特集 はだの間伐材活用デザインコンテスト
  「表丹沢・間伐材等活用デザインコンテスト」を終えて
文/写真 相原国雄
 

残暑厳しいなか、去る8月21日に『表丹沢・間伐材等活用デザインコンテスト』の第二次審査会をつつがなく開催することができました。昨年末より募集を開始したこのコンテストは、本年4月末日の締切日には500点を越える応募作品数を数え、コンテストの反響の大きさを実感しました。応募者も北は北海道から西は福岡まで広範囲にわたり、多彩なデザインの数々を受け取り整理していますと、このコンテストの成功を確信すると共に、応募者の皆様の思いのこもったデザインを審査する責任を再認識する日々でした。今回、審査員の皆様により素晴らしい作品が選ばれたことは大変嬉しく、またコンテストの成功に安堵しています。応募者の皆様、コンテスト開催にご協力いただきました関係者の皆様にお礼申し上げます。

秦野市は、かつては葉たばこの栽培を代表とする農業中心の田園都市でしたが、近年は人口約17万人、市北域に丹沢の自然を擁し、水とみどりに恵まれた豊かな環境をもつ首都圏のベッドタウンとして発展してきました。
神奈川県内唯一の盆地として周囲を緑に囲まれた当市では、平成22年春季には全国植樹祭が開催されます。
市の北域を占める丹沢山地は、都心から50kmほどの首都近郊にあるにもかかわらず、ブナやモミの原生林、ニホンカモシカ、ツキノワグマなどの大型野生動物や深い渓谷を残す自然豊かな地域となっています。しかし近年、林業の停滞を原因とするスギ、ヒノキといった人工林の整備の遅れや、葉たばこ生産の終了を期に、葉たばこの苗床として落ち葉を利用していた葉たばこ生産農家を中心に手入れがされていた里山林の荒廃化が目立つようになりました。
秦野市では市内の里山保全ボランティア団体や森林関係団体をメンバーとした「はだの里山保全再生活動団体等連絡協議会」が組織されています。2,000名を超える加入団体のメンバーの間では森林整備と里地里山における環境整備の必要性に対する意識が共有されている一方、その歩みの遅さに焦燥を覚えるメンバーもおられます。
そのような状況の下、『表丹沢・間伐材等活用デザインコンテスト』は、社団法人国土緑化機構「緑の募金」の助成を得て、秦野盆地の森林を中心に、間伐材活用商品の開発、商品化、製品の利用促進を図り、市内林業の活性化を目的として計画されました。また、平成22年春季に県立秦野戸川公園で式典が開催される第61回全国植樹祭において秦野市から参加者に贈られる記念品のデザインもあわせて募集されました。

第一次審査では非常に多数の、そして魅力的なデザインの数々に審査会は長時間のものとなりました。審査を進めていくうちに20点ほどにまで絞られた時点で、どの作品も外しがたく審査会が膠着してしまいました。ここからは作品の魅力だけではなく、実現性や製品化を進めていく上でのコストや使用時の安全性なども審査基準として重視され、魅力的なデザインでありながらそのような問題で選からはずすというつらい作業となりました。
また小中学生からの応募作品には、子供らしい瑞々しいセンスを感じさせる作品が数多く、募集要項では予定していなかった小中学校部門を新設して、子供たちのデザインを活用していく方法も考えていくことになりました。
その結果、16の作品が入選し、里山部門、記念品部門、そして小中学生部門の入賞者は5月24日開催の全国植樹祭プレ大会の会場で表彰式を行いました。

第一次審査を通過した作品は設置箇所の問題で制作が困難であった一作品を除き、試作品が制作されました。夏の暑さも厳しい折、応募者の皆様には精力的に制作活動に従事していただき、制作期限の8月14日までにすべての作品が完成をみることができました。厳しい環境の中、作業に従事される皆様の作品にたいする情熱に大変深い感銘を受けました。また限られた時間と資源のなか、素晴らしい作品の数々を完成していただいたことに感謝申し上げます。
コンテストの舞台裏では主催である「はだの里山保全再生活動団体等連絡協議会」加入のボランティア団体メンバーの皆様に、試作品に必要とされる間伐材の搬出や製材など様々な場面で、多大なご尽力をいただきました。

8月21日に開催された第二次審査会では、応募者による作品を前にしてのプレゼンテーションがおこなわれました。応募者、審査委員、里山整備ボランティア団体メンバーの間で、作品に対する熱心なディスカッションが繰り広げられ、製造方法やコストに関する問題など様々な忌憚のない意見が出ていました。また、子供たちの作品は、どれもイメージデッサンをそのまま形にしたような素晴らしい仕上がりのもので、審査会参加者の誰もが感嘆の声をあげていました。
どの作品も試作品としての仕上がりが非常に素晴らしく、第一次審査会につづき、第二次審査会も白熱の議論が繰り広げられることになりました。結果、最優秀賞を一つに絞ることは難しいということから最優秀賞を「里山活用部門」「里山デザイン部門」の2点選定することになりました。最終的には、最優秀賞2点、優秀賞1点、小中学校部門賞1点、特別賞3点の計7点が入賞となりました。

個々の作品につきましては、審査委員会の方から講評が発表されると思いますのでこの紙面では触れませんが、どの作品も間伐材利用の可能性を感じさせる素晴らしいものでした。

盛況を持ちましてコンテストを実施することができました。しかし先にも述べましたとおり『表丹沢・間伐材等活用デザインコンテスト』は、間伐材利用活性化に向けた挑戦へのスタートをきったに過ぎません。今回のコンテストに応募していただいた皆様、またご協力いただきました関係者の皆様に重ねてお礼申し上げますと共に、今後コンテストの成果を活用しての森林整備、間伐材利用活性化の事業を展開していくこととなっておりますので、引き続き皆様のご支援、ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。

   
 
   
  表丹沢・間伐材等活用デザインコンテスト
  http://satochi.net/hadano/
   
   
   
   
 

●<あいはら・くにお> 神奈川県秦野市 森林づくり課

   
 
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