連載
  スギダラな人々探訪/第45回 「灯台下暗し」
文/   千代田健一
  杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 
うかうかしていたら、今月号も既に発刊後!
実は、今回は秋田のユイス巡回展で活躍した武藤さんをご紹介しようとご本人に執筆依頼をしたところ、あまりに熱の入ったユイス展レポートを書いてくれたので、菅原秋田支部長と萩原東京支部長の関係者も含め、第2特集を組もう!ということになった。故にスギダラな人々探訪は別の手立てを考えなくてはならないことに・・・ということで出遅れてしまった。
   
  私事で大変恐縮なのだが、現在福岡にいるボクの叔母さん夫婦がこの夏、茨城の方に引っ越してくることになった。その引っ越し準備を叔母さんの息子、つまりボクの従兄弟とその姉君の旦那さん、つまりぼくにとっては義理の従兄弟とで進めている。
元々叔母さん夫妻は埼玉在住だったのを、叔父さんの退職と同時に福岡に移住。
歳もとってきたことだし、そろそろ地元に戻って子供たちに近いところで過ごしたいという希望に親孝行の息子は親たちのために家を購入。茨城の筑西市に250坪の土地付きの家を用意した。家の方はそのまますぐに使える状態であるが、この物件に決めた大きな理由のひとつである離れの倉庫のような建物の方が骨組みと屋根以外はボロボロで取り壊しても良さそうな感じなのだが、陶芸を趣味にしている叔父さんはその倉庫を修理して自分の焼き物工房にしたいと、やたら気に入って即決購入とあいなる!
   
  そこで、その倉庫の大改装を現在進めているのであるが、ボクが関わった時には既にその倉庫のスギダラ化が進められていた。この改修に加担する前に従兄弟が連絡をくれて、スギダラの活動のことを聞きたいとスギダラ本部を訪ねてくれた。従兄弟はイベントプロモーションの仕事をしており、ここ数年、栃木県茂木のとある「森」の施設との関わりを持っていることもあり、自分がやっていることとスギダラの活動が何かしら繋がるのではないかと話をしに来てくれたのである。スギダラの活動の話をしたら、是非義理の従兄弟にも聞かせたいと言ってくれた。
   
  というのは、義理の従兄弟の家業が木材問屋で、浦安を拠点にかなり大規模な事業展開をしており、さらに活動の幅を広げようとしていたからだ。もちろん、ボク自身も義理の従兄弟が木材業界にいることは知っていたのだが、ここ数年会うこともなくお互いのやっていることの情報交換すらできていなかったため、この機に今更ながら杉談義をやることになったのである。義理の従兄弟はスギダラの活動に高い関心を示してくれた。ホント、今更ながらって感じで、随分疎遠な親戚関係と思われるかも知れないが、当の従兄弟だけでなく、義理の従兄弟とも本当に仲良しではある。ちなみに住んでいるのは東陽町でボクの職場から目と鼻の先だ。やっぱり疎遠な親戚か!(笑)
   
  で、ここのところ毎週土日で焼き物工房のスギダラ化が進められており、先般ボクも手伝いに行ってきた。
さすがに木材問屋の若旦那、持ち込んだ資材は天井、壁用の杉の羽目板、栗のムクのフローリング材といいチョイスである。
千代田的に残念に思ったのはどちらの材料も塗装が施してあり、耐久性を考慮した製品になっているということだった。用途から考えれば、羽目板もフローリングも無塗装、場合によってはオイル仕上げにして木材の風合いをより自然なものにできればと思うのであるが、その辺は従兄弟の方にもこだわりがあるのだと思う。
現在は天井の羽目板の施工が終わった段階で、床のコンクリート打ちの後、床材の施工、最後の壁板の施工と続いて行く。叔母さんたちが引っ越してくる7月中旬には立派な焼き物工房になっていることと思う。
現段階での仕上がり状況もぱっと見は自分たちでやったとは思えないくらい立派なものである。天井板の裏にはちゃんと断熱材も入れていて、夏でも風通し良く涼しいのではないかと期待している。叔父さんのご満悦な笑顔が今から目に浮かぶ。さらに欲が出て新たな注文が出てくるんじゃないかと孝行者の息子たちと甥っ子はそれすら楽しみにしている。
叔父さん、叔母さんが引っ越して来る時が楽しみだ。
   
  そんな機会を持ち、久々の再会を果たし、スギダラの話もできた。話の中で吉野とは結構取引きがあるとの事だったので、吉野中央の石橋さんを知っているかと問うと、もちろん知っていると・・・その他、ボクが昨年の吉野ツアーで知り合った吉野のチーム・カスガイのこともよく知っていた。
そんな話を石橋さんに伝えたところ、この奇遇な関係性に大喜びしてくれた。
木材、特に杉に関わっていると、ごく普通に繋がりが広がって行くのが面白い。
疎遠ではあったが、身近なところにこんな素敵な出会いがまだまだあった。これも杉が取り持つ絆、スキズナなのだ。
そして、この身近なところに生まれたスキズナにはその後のさらなる繋がりがあった。
その報告はまた別の機会に・・・(ち)
   
 
  従兄弟たちが庭の工事を依頼している造園屋さんからただでもらって きたという発砲スチロールの断熱材を貼り込む千代田。天井面の作業 は登ったり降りたりが多く、かなり疲れる。
   
 
  仕上がった杉天井。梁が通っている部分をくり貫いたり、写真では わからない苦労がある。そのくり貫きがピタリとうまく行った時の 快感は格別で従兄弟同士3人で大盛り上がりした。こういう共同作業 は本当に楽しい。
   
   
   
   
  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社パワープレイス所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
『スギダラな人々探訪』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_chiyo.htm
   
 
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