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ずいぶん大人になってから、というかちょっとまえ、たぶん4、5年ほど前に「ゴッホの手紙」をはじめて読んだ。 それが暇つぶしに手にとった「微光のなかの宇宙」という本のゴッホのページで気持ちがゆらいで、とうとうみすず書房の「ゴッホの手紙」に手を出した。重たすぎて(本の重量のことではない)体調を崩しながら読んだ。嫌悪感は増し、なんともどん底の救われない気持ちになったが、しばらくすると不思議な勇気もわいたのをおぼえている。 あまのじゃくにとっては司馬遼太郎の美術観というのにもかなり抵抗があったから、この本によってわたしは自分の殻をふたつ割ったことになった。いったいどういうところに殻が割れるきっかけがころがっているかわからないものだ。 中公文庫版の冒頭には書き下ろしの「裸眼で」という前書きのような一文があり、若いころに新聞社で絵画批評の仕事をしていたことが書いてある。その美術記者時代のことを、 この本の中の「ゴッホの天才性」の項を早起きして再読したら、朝からどっと疲れて、二度寝した。起き上がると春陰の空。重さを引きずりつつ、一日がはじまる。 |
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(いいわけ) 糸杉を描いたゴッホのことを書いた小説家の司馬遼太郎の本ということで、今月の杉と文学にしました。こじつけですみません。。。ちなみに糸杉はヒノキ科イトスギ属の総称で、サイプレス(Cypress)、もしくはセイヨウヒノキ(西洋檜)ともいわれるそうです。サイプレスは入浴剤やアロマオイルでもよく使われてますね。 |
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●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ− 1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。 「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。 近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社 草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/ ソトコト10月号より「plants and hands 草木と手仕事」連載開始(エスケープルートという2色刷りページ内) |
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