特集  Open MUJI 有楽町 2016
  「自由に過ごせる場」の提案から「ぶっ飛んだイベント」へ

文/写真 渡部奈保

   
 
 
 

初めに、9月17〜19日無事に開催。大盛況の内に終えることができたことをお礼申し上げます。

まずは自己紹介から。
無印良品 有楽町 インテリアアドバイザーの渡部奈保と申します。
普段は店頭にいらっしゃったお客様に感じよい暮らしを送っていただけるようインテリアに関するご相談に日々お応えしております。
そんな私が、今回、OpenMUJI有楽町を開催から、大きく企画運営に関わった経緯からお話します。

   
 
  【イタリア・ミラノサローネ】
   
 

実は、遡って思い返すと今年4月にインテリアアドバイザーのチームで毎年イタリアミラノで行われているミラノサローネに行ったことから始まります。
ミラノでは世界中のトップブランドが集結しており、滞在中はそれはそれは刺激的な時間を過ごすことが出来ました。(その話を語れば、夜が開ける為、割愛します。笑)
インテリアアドバイザー以下IAチームは今回のミラノサローネで、「人が集まる」をテーマにミラノを視察しました。
単純にもっと客数を増やす、新規顧客を増やすにはどうしたらいいのか。無印良品に今足りないものはなんなのか。
日本、世界問わず、人が集まっている場所には何かあるはずだ。と片っ端から人の集まっている場所の写真を撮り、訳を探ろうとしました。
その結果、人が集まっている場所は大きく2つに分かれます。
「ブランド」に人が集まっている
「何故か」人が集まっている
無印良品はブランドとしては既にある程度、確立されています。では、今回はその「何故か」を突き止めることに意味があるのではないかと考えました。
「何故か」人が集まっている。
この「何故か」はお客様が過ごし方を選べる場所なのではないかと。
「自分にあった過ごし方ができる店」として、一番に思い出してもらえたら「人が集まる」
とりあえず、「無印良品に行こう!」
そう思ってもらうには、「余地」=お客様が過ごし方を選べる場が必要だという結論になりました。
現在の無印良品の店舗には、お客様が自由に過ごせるスペースというのがほとんどありません。店舗には商品が並び、無印良品の商品に用がある方しか来ていただけない状況です。
無印良品の商品のように、お客様に使い方の余地は残し、個性は委ねるという発想の元、自由に過ごせる場を作ったら人が集まる!そんな内容のミラノ視察の報告提案書を提出しました。金井さんには「こんなことをIAは考えていたのか」「これから絶対に必要なことだ」と沢山のお言葉をいただけたと、プレゼンをした先輩から聞きました。提案するだけではく、ここから検証をしなければならないという話になったのですが、検証が出来るような場所とタイミングを探しているも中々実際に動けそうな場所は見つからず、日々の業務をこなす毎日でした。

   
 
  【周年祭企画立案】
   
 

そうこうしている内に、6月初旬頃、ミラノに一緒に行ったIAマネージャーの横山さんから「新井さん(無印良品 有楽町店長)から、改装1周年記念にイベント周年祭を考えている。何かいいアイディアない?と聞かれている。ここでミラノの検証をしよう!」と声が掛かります。
横山さんの案は、丸の内仲通りを100m無印良品がジャックして、店舗の外に出てイベントをしようというものでした。そこから週末には新井さんに企画を考え報告。しかし、中々これだ!というものを出せずにいました。
そんなことが続いたある日、横山さんと同じIAマネージャーの林さんが打ち合わせに突如現れました。横山さんから周年祭の話を聞き、何かいいアイディアはないか?と打ち合わせに参加してくれたのです。

   
 
  【スギダラケ倶楽部との出会い】
   
 

