日南特集連動
  平成日南飫肥杉物語り その1
文/ 南雲勝志
  いま地域が生き残るために・・・
 

秋の日南飫肥杉大作戦の第一章が終わってからちょうど一週間が経つ。個人的には楽しくも苦しいツアーだった。(笑)
今回は、川上元美さんのセミナーを機に、それぞれの関係者が自分の立場を再認識しながら一同に会することが出来たことが一番の成果だろう。杉コレ主催の木青会は各支部、(宮崎、日向、都城、日南、小林)が集結し、日南市は飫肥杉課を中心にイベント対応と異業種の関わりがどんなものか雰囲気がわかったはずだ。中村さんは日南と外を結ぶための地元としての責任と覚悟を一生懸命説いてくれた。今後、地元と来訪者のいい関係が徐々に出来ていくと思われる。スギダラは、東京宮崎はもちろん、北部九州からも6人のメンバーが来てくれた。一地方の杉デザインの発進に、他の地域が力を合わせるという図式がきっと出来るだろう。
来月14、15日に日南景観デザインフォーラムが開催される。多分それは地元市民を中心に自分たちのまちの発進が中心議題になるだろう。

さて、今回どんなツアーだったのか? 特集の中村さん、河野さん、海老原さんの記事を読めば大枠は理解していただけると思うが、さらに補足的に多めに写真を使いながら流れを説明する。いくつかの目的、いくつかのグループが入り乱れての集まりであったことがわかると思う。写真は日向、宮崎は出水君、日南イベント、ツアーは加えて吉武春美さんから写真提供をいただいた。

 

  ●そもそも
 

昨年の11月、日向杉コレが終わり、来年の日南大会をどうするか?、十日会の面々は来年に向けての内藤先生、内田洋行に挨拶をするため東京に行っていた。その夜は例によって内田洋行との飲み会、そこに川上元美さんがいた。若杉さんから電話がかかってくる。「盛り上がっていますよ〜。木青会も川上さんも。早く川上さんに宮崎に行ってもらいましょう!」 その後の日南の開発会議で川上さんのデザインセミナーを日南で行いたい旨、話をした。すると宮崎県工業技術センターの鳥田さんが、ぜひうちの主催でやらしていただきたい。ということになり、話はとんとんと進んだ。篠原修さんに会ったときその話をすると、「川上さんに行ってもらうんだったら日南だけでなく、日向とかちゃんと案内してもらいなさい、県の人に。」と言われた。県の人とは誰かだいたい察しはついた。
若杉さんとは川上デザインセミナーのX-dayをいつにするか検討していた。一月二月は時間がとりやすいということだったので、2月中旬頃に取りあえず設定した。同時に一度篠原、川上会談を一度行った方が良いと思っていた。篠原さんは日南デザイン会議の委員長でもあり、堀川運河の整備に関しても全体の監修をしておられる立場だからだ。日程調整を行い、年明け早々1月8日に設定出来た。辻さんも「秋に向けてはもちろんだけど、その前の景観フォーラム等、いろいろ絡めながらスクランブル状態をつくって進めていったらどうか」と助言があり、本郷「ゆい」で、篠原、川上、若杉、辻、南雲が会した。宮崎談義に花が咲いた。
その一週間前、杉コレ審査委員長内藤廣氏に会う機会があった。ふとひらめいた。「篠原、川上両氏を杉コレ特別審査員に頼めないかと思っているんですが、どうですかね〜?」 内藤氏は一言、「そう、いいんじゃないの〜。」と言われた。流石だ。
それで結局「ゆい」にて両氏に特別審査員の内諾もいただく事が出来たのだ。

 

