「杉コレクション2008」 報告
 

杉コレ2008をふりかえって

文/写真 竹之内昭裕
 
  あつかった杉コレクション2008in日向を終えて約一ヶ月余が過ぎた。振り返ってみると、一次審査から宮崎やまんかん祭りにおける杉コレ最終審査までの約一ヶ月間は、私にとってこれまでの人生最大のお祭りであったことは間違いない。
   
  今年4月 宮崎県木材青壮年会連合会平成20年度会長に就任以来、宮崎やまんかん祭りと杉コレを当会のメイン事業として考えてきた。今年で4回目となる杉コレは回を重ねるたびに大きく広がりを見せており、大事業であったが、開催地日向は杉コレ発祥の地であり地元日向木の芽会は経験していること、実行委員長が杉コレ仕掛人、海野君であること、彼のなかですでに構想も固まっていたことなど、安心して任せっきりであった。
   
 

新年度の体制が始まった5月、主催者の木材需要拡大推進会議事務局の八木さん、宮崎県山村木材振興課の田中さん、松下さんらを交えての最初の打ち合わせの際、海野実行委員長から映画監督の山田洋次監督を特別審査員として招きたいという話があった。半信半疑の私は、実は中学生の頃からの監督作品のファンであり、後日正式決定の連絡を受けた時、狂喜乱舞したことは云うまでもない。

   
 

会長就任以後5ヶ月、海野委員長の私に負担をかけまいという心くばりだったのでしょう、実行委員会もほとんど、八木さんや日向木の芽会を中心に行われていた。おかげで私は他の木青会事業活動に専念させていただき、あわただしい日々を送っていた。そして、いよいよ一次審査の日。今年はオフィシャルスポンサーの内田洋行さんのオフィスにおいて杉コレ審査委員長の内藤廣先生のセミナー、同じく審査員、南雲勝志氏のデザインによる杉板とスチールの足が融合された新商品「アシカラ」のプレスリリースと合わせて一次審査は行われた。日本を代表する建築家ながら今流行りのオヤジギャグ(失礼)やダジャレの上手い気さくな内藤先生、長身で足も長く男から見てもかっこいいデザイナー南雲さん、私たちの愚問にも親切丁寧に分かりやすく教えてくれる宮崎県木材利用技術センターの有馬所長、そして一部上場超一流企業内田洋行トップの向井会長といったオーラを放つ壮そうたる審査員メンバーに私も加わる。明らかに荷が重い。気おくれする中、そうはいっても製材のプロの代表である。気を取り直し、自分を奮い立たせて一次審査に臨んだ。それでもデザインに関してはまったくの素人、各審査員の方々の批評にただうなずきながら聞いているだけの自分がいた。

   
 

こうして一次審査を無事終え、約一ヶ月後 日向での本番、最終審査を迎えることになる。その間、約一ヶ月の実行委員会や実物大制作に協力してくれた各地区会団の苦労と苦闘には只ただ感謝である。迎えた宮崎やまんかん祭り当日のことはとても語り尽くせそうにない。他の方々にお願いすることにする。ただ言えるのは、海野実行委員長をはじめとする実行委員会のご苦労をよそに憧れの山田洋次監督に会えたこと、同じ舞台に立っていることに興奮し、緊張の中にも楽しくて仕方がない2日間であった。

   
 
  最終審査にて。審査員の面々。憧れの山田洋次監督と同じ舞台に立つ。
   
  「継続は命なり」 杉コレ前夜祭での内藤審査委員長の挨拶の中での言葉である。大切なのは杉コレを地道に続けていくことが主催者である木青会をはじめ、地域や業界、そして応募者を含めコレにかかわる全ての人たちの力となって身につき、続けていくことに加えて少しずつ進歩、発展、成長していくこと。それが命であることだろうと思う。そのことは、杉コレ終了後に南雲さんからの提言にあった次のステップ(製品化を含めて)に向けてつなげていくことに通じる。
   
 

来年は飫肥杉の地元、日南での開催予定であり、南雲さんはじめWC(若杉さん千代田さん)とのご縁もある地で、またワクワクするような杉コレになりそうだ。私と同い年で今年度木青会を卒業する海野さん。卒業の年に、ある意味集大成として取り組まれ、木青会の次世代への引継ぎと今後の杉コレ発展を後輩に託された。そうはいってもかわいい木青会の後輩のため、卒業後も知恵を貸してやってください。これが県木青会長としての切なる願いである。

   
 
  はっぴを着た審査員の方々+司会のWC(若杉さん・千代田さん(左端))+杉コレ2008実行委員長・海野さん(右端)
 

私の会社は、和室周りに使用される化粧柱(芯去り柱)、鴨居、廻り縁などの造作材を製材しているため、日本各地の高齢級の杉(秋田杉、関東地区、愛知三河地区、三重松阪、奈良吉野 九州各地)を仕入れ、無節志向の製品づくりを主にやってきました。しかし、近年日本人の生活スタイルの変化による和室の減少や建築工法の変化等でその需要も年々少なくなってきています。このようにデザインや意匠の流行や評価、価値観は時代の流れとともに移り変わっていく。そんな時の流れの中で、杉という同種の素材でありながら、各産地、苗の種類、樹齢によって、色や節、杢目、柾目の目合いの違いは一本一枚ごとにさまざまな顔を見せてくれる。そんな杉材を利用していくことはデザインや意匠としての可能性は無限に広がります。その数十年以上生きてきた歴史を刻む杉材を生かしていけるデザインを探っていき、そして業界としては何より杉を利用した新製品としての可能性を追求するコンペとして発展していってくれればと願っております。 「継続は命なり」

   
 

最後になりましたが、ご多忙の中ご参加いただきました審査員の皆様、イベントで一番難しい盛り上げ役の司会を努めていただいた若杉さん、千代田さん、そして縁の下で支えていただいた林業協会の八木さん、宮崎県山村木材振興課の県職員の皆様に改めて厚くお礼申し上げます。

   
 
  餅撒きの様子
   
   
   
   
  ●<たけのうち・あきひろ> 平成20年度 宮崎県木材青壮年会連合会 会長
 
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