そこで林さんから紹介されたのが、スギダラケ倶楽部の方々でした。
スギダラケ倶楽部、名前を聞いただけでは何をしている団体かわかりません。笑 
林さんは無印良品が外に出て行くには理由がいる。外に出るからには、無印良品としてだけでなく、丸の内の街に対して、なにか意味のあるイベントにしなければならない。と。そこで、考えたのは無印良品に今あるコンテンツで「OpenMUJI」というものがあります。無印良品が考えているコトを提案し、お客さまとともに考え、会話し、活動する空間なのですが、そんな空間がありながらも、店舗面積に対してスペースが小さく、満足に本来の意図が生かされていない状態です。 そのOpenMUJIが空間の大きさを求めて外に出れば、各界で活躍するクリエイターを招待したイベントやワークショップを開催し、情報発信のプラットフォームとしてお客様との交流が広がるのではないかと考えました。
林さんはスギダラケ倶楽部は全国に支部があり、会員は2000名近く。皆それぞれ、地域に根付き情報を発信し、地域を盛り上げようと頑張っている人達だ。杉材の屋台をそれぞれの支部が所有しているから、その屋台を丸の内仲通りに集結させよう!と言うのです。なにそれ、面白そう!と思いました。同時に、そんなこと可能なのか?という不安も。なぜなら、イベントは開催期間3日間とも、11時から17時限定で仲通りを借りているため、イベント設備は毎日搬入撤去を繰り返さなければならなかったからです。車道部分は11時〜17時以外はまっさらな状態に戻す。これは絶対条件でした。
ですが、企画段階では最大限のぶっ飛んだ内容で。そこから現実的にそぎ落とす作業は僕たちがします。と新井さんから言われていたこともあり、スギダラケ倶楽部の方々に協力を依頼する前にも関わらず笑、勝手に企画書は出来ていきました。笑

   
 
  【周年祭企画始動!】
   
 

そんなこんなで新井さんから社内プレゼンが通った!という知らせを聞き、いよいよイベント開催に向けて本格的に動いていかなければ!という段階になったのですが、初めてのイベントだったこともあり、まず何をしなければならないかがわからない。誰が、なにを、いつまでに、必要かというスケジュールを立てることすら出来なかったのです。それではいつまでたっても進みません。企画書がぶっ飛んだ内容で最大限やりたいことを詰め込んだ状態で社内的には通った為、スギダラケ倶楽部を含めたイベントコンテンツはおかげさまで6つのプロジェクトにまで増えました。このイベントはとても横山・林・渡部だけでは進んでいきません。そこで第一に新井さんに店内組織図を作っていただきました。有楽町の社員全員を巻き込んで、このイベントを成功させようと舵をきっていただいたのです。

   
 
  【周年祭準備…】
   
 

この企画が現実的に具体的に動き出したのは7月半ばでした。この時点で、開催まであと2ヶ月。圧倒的に時間が足りないという空気がビンビン張り詰めています。
企画のこういったことをしたいというようなコンテンツは出たが、肝心な中身がない。
7月中には詳細を決め、8月半ばにはニュースリリース。を目指す。
そんなざっくりとしたスケジュールの中で、毎週定例MTGに臨むが各コンテンツの進展が目に見えてない。やばい。あんな盛大な企画書を出しておいて、出来ませんでした。じゃ済みません。社として今回の企画書をみて、このイベントにかける予算を増額してくださったのに、自分達だけが満足感のある学園祭みたいにするわけにはいかない。焦りと不安の毎日でした。
このイベントが急に進展を見せ始めたのが、スギダラケ倶楽部の皆様の屋台や出店情報が続々と入ってきてからです。
仲通りの平面図に屋台を落とし込む。その図を見た時に、このイベントは絶対に面白くなる。と直感的にですが感じました。何故なら、そんな屋台が100mも並んでいる光景を見たことがなかったからです。
ただ、全国からこんなに沢山の屋台を持ってくるって一体金額がいくらかかるんだろう。予算絶対足りない…。と別の悩みが発生しますが、それは店舗の力でなんとかしてくれました。笑

   
 
  【スギダラケ事務局】
   
 