  ●不安
 

飫肥杉課を中心にした日南市、そしてエコプロから3年越しの付き合いになる地元森林組合とメーカー、過去4回の杉コレを経験し、徐々になれてきた木青会はだいたい想像がつく。しかし、日南から全国に発するといった場合どうしても不安な部分がある。宮崎県が1地域の問題を理解し、一緒に協力してもらう必要があるのだ。もちろん木材振興課は杉コレをバックアップしてくれてはいる。しかし杉やプロダクトの問題をだけでなく、歴史、文化、地域といった場合、枠を超えて広く発信する必要がある。
たまたま日南土木事務所には日向でお世話になった中村安男がいる。これに食らいつかない手はない。何度が飫肥杉商品開発会議には出席してもらった。しかし、各論では理解できても大きな議論になると、なかなかお互いの枠を超えるため、それ以上の議論にならない。中村さんの脚は自然と遠のいた。しかしその後執拗に中村アタックが始まる。中村さんは日向と立場が違うこと、市の理解がないと県としてなかなか動きにくい等の本音を話してくれた。すると横で辻さんが言った。「県としてダメならスギダラとして動いてもらえば良いじゃないですか?」一瞬の静寂のあと、「それだ! 中村さんそれで良いんだよ。だいたい未だにスギダラ入ってないじゃないですか〜。何考えているンスか!」
自分でも言っていることに無理があるのは承知だ。しかし今はその手しかない。強引に勧誘作戦に出た。中村さんはどちらかというと、群れを嫌い一匹狼タイプだ。それは知っている、だからスギダラの話が出るといつも2mくらい離れている。良いことをしていようがいまいが、今自分に必要ないものは興味を示さない。「今まではいいですよ、でも今回は違う! みんなが頑張っているのに、横にいて黙っているんですか〜!」とかなんとか言いながら、最後は強引に入ってもらった。少なくとも拒否をしなかったが、首を縦に振ることも最後までなかった。

 

  ●ツアー当日
 

昔の話をすると終わらないので、この辺で今回の川上元美ツアーの報告に移る。簡単に説明すると、二泊三日の行程で、先ず、日向市駅及びその周辺を視察いただく、夜は木青会主催で宮崎の美味しいものをたっぷり食べていただく。翌日午前、日南に移動、先ず飫肥杉の山、飫肥城を見て堀川運河に到着。午後からセミナー。終了後は堀川運河夢広場で交流会、その後北郷町蜂の巣バンガローに場所を移動、関係者の懇親会を行う。
最終日は日南をゆっくり見ていただく。海岸から焼酎蔵、そして堀川運河チョロ船乗船、最後はまち歩き。と簡単に説明してもチョーハードだ。
ではどんなツアーだったのか、ビジュアルで流れるように・・・

 

  いつも遅れがちのSNAが珍しく早めに宮崎空港に到着した。到着ロビーに中村さんが待っていてくれた。魚山亭で昼食をとり、日輪で日向市へ向かう。日向市駅に到着すると、日向土木事務所藤村所長、商工会議所黒木専務はじめ、県、市の関係者が出迎えてくれた。いつもながら敬服する。

   
  宮崎空港から日向市へ、中村さんより概略を説明。   日向市駅到着、県、市の関係者がお出迎え。
   
  森山さんより駅舎の説明を行う。   藤村所長と、黒木専務。
   
  商工会議所移動、日向のまちづくりの取り組みを説明。井上さんも見えた、   商工会議所から見る工事中の交流広場
   
  次に塩見橋にご案内   帰りには移動式夢空間も見ていただく。

  川上さんには日向市のまちの取り組み、駅、広場、塩見橋などを見学していただく。「デザインも良いのだが、その取り組み、人の繋がりは素晴らしいですね。」と言われた。
小雨降る中、日向関係者に別れを告げ、宮崎市へと向かう。
一休みし福菜という料理屋に移動、ここでミヤダラ春美さんも合流する。いつもながら楽しい宴席であった。川上さんと別れ、一同家族亭へ。宮崎の夜は終わらない・・・

   
  日向から宮崎へ。福菜で美味しい宮崎の食材を。   定番、家族亭で二次会へ。

  翌朝、宮崎から日南へ向かう。川上さんは飫肥杉林、飫肥城へと向かう。我々は夢広場で試作品の展示を開始。この日は屋外の展示だったので、天気を心配していた。事前予報は雨。しかし晴れ男海杉の力か、予報は晴れに・・・良かった。
杉九有馬さんも合流。しかしここで予想外の事が起きた。非常に強い風が吹き出したのだ。ヤタイを中心にした、大型のものは風に弱い。急遽展示場所を二カ所に分けることで何とか対応した。

