特集スギダラ秋の陣 vol.3
 

杉モノ・デザイン展 「杉+」〜 スギダラ家の古民家に来て民家? 〜

文/写真  佐藤   薫
 

この秋、北部九州支部ではスギダラ展示会を開催致します。
北部九州支部(以下杉九)としては初めての独自イベントであると同時に、スギダラ初の展示会となります。
会場となるのは佐賀県唐津市厳木町にある「白水」と呼ばれる、築200年の茅葺民家と明治の酒蔵。「白水」の魅力については有馬晋平さんにたっぷりと語って頂きますので、私は展示会を開催することになった経緯、そして思いをお伝えしたいと思います。

杉九支部を立ち上げて3年目に入りました。その間の活動と言えば大分県日田市のイベント「水面の盆」や「千年明かり」への参加、他の支部の活動に紛れ込む、といったことが主で、表立って杉九として活動するところまでには至っておりませんでした。各地のツアーやイベントに参加しながら、これが杉九だったら何が出来るだろう、何を見てもらえるだろう、そんなことを考えながら、ゆっくりと自分達の杉との関わりを模索していました。
ただ、目立った行動はなくとも杉九には「強み」がありました。それは「モノをつくれる」ということ。それは杉の木クラフトの溝口、池田夫妻という強力なモノづくり部隊が杉九の中心人物であるからです。様々なイベントに杉屋台や杉ベンチ、縁台テントといったオリジナルの「杉の空間」を提供する等、地味ではありながらも、杉プロダクトを介して、杉の良さを、楽しさを伝えていくということが、杉九のスギダラ活動の特徴の一つと言えると思います。

そんな私達が、この展示会のキーパーソンであり、この舞台となる有馬家、『白水』の息子さんである有馬晋平さんと出会いました。彼は子供達相手にワークショップを行ったり、杉を使った美しいオブジェを作る造形作家で、お話をするとスギダラ活動に大いに興味を示し、すぐに私達の仲間になってくれました。お会いした時、今はほとんど使われていないこの古民家と酒蔵をなんとか人が集う場所にできないか、そう模索しながらお父様とあちらこちら飛び回っているところでした。

その時です。『展示会をやろう!』という神の声が聞こえました。(実際はスギダラ本部デザイン部長の一言)。モノを造れる人がいる。見せるモノがある。そして使って欲しい場所がある。そして動きたい人たちがいる。「これだ!」と思いました。私達が出来ること。杉九ならではの強みを生かせること。それがスギダラ展示会。杉のプロダクトを集め、皆様に実際に見て、触ってもらう。そして杉が身近なものであると感じてもらう。理屈でなく、杉そのものの良さを知って体感してもらう、この上ない機会になる、と。

このようなイベントは私達には初めてのこと。色々戸惑いながらも、せっかくやるならとことんスギダラケにしよう!かっこよくしよう!楽しくしよう!その思いで、現在準備を進めています。大変有難いことにスギ絆でたくさんの方がご協力して下さることになりました。各地のスギダラ支部から杉材を頂いたり、九州は勿論、関西、東京からも杉プロダクトが白水に集まります。
なんと地元厳木の杉材を使った南雲さんデザインの新作スギダラファニチャーもお目見えする予定です。