イベントの内容を詰めていく中で、スギダラケ事務局の方々と打ち合わせをさせていただく機会が何度かありました。法人担当の林さんは以前から面識のある方々ばかりだということで、気心もしれているようでしたし、初め緊張していたのは私だけだったかもしれません。笑
打ち合わせの最中、こういったことを考えています。ということに対して、事務局の方々は第一声いつも「やりましょう!」でした。仕事としてやっているワケではないのに、この熱量はどこから出てくるんだろう。すごいなこの人達!そんな印象でした。更には、「こんなモノがありますけど、どうですか?」「ここでこうしましょうよ」どんどんアイディアが出てきますし、第一に心底楽しんでこのイベントに協力してくださっているのが伝わってきます。

イベントの運営に対しての不安や焦りから忘れがちな、「楽しむ」という一番大事なことを事務局の人達と話す度に思い起こさせてくれました。
   
 
  【周年祭当日】
   
 

有楽町の店舗前で今回のイベントに対しての発起会、注意事項の確認の為に朝早くに朝礼を実施しました。
店の前が人で溢れかえっています。ただ、殆どがスギダラケの方々です。笑
この人達と3日間イベントを開催するんだという実感が初めて感じられた瞬間でした。
現地の仲通りに移動してからも、屋台が到着するまではどんなイベントになるのか想像も出来ませんでしたが、屋台がトラックで搬入されて来たら一気にお祭り感が!屋台の組立が始まり、いよいよだ!という雰囲気でしたが、あちこちで予測しなかったことが発生します。「荷物が届かない」「一般の方も通られる為、ここから先にははみ出さないようにしてください」「屋台の組立がイベント開始時間に間に合わない」一つ一つ対応している内に、イベント開始前に既にヘトヘトになっていました。笑
開始時間になんとか屋台設置もほとんど終え、改めて仲通りを見渡してみると本当にただただ圧巻でした。これまで、打ち合わせや図面上で見ていただけでは全然わからなかったスケール感。スギダラケの方々だけでも総勢300人。それを上回るお客様の数。人の集まる場って迫力がすごいんです。言葉では中々言い表せないですが、現場の雰囲気は設営の慌ただしさを微塵も感じさせないような活気に溢れていました。仲通り中央では音楽が流れ、来場されたお客様が思い思いにスツールや体にフィットするソファに腰をかけて休んでいる。何十台も並んだ屋台に設置された、全国各地の特産品や杉材で作られた初めてみるような商品の数々。また、それを興味深そうに眺め、スタッフと話している光景。自分が運営スタッフだと忘れて、思わず仲通りを端から端まで歩いて回りました。準備の段階では何度この無謀な計画に心折れそうになったことか。笑 普段は行き交う人々はいるがハイブランドが立ち並び、そんな高級感溢れる、地域に根付いた全国各地の文化とは程遠いような雰囲気を持つ仲通りが、無印良品を傘にこんなにも沢山のヒト、モノ、コトで賑わっている。
今回のイベントを開催した意味も、成果も全てが詰まっている光景でした。

   
 
  【イベントが終わってみて思うこと】
   
 

今回のイベントが終わってみて達成感は勿論ありますが、第一に思ったのは「次!」です。
一回きりで終わらせるイベントにしたくない!無印良品有楽町があの年なにか仲通りでやってたな。で終えたくない。イベントを運営してみて、「次はもっとうまくやれる」と思いましたし、もっとこのイベントの意味やテーマを強いものにしなくてはならないと感じています。もはや「改装1周年記念のイベント」ではなく、無印良品の考える地域とのあり方、これから地域に貢献出来ること、そんな可能性が詰まったイベントになり得るししなくちゃいけない。そんなスタートラインに立てたのだと思います。
もっと沢山面白いことがしたい!

中々思いを文書にするということに慣れていない為、何が言いたかったのかイマイチ伝わり辛くて申し訳ないですが、もう少しでイベントから1ヶ月経つのに、未だたまに余韻に浸っています。
また、次の企画で皆様とお会い出来るのを心底楽しみにしております。
ここまで、こんな記事を呼んでくださり、有難う御座いました。

   
 
  良品計画のメンバーと(一番右が筆者)
   
   
   
   
  ●<わたなべ・なほ> 無印良品 有楽町 インテリアアドバイザー
   
 
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