   
  堀川運河夢広場にて試作品展示、運河沿いの第一会場   堀川運河と飫肥杉は似合うね〜と日南市岡本さん
   
  広場中央付近に設けた第二会場   夢見橋も見える
  展示が終了したのは1時半頃、セミナーは2時開始。急いで食事を取りセミナー会場へ。
疲れた。いや、疲れただけではない、熱っぽい。昼食を食べながらいや〜な気持ちになり出したナグモであった。若杉さんが言った。「それはまずい!。南雲さんカコナール2って知ってますか?ぐっと楽になりますよ。おい、出水、薬局でカコナール2買ってこい!それと栄養剤もな。」
まず日南家具工藝社の池田会長が語り、続いて川上さんセミナーと続く。この時の内容についてはオビダラ日記へ。終了後、参加者は堀川運河まで移動、川上さんを囲んだ交流会へと続く。

 
  川上元美デザインセミナー
   
  終了後夢広場展示会場へ、スギコダマチェアーも。   夢広場がデザイン会場になる。
   
  木青会都城の面々、海野さんも見える。   木青会日南十日会の面々
   
  ミヤダラと杉九の面々+杉さん、南さん   日南十日会、若手のホープ
   
  姫見橋を製作した熊田原さんと川上さん。   川上さんと池田会長
 
  ヤタイの仕込みは日南市飫肥杉課。おでん、ヤキトリ、焼酎をサービス。
   
  ヤタイを囲んで・・・  

金丸さんは屋台の主人そのものだった。

   
  最後は漫談と   にちなん三本締めで交流会も終了
 

せっかく盛り上がり、ゆっくりしたいのだが、日も暮れてきた。ここら辺で、若杉、ナグモがハンドマイク片手に今回の取り組み、秋への流れ、最終的に日南で行おうとしている事などを説明する。それだけではつまらないのでおまけもつけた。その内容についてもオビダラ日記へ。
そして次は一路北郷町蜂の巣バンガローへ。真っ暗な山の中の一軒家という感じだ。
施設は新しくとてもきれいだ。吉武先生も合流した。本来ならばあつく語りたいのだが今日ばかりは力が出ない。しかし、川上さん始め多くの参加者で自己紹介も含め盛り上がった。
残念ながら僕は12時過ぎにリタイヤ。しかし最終組は4時まで語り合ったらしい・・・

   
  奥には日南十日会   川上さんスピーチに耳を傾ける
   
  中村さん熱く語る    
   
      中締め、あまり記憶にない
 
  ミヤダラ、杉九を中心にしたスギダラな仲間達

  翌朝、うなされながら起きると、抜けるような晴天、どこまでもどこまでも深い青だ。飛行機から見る大気上空の空と同じだ。
今日は二手に別れ油津ツアーを行う。 すでに鵜戸神社コースのメンバーは出発していた。
味噌汁と一杯いただき、途中の薬局でカコナール2を補填して油津ツアーへと向かう。
 
      翌朝、晴天。ここが蜂の巣バンガロー大食堂
   
  日南海岸梅ケ浜からツアー開始。地元ボランティアガイドに案内をしてくれた。奇岩を見ながら祈願する。   堀川運河に戻りチョロ船乗船へ
   
  何と川上さんは経験者でした。上手い!   こちらも経験者? 表紙の写真へと続く。
   
  これはおもしろい。若杉さん兄弟は? 「いもーと」   川上さんも熱心に。「カワムキモトミ」失礼
   
  代々伝わるボイラー、蒸気機関車と原理は一緒。   ずらりと並ぶ焼酎亀。写真撮ってもかめへん。
   
  最終発酵工程。   みんなで芋向きポーズで記念撮影
 
  お土産に前掛けと、焼酎一合瓶をいただく。嬉しくてもう一枚。

  一方その頃鵜戸神社コースの面々は何をしていたか。参加者の出水に語ってもらう。

油津コースより一足先にバンガローを出発した鵜戸コース一行は、寝不足を一掃するほどのすばらしい晴天のもと、一路鵜戸へと車を走らせました。
神宮入り口で、ツアーを企画されているシーニックバイウェイの谷越さん、「鵜戸山をかっとしやる協議会」の地元の方々と合流し、宮崎からこのツアーに参加されたご婦人方も到着し、(なんと!)神官さんのガイドのもと、さっそくツアーがはじまりました。神官さんのお話を聞いていると、どんどん頭のなかは古代の世界へ。天照大御神…伊邪那岐命…伊邪那美命…ここはすばらしく由緒あるところです。御本殿を見たときは鳥肌が立ちました。そして噂に聞いていた「運玉」投げに挑戦。10コ投げても入りませんでした(泣)。