テーマは 杉+


展示会場では、作品を見て頂くだけでなく、様々なモノ、コトと杉との組み合わせを楽しんで頂ける企画を考えています。

杉+旅    :「白水」を会場に1泊2日の北部九州(白水満喫)ツアーを行います。
杉+作    :ツアー参加者対象に杉のオブジェ「すべすべ杉」制作、「スギダラ味噌」づくり
     ワークショップを行い、作る楽しみを味わってもらいます。
杉+道具:白水や各地から集めた杉の新旧の杉道具を展示します。実際に見て、触って道具
     としての杉の魅力を感じてください。
杉+論    :オープニングイベントとしてスギダラ3兄弟によるセミナーとスギダラ討論会を
     実施します。思う存分杉談義を行いましょう。
杉+食    :杉皿、杉桶などに盛る地元食材を使った料理の販売「食べスギコーナー」。
     杉屋台も登場します。
杉+酒    :白水の土間バーで角打ち「飲みスギコーナー」を設置します。地元の美味しい
     お酒を杉の香りと共に味わってください。 
杉+土産:地元の産物を杉と共にお持ち帰って頂ける「お持ち帰りスギコーナー」を
     用意します。
杉+音    「スギ音ライブ」 杉を使った楽器を製作し、福岡のアフリカンパーカッション
     グループ、『フォリカン』http://www.folikan.com/によるコンサートライブを
     行います。

食あり、酒あり、音楽ありのスギダラな展示会を皆で楽しんで民家?(赤面)

 
  
 

商品展示会場となるのは白水の旧酒蔵。酒造りをやめてからはほとんど手付かずのままだったらしく、私が初めてお邪魔した時も古道具が山積みされたまま、時が止まったようになっていました。それが今は見違えるようになっています。「白水3兄弟」とも言える、有馬武男さん、晋平さん兄弟と企画担当の長尾行平さん。この3人が真夏の暑い時期、真っ黒になりながら酒蔵の大掃除をして下さいました。一見ガラクタに見えた古道具を一つ一つ丁寧に洗い、磨くことで、長い年月を経た道具、古材たちの隠れた魅力を発見し、手を加え、新しい道具に仕立て上げていっています。この白水3兄弟が長い間眠っていた酒蔵に、道具たちに息を吹き込みました。
訪れる度に酒蔵の顔が変わっていく姿に私達は毎回驚かされます。展示会の時にはどんな空間になっているのか、楽しみにしていてください。

   
 
  手を入れる前は古道具が山積みでしたがこの通り。現在も進化中の酒蔵1階

 

美しく保たれている白水は実は維持をしていくだけで大変な労力とお金がかかります。今では職人がほとんど残されていない茅葺き替えを定期的に施したり、蔵を半分にし、土台を1M上げるという大工事まで行って、有馬さんのご両親は今日まで白水を大切に守ってこられました。

私には白水が杉山の姿に投影されてなりません。きっとご両親がやってきたことは、杉山を維持することと同じぐらい大変だったのだと思います。そうして長い間維持してきた古民家を、酒蔵を、今度は息子さん達が甦らせ、人の集う場へと変えていこうとしています。
人が手をかけ、白水に命を吹き込み、白水は人々に安らぎと憩いの場を与えてくれます。
杉も同じ。人が杉に手をかけ、大事に使うことで、杉は人々に安らぎと本来のあるべき暮らし、未来を伝えてくれます。

   
 
  今は誰もいない酒蔵。昔は蔵男達で賑わっていました。

 

このスギダラ展示会が新たに「白水」を生かす道筋を作り、そして参加してくださった皆様が白水に更なる命を吹き込んで下さる事を願っています。

杉が身近にあったという時代を知らない私達が、先人たちによって使い込まれ、長い時を重ねてきた趣き深い古道具や、新しいデザインを取り込んだ現代の杉道具に溢れた、「当たり前に杉がある」白水の空間で時を過ごした時、一体どのように感じるのでしょうか。きっと今後私たちの暮らしの中で杉をどう使っていったらいいのか、どう付き合っていったらいいのか、そのヒントを貰えるような気がします。

この展示会では皆さんがそれぞれ自分にとって心地いいと思える「杉+」を見つけて戴くこと、
「杉+白水+人」が出会い、そして「+楽」につながるような、そんな展示会にしていきたいと思います。

皆さん、スギダラ家の古民家に来て民家?

   
 
 
5月4日 ライブ&ギャラリーのイベント。大勢のお客さんが来てくださり、白水が活気を取り戻した日。
   
   
   
  ●<さとう・かおり> 株式会社ワコール 普通の会社員。スギダラ化が進むとこうなります。
スギダラ北部九州広報担当 http://sugikyu.exblog.jp/
   
 
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