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東京の杉を考える/第39話 「デザインは、東京の地場産業?」 

文/ 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 

12月3日に、「東京デザインコミュニティキャンプ(略称TDCC)」を開催した。キャンプと言ってるけど、実際には、お酒を飲みながら食べながらの交流会。会場は、神保町の家具店「平安工房」。そもそものきっかけは、今年7月に旭川で開催した「旭川木工コミュニティキャンプ(AMCC)」。旭川の人たちが見本市で東京を訪れる時期に、東京で交流会をしようということになった。

この日、会場に集まったのは、旭川を訪れた東京のデザイナーと、旭川から東京に来ているつくり手たちを中心に約50人。予想以上の盛り上がりを見せた。前半のまじめな意見交換会では、本の町「神保町」にちなんで、それぞれお気に入りの木工やデザインの本を持ち寄り、その本について話をするというもの。それぞれの考え方やスタンス、視点がかいまみれて面白い。とくに秋岡芳夫さんの本をもってきた人が3人いて、旭川における秋岡さんの影響の強さをあらためて感じさせる。

その後は、東京近郊のお酒と食材にこだわった交流会。東京や旭川の人だけでなく、飛騨高山や長崎の人も加わって、話は盛り上がった。そして、各地でもものづくりが集まる「コミュニティキャンプ」的なものをやりたいという話になった。「陶工」や「ガラス工」、「金工」そして「紙工」。それぞれの産地の素材や技術をオープンにして、いいかたちでデザイナーに開放することができたら、ものづくりはもっと楽しくなるのではないだろうか。

何よりも、デザインする人とつくる人が仲良くなって、同じ目標に向かって進んでいけたらなあと思う。さらには、売る人やメディアの人たちも巻込んで、もちろん、買う人、つかう人もいっしょになって、楽しく有意義なコミュニティが自然にできていけばいいなあ。

東京には、なぜかデザイナーが多い。もしかしたら「デザイン」は、東京の地場産業なのかもしれない。地方で必要とされている「デザイン」とは何だろうか。きっと地方には、東京と同じようなデザインはいらない。自然があり、歴史がある町でのじっくりと丁寧なものづくりと暮らし。

今回は、神保町だったけど、スギダラトーキョーとしては、いつかは武蔵五日市の自然の中で、東京のデザイナーや全国のつくり手や杉の関係者が集まって、泊まりで夜通し楽しむ「東京デザインコミュニティキャンプ」を開催したいと思っている。あ、その時は、「東京スギコミュニティキャンプ」ということになるのかな。略して「スギキャン」?

   
 
   
  旭川木工コミュニティキャンプ
http://www.mokkocamp.org/
   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
http://www.tsu-ku-shi.net/
   
 
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