鵜戸神宮を後に、昼食を取るために鵜戸漁港へ。青空のもの、地元の皆さんが手作りで作って頂いた料理は絶品でした。つきたての芋餅(蒸かしたサツマイモと餅をいっしょについたもの)、カツオの刺身、ムカデノリ、鹿肉、その他煮物や酢の物など。食材は全て地元で獲れたものだということでした。それにしても地元の方々は皆さんお元気で明るい!おいしい食事を頂きながら盛り上がりました。

これだけ内容盛り沢山のツアーですが、料金は1500円です!安い〜。
皆さん、宮崎に行かれた際はぜひ鵜戸へ行ってみてください。このツアーはオススメですよ!
出水進也でした。

   
  神官さんにガイドしていただいた    一本杉の前でキメるヨシダケ先生 
   
  いよいよ御本殿へ    しゃんしゃん馬も登場(中身はおじさん) 
   
  芋餅をつく南さんと薫杉さん    最後にひとりひとり今日の感想を発表。

  二つのツアーが終了。油津港第一突堤付近で合流した。ここから最後のメニューまちあるきだ。ここでもボランティアスタッフの方に案内していただく。コースは港から堀川運河、赤煉瓦館など古い油津のまちなみを見るコースだ。残念ながら僕はそれを見ずにリタイヤ、最後のしゃべり場(河野さんのお店)に行き休ませてもらう。30分ほどしてみんながやって来た。布団で横になり休ませてもらっていたが、もうろうとした頭に若杉さんの高笑いだけは聞こえて来た。

   
  まちあるき、堀川橋。   赤レンガ館。
   
  油津名物しゃべり場ー。ぜひ訪れて下さい。   そして、美しい堀川運河と別れを告げる。

 

さて、そんな風に日南ツアーも終わりを迎えた。日南を舞台に事を起こし、体験と目標を共有しようという第一幕が閉じた。参加者の皆さん、お疲れさまでした。そしてありがとうございました。

さて、これから日南市の発進の中心になるのは飫肥杉課始め、日南市役所だ。協力者、仲間は増えてきた。しかしリーダーシップを取り、市民をどう巻き込んでいくか、一番大切な局面に向かっていく。頑張って欲しい。そんな事を思っていたら、日南市倉岡さんからメールが来た。
紹介してエールを送りたい。


日南市建設課の倉岡です。

 遅くなりましたが、セミナーや懇親会、そして翌日のツアーと、遠方 からの参加に加え、タイト(夜が遅かったからそう思うだけかも)な行程でしたが、ほんとにありがとうございました。
 セミナーと夢ひろばに参加したかったですが、蜂の巣で楽しんでいただいたので、自分なりに良しとします。

 川上さんをはじめ、北部九州のスギダラメンバーの方とも交流でき、 新しいネットワークができたことに、感謝です。地元も頑張りますので日南をよろしくお願いします。
 それに加え、ミヤダラメンバーや木青会、地元十日会や飫肥杉商品開 発に携わっている方などとも、ゆっくりと話をすることができ、大変有意義な時間でした。この輪を大事にして、今後に繋げていきたいと感じたところです。

 今年は、みなさん言われるように、秋に向けて、流れるように絡み合うようにイベント等が実施されます。秋の大作戦が成功するも失敗するも、地域住民がどれだけ関われるかと思っていますので、私はその部分に重点を置いて頑張っていきます。

 まずは、来月の景観まちづくりフォーラムの成功のために、強力な応援(中村さん・谷越さん)をいただきながら、やります。

 今後も、みなさんと交流できる日を楽しみにしております。菌が回っているようなので、くれぐれも体調にはお気をつけ下さい。

P.S.体調を崩しても、いつものしゃべりで盛り上げて下さった南雲さん、色々とありがとうございました。

       
       
 

 

 

 

   
  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
 
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