連載
  杉という木材の建築構造への技術利用/第8回
文/写真 田原 賢
  「新しい水平構面をつくる・その4」
 
 
  第3章 試験結果
   
  3−1.試験結果の表
   
  試験結果を、表−1に示す。
   
 
見かけのせん断変形角 γ=(δ1−δ2)/H (rad)
脚部のせん断変形角 θ=(δ3+δ4)/V (rad)
真のせん断変形角 γ0=γ−θ (rad)
 
  ただし、 δ1:柱頂部の水平方向変位(mm) (変位計H1)
    δ2:柱脚部の水平方向変位(mm) (変位計H2)
    H :変位計H1とH2の間の標点間距離(mm)
    δ3:柱頂部の鉛直方向変位(mm) (変位計V3)
    δ4:柱脚部の鉛直方向変位(mm) (変位計V4)
    V :変位計V3とV4の間の標点間距離(mm)
   
  表−1 試験結果
 
試験体名
加力
方向
荷重(KN)
真の変計角(rad)
1/600
1/300
1/150
1/100
1/50
1/30
1/18
(max)
桧(吉野産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様

8.9

15.0

26.5

36.9

55.4

-
-

6.0

9.9

20.2

30.1

HD
破断
-
-
合板転ばし根太
+火打ち仕様

3.2

5.3

8.2

10.1

13.7

14.7

11.2

4.2

6.9

10.4

12.5

14.9

15.3

-
杉(吉野産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様

10.6

14.3

20.2

25.0

32.7

37.7

39.5

0.7

3.8

11.0

17.4

28.3

34.3

-
合板直貼り
落とし込み根太仕様

5.7

8.2

11.6

13.5

16.8

18.0

10.2

4.7

6.9

10.0

11.6

13.5

13.5

-
杉(高知産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様

8.8

13.6

21.1

26.9

37.6

44.6

HD
破断

12.4

16.7

23.0

27.6

35.6

39.3

-
   
 
   
  3−2.試験体の破壊状況
   
  主な破壊状態を以下 表−2 に示す。
   
  表−2 主な破壊状態
 
試験体タイプ
主な破壊状態
桧(吉野産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様
ホールダウン金物の破断
合板転ばし根太
+火打ち仕様
梁・根太接合部における根太の割れ
鋼製火打ちの座屈及び引き抜け
ホールダウン金物の破断
杉(吉野産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様
せん断抵抗ダボと杉厚板のめり込み
ホールダウン金物の破断
合板直貼り
落とし込み根太仕様
合板のズレ・合板のめくれ上がり及び合板への釘のめり込み
ホールダウン金物の偏心力による曲げ降伏
杉(高知産)厚板
せん断抵抗ダボ仕様
せん断抵抗ダボと杉厚板のめり込み
ホールダウン金物の破断
   
 
   
  3−3.各試験体の 荷重−真の変形角曲線
   
  各試験体の荷重−真の変形角曲線を次項より表す。
   
 
   
  3−4.試験状況
   
  ●試験体(1) 桧(吉野産)厚板 せん断抵抗ダボ仕様
   
  試験結果(その1)/7月18日
 
変形角
(rad)
荷重
(KN)
変位量
(mm)
破壊状況
1/600
{7}
4.55  
1/300 12
{13}
9.1 ダボと板の擦れ合う音
1/150 20
{22}
18.2 板のずれる音が激しくなった
1/100 25
{}
27.3 振れ止めローラーが曲がったので試験中止(1回目)
1/50      
1/30      
 
{ }内は引きの時の数値を示す
   
  01   02
  写真1 試験前状況
試験体の板間のズレを見るため、ビスのところにラインを入れてチェックすることとした。
  写真2 振れ止めの変形(試験中止時)
鉄骨のフレームからのボルトが1本だけで振れ止めローラーが設置されていたため、壁体の大きなねじれにより振れ止めローラーが変形してしまい試験中止となった。
   
