が届き、クラブの例会で披露すると、会員も満足そうだった。

 その後、海野さんから2月2日南雲先生が日向に見えるのに合わせて、実際にベンチを組み立ててみるとの連絡があり、現会長三原さん、35周年会長日高さん、ベンチ担当の私の3人で、日向の海野さんの事務所へ見学に行った。最初に図面で見たより、角が丸くなっているが、ボリュームのある、存在感のあるベンチが出来上がっていた。

 再度、都市計画課と、城山の鐘突堂広場で打合せを行い、詳細な設置場所や設置日の相談、搬入路などを決めた。お披露目は3月29日、日曜日、大安。会員でリグニンを塗った後、お花見もしようということになった。

 そして、この日を迎えた。このベンチには2つの思いが込められている。一つは、このベンチが70年生の杉で作られていることだ。杉生産日本一を20年以上続けている宮崎県ではあるが、思うような価格では売れず、材価が安いのも悩みになっている。それで、最も効率の良い35年で伐るのではなく、山にもっと長くおいて長伐期とする施策が奨められている。今は倍の70年とか100年山におく事が奨励されている。でも長く置いても付加価値の高い用途はなかなか示されていない。このベンチに70年生の杉を使うことによって、ささやかだが、長伐期の杉の用途が示せればと思っている。

 もう一つは、塗料として「リグニン」を使う事である。これは知人が今、隠岐の島で関わっている「緑のコンビナート」事業の取り組みの一つだ。リグニンとは、木材を構成している主要成分のひとつ。だが、パルプ製造においては不要となる成分で、パルプ製造過程で排出される廃液に多量に含まれていることから、リグニンの利用が試みられ、塗料として使うと防腐、防水効果があることがわかった。杉にはこのリグニンが多く含まれている。そこで、その実験として、ベンチにリグニンを塗ることにした。このリグニンの新たな利用法が確立すると、杉の端材に燃やすだけでない付加価値をもたらすことが出来る。残念なことに、お披露目当日、会員で塗ることになっていたが前夜の雨で延期となってしまった。これについては、また後日、お伝えしたいと思う。

 このベンチのデザインに世界的なデザイナー南雲先生が関わってくれたことで、市長がこのベンチをもっと延岡市内に沢山置く事が出来ないだろうかと言って下さった。延岡には3つのロータリークラブとライオンズクラブがある。私達も40周年の寄付もこのベンチにしようと言っている。

 ソロプチミストが関わったささやかなプロジェクトから、杉山を少しでも救うことが出来れば、とても嬉しいことだと思っている。

   
 
  ベンチでお花見
   
 
  ベンチ贈呈式
   
   
   
   
  ●<どい・ゆうこ> 国際ソロプチミスト延岡
   
 
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