特集  『木とくらす』 - はたらく、まなぶ -  【良品計画 x 内田洋行】
  良品からみた協業

文 / 林 高平

   
 
 
  「日本の木の家具」開発のWOW!!と苦労ばなし
   
 

先日、内田洋行様新川オフィスにて共同で行なった展示会が無事終わりました。まずは、お客様、製作いただく方、協力いただいた方、プロジェクトメンバーの方、関わった皆様に御礼申し上げます。
こんな素晴らしい取り組みのメンバーに加われたこと、そして今後も皆様とつながって活動できる事を非常に嬉しく思います。

まずは自己紹介から。私は無印良品でインテリアアドバイザーマネージャーという少し変わった役職で、一番お客様に接する機会の多いインテリア専任の販売部隊の、コントラクトのマネージャーをしております。
私は日々、単純にモノを売る事ではなく、ブランドテラーとして無印良品のワケを伝え、コトを売る事を最も大切にしています。そのワケの伝え方として、WOW!!と苦労ばなしというキーワードを大切にしています。
何を書こうかな、、と考えながら書いておりますが、ざっくばらんにこの2つのキーワードを意識して、今回の開発秘話のような事を書いていければと思います。

   
 
  「取り組みのきっかけ」
   
 

今回内田洋行様との取り組みが始まったのは、2年ほど前でしょうか。MUJIキャナルシティ博多で改装の話があり、その中のインテリア相談カウンターというコーナーのしつらえを私が担当する事になりました。そこでの改装のテーマは「土着化」で、現地のクリエイターや共感できる取り組みをされている方を紹介できるコーナーをつくるなど、より地域に根付いた、そこにしかない無印良品を作る事が命題でした。空間作りもまた同じく、そこにある物で場を作る事をテーマに考える必要がありました。その同時期に若杉さんのチームから中空パネルやwoodinfillをご紹介いただく機会があり、中空パネルは宮崎で作っている事を聞きます。材の魅力はもちろんの事、九州という広義で見ると、地産材で空間を作る事ができるなら、是非採用したい!という事で店舗空間に採用させていただいたわけです。
当時はwoodinfillも開発中の商品だったと思うのですが、とにかく勝手がわからず、どのようにプランニングも構造もほとんどわからず、しかも時間も限られているという、いつも通りがんじがらめで追い込まれながら立ち上げをしていったのです。その甲斐もあり、杉だらけの空間も新しく、テーマに沿った空間に仕上げる事ができました。
また、MUJIキャナルシティ博多はmujibooks・open mujiという初めての試みとなるサービスを多く含んでいたため、非常に多くの方に見ていただけた注目の場になった事で、取り組みを続けるにも弾みがかかりました。

   
 
  MUJIキャナルシティ博多
   
 
 
   
 
  「オフィスリノベーションでオブザベーション」
   
 

キャナルシティを立ち上げた後は、すぐに良品計画の本社の一部(ワンフロア)を改装する事になります。
無印良品の商品開発ではオブザベーション(観察する事)を大切にしておりますが、改装前のオフィスを見つめ直す事。すでに20年ほど使用したオフィスのレイアウト・家具では収納量もデスク数も無理が生じ、お世辞にも素敵な場で働いているとは言い難い環境でした。
これまた時間がなく、ほぼ1ヶ月ちょっとで作ったのではないでしょうか。そこでは無印良品のはたらく場として、家具の開発のトライアルをするだけでなく、しまい方・レイアウト・コードマネジメントとより具体的なイメージを膨らませていく場として活動する事になります。様々な反省もありましたが、この後は、有楽町の改装、本社別フロアの改装とスピード感を持って、自分たちが自らモニターとなって場の改善を体感していきました。全てはその先の、本当に必要なサービスを必要な形で届けるための活動になっていたと、今になって思います。この活動は、終さらに規模を広げ、ぐんぐんとスピードをあげて続いております。

   
 
  良品計画本社
   
 
 
   
 
   
 
  「感じ良いくらしの実現のために」
   
 

様々な場で体感した、はたらく場に必要なモノとコト。失敗や苦労してわかった事はたくさんあります。それは本プロジェクトのコンセプト作り・本質を見出すためにも大きく活かされました。
無印良品のコンセプトは『感じ良いくらし』の実現のため、商いを通じて社会に貢献する事です。このコンセプトのもと、無印良品は、寝る・食べる・座るといった住まう行為に関わるモノを、生活者だけでなく、生産者にも配慮したものづくりとサービスで提案しております。
その一方で、はたらくという行為に関わる商品については、多くは作っておりませんでした。このはたらく行為は1日の3分の1の時間を占めており、はたらく場もくらしの一部に含まれるのではないか。感じ良いくらしをつくるには、感じい良いはたらく場も考えなくては!その考えのもと、今回のプロジェクトの骨子をさらに固めていったのです。
考えるのは良いのですが、今まで家庭向けの商品・サービスを中心に考えてきた無印良品では、全く新しいステージでしたので、全てが初めての事ばかりで、本当に苦労をしました。「なぜ内田洋行様と取り組んでいるのか」「なぜ国産材なのか」「なぜ無印良品がオフィス向け家具を?」などなど、何度色々な場で説明した事か・・・
ですがその分、本家具やコンセプトには非常に熱い想いがこもったものに仕上がっております。

   
 
  『木とくらす』 - はたらく、まなぶ - の展示会の様子
   
 
 
   
 
   
 
   
 
  「国産材を使うワケ」
   
 

ほとんど杉について話していないので、少しだけ・・・
今まで素材を大切にしてきた無印良品では、中空パネルは非常にワケの詰まったとても魅力的なアイテムでした。
また、中空パネルも製材工場で生産をされておりますが、この工場のラインも極力変える事なく、生産をしていただき、建材を家具として転用する事も意味のある事だと思います。
森林資源として杉を活用するだけでなく、このように余す事なく材を活用するという取り組みは、続けていかなければいけない事として、商いを通じて支援していく使命を感じております。さらにこの取り組みを全国で広めていければ、と思います。
商品にするワケもそうですが、使う方にもメリットがないと、この取り組みは続いていきません。杉は通常柔らかく、大量生産する家具には適さないものとレッテルを貼られる事があります。トラブルの原因にもなるため、避けて通る事が多い印象がありますが、森林環境・生産者・肌触り・心地よさ、使う意味は本当に多く詰まったものです。後はその伝え方だけを間違えなければ、絶対に続いていく取り組みです。
本プロジェクトは企業として実現した事もすごい事だと思います。ついに念願の販売のステージにいく事が出来たのですが、今後重要な事は、メリットもデメリットも正直に伝えていく事が必要です。「木は節目があり、反るけどそれが愛着になりますよ!」というごにょごにょと濁した販売方法は杉の家具に関しては適していません。「反って、傷ついて、凹んで、これはどうしようもありません!でもこの家具を使うワケは、こんなに詰まっているのです!」と伝え続ければ、きっと全国に取り組みが進む事でしょう。
そのためにはプロモーションの方法も、使い方の方法も、杉の特性の伝え方も、見誤らないように注意をしていきたいと思います。

だいたい、伝えたい事は書けたと思いますが、、、
改めまして、今回関わった皆様に感謝申し上げます。今後もライフワークとして活動を続けていきたいので、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

   
   
   
   
  ●<はやし・こうへい> 株式会社 良品計画
無印良品有楽町リニューアルオープン
   
 
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