   
  試験結果(その2)/7月18日
 
変形角
(rad)
荷重
(KN)
変位量
(mm)
破壊状況
1/600
{3}
4.55  
1/300
{6}
9.1 板ズレによる大きい音がした
1/150 10
{12}
18.2 板のこすれ合う音が多くなった
1/100 18
{22}
27.3 剛体回転による板の隙間が2mm程度になった
1/50 50
{}
54.6 再び振れ止めローラーが曲がったので試験再度中止
1/30      
 
{ }内は引きの時の数値を示す
   
  試験状況(桧「吉野産」厚板 せん断抵抗ダボ仕様 その2{振れ止め補強後})
   
   
  写真3 試験体設置状況
ホールダウンを取り替え、振れ止めにおいても、ボルト1本の所を3本設置して応急処置を施し、実験を再開することとした。
  写真4 厚板浮き上がり状況(1/50rad時)
下端部の厚板が木口付近で10mm程度の浮き上がったが、2枚目以降の板は浮き上がりやズレはほとんどなかった。
       
   
  写真5 ホールダウン金物の降伏状況
(1/50rad時)

ホールダウン金物が曲げにより降伏し、尚、柱に見立てた梁接合部も約5mm浮き上がった。
  写真6 梁脚部めり込み状況(1/50rad時)
柱に見立てた梁が剛体回転をしているため、押さえ込みにより土台に見立てた梁のめり込みが生じた。
       
   
  写真7 振れ止め変形状況(試験中止時)
応急処置として鉄骨のフレームからのボルトを3本に増やしたところ、今度は振れ止めのフレームが曲がってしまい、実験を再度中止した。
  写真8 壁体のねじれ状況(試験中止時)
やはり強力な面材が片面のみに貼られたため、偏芯を起こしねじれた様子がよくわかる。
つまり片面大壁の強い壁は、大きな耐力があるがそれだけねじれ易いという事が言える。
両面大壁や真壁タイプであればねじれは生じないものと思われる。
   
 
   
  ●試験体(2) 米松(ドライビーム)の上 合板転ばし根太仕様+火打ち
   
  試験結果/7月18日
 
変形角
(rad)
荷重
(KN)
変位量
(mm)
破壊状況
1/600
{4}
4.55  
1/300
{7}
9.1 根太の割裂による音が聞こえた
1/150
{10}
18.2 合板同士のこすれる音が生じた
HD金物が曲げにより降伏した
1/100 10
{12}
27.3 合板のズレが2mm
1/50 13
{15}
54.6 根太がねじられ、斜めくぎ打ち部分で割裂破壊した
1/30 15
{15}
91 火打が座屈しはじめた
火打の引き抜きもある程度みられた
1/18
(MAX)
11 150 転ばし根太の回転により合板が大きく回転した。
 
{ }内は引きの時の数値を示す
   
  試験状況(合板転ばし根太+火打ち仕様)
   
   
  写真9 実験前全体状況
振れ止めについては、桧の2回目の実験のために補強した応急処置のまま試験を行なうこととした。
  写真10 実験前裏側全体状況
火打金物が引張と圧縮のそれぞれに1本ずつ効くように、対角のみに設置。
       
   
  写真11 ホールダウン金物曲げ降伏状況
(1/50rad時)

柱脚浮上によりホールダウン金物が降伏して、柱に見立てた梁が回転している。
  写真12 転ばし根太割れ状況(1/50rad時)
加力変形時に転ばし根太が回転して斜め釘打ち部分でねじれによる割裂破壊が起きた。
       
   
  写真13 火打金物座屈状況(1/20rad時)
火打金物が圧縮力により座屈降伏した。
  写真14 火打金物引き抜け状況(1/20rad時)
対角の火打金物の引張力による釘の引き抜きが生じた。
       
   
  写真15 転ばし根太の破壊状況
(1/18rad{max}時)

梁に止めつけられた根太の斜め釘打ち部分で、ねじれによる大きな割裂破壊が生じた。
  写真16 最大ストローク時の全体変形状況
(1/18rad{max}時)

転ばし根太が回転することにより、合板が全体的に大きく回転した。
   
   
   
   
  次号は米松の合板貼りと高知産の杉との実験結果の比較です。おたのしみに。
   
   
   
   
  ●<たはら・まさる> 「木構造建築研究所 田原」主宰 http://www4.kcn.ne.jp/~taharakn
   
 
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