第二特集 ユイス展 in Akita  
  ユイス展&温ダラ祝結婚サプライズ
文/ 菅原香織
 
2010年5月13日。秋田から大都市東京に就職し、スギダラトーキョーに所属していた杉臣こと武藤貴臣さんがついに故郷に錦、いや、故郷にスギを飾る日がやってきました。
   
  そもそもは昨年の暮れ、秋田駅前のバスのり場のスギダラ化に貢献してくれた杉臣くんが美短のスギダラ秋田支部を訪問してくれたときのこと。秋田市のスギダラ化についてダラダラと妄想対談の最中、杉玉?か誰かが「ユイス展を秋田でやろう!」とささやいたのがきっかけで、「ユイス展in Akita」の企画が走り出しました。
   
  常々、スギダラ関係の展示会をやるなら、秋田のアート・デザインの発信地として定着してきたギャラリー、ココラボラトリー(ココラボ)でと思っていたので、展示会などイベントの予定が入っていない時期をココラボを主催する笹尾さんに問い合わせることにしました。
   
  年が明けて2月。温ダラとカトさんと3人で窓山のこれからの活動プランを練っていたところ、温ダラから「5月15日に結婚披露宴をやることになったので、その日は空けておいてくださいね〜」といわれました。彼女入籍はすでに8月にしていたのですが、諸事情が重なりなかなか披露宴ができずにいたので、決まってよかったね〜喜んで出席します〜と、早速スケジュール帳に書き込みました。
   
  3月、卒業式や卒業制作展でバタバタしていたところ、5月の中旬あたりにココラボでユイス展ができることが決まりました!との連絡が杉臣くんから連絡があり、聞けば5月13日から16日だというので、手帳に書き込もうとして・・・え?おや?あれ?5月15日は、温ダラの結婚披露宴じゃないですか!
   
  そういや2月に温ダラが、「披露宴には南雲親分にも来て貰いたいなぁ、そのときにスギダラのメンバーが集まるようなイベントもあればいいなあ、なんてことを口走っていたような・・・(笹尾さんと温ダラは仕事上の関係もあったし、そもそも温ダラに花婿さんを紹介した愛キューピッドだったので、な〜んか仕組まれたような気がしないでもないけど)結果的に温ダラの望む展開になりましたが、杉臣くんとその仲間たちにとっては思わぬ波乱の展開になったようでした。
   
  北のスギダラは数字上では結構いますが、半分は能代や二ツ井にいるメンバーなので、秋田市内で一緒に活動してくれる北のスギダラメンバーは、じつはいままで温ダラ以外にはいませんでした。でも、ユイス展のど真ん中で結婚式の花嫁をやらなきゃならない温ダラにユイス展の準備はさすがに頼めないし、一人でやるのは大変だなあと、思っていたところに、次々と強力な助っ人が登場しました。
   
  ココラボでの本格的な展示は初めてだったのでココラボでの展示のフライヤーや印刷物、時には展示会のスタッフも経験している美短卒業生の矢吹さん(noon design box)。親身になって相談に載ってくれて、DM、フライヤー、ポスターなどグラフィックデザインから、クライアントの雑貨店さんへの告知、オープニングイベントの企画案や買出し、二次会のセッティングまで、一手に引き受けてくれました。そしてココラボの笹尾さんはじめスタッフの皆さんにも本当にお世話になりました。
   
  会場設営や4日間の会場当番をやってくれた美短卒業生の涼ダラこと涼子ちゃんは、ある意味杉臣くんの「戦友」といえるほどの活躍を見せてくれましたし、秋田市から二時間もかかる鷹巣から来てくれた直美ちゃん、会場の写真撮影を買って出てくれた美短専攻科のasugiちゃん。たくさんの人々に支えられてユイス展を開催する準備が着々と進みました。
   
  5月12日、ユイスの展示台に使うフォレストボード(杉皮の樹皮を固めた断熱材)を取りに能代へ向かいました。工場で450×1800×50ミリの大きさに切ってもらったものを12枚。助手席と後部座席を倒して天上スレスレではありましたがぴったり収まりました。新車の社内を杉皮だらけにしながらいざココラボへ。納品後職場に戻ると明日までに2つの企画書提出の依頼メールが(涙)夜中の3時までに一本、明け方の5時までに一本仕上げてほぼ貫徹状態で午前中になんとか提出完了。午後は授業で新屋駅の現地調査をしたあと、2時半過ぎに美短の倉庫から秋田杉屋台を出して、軽トラックに積み込んでココラボへ。(軽トラックはなんと義父が運転して出してくれました。)予定通り3時前に到着、屋台の搬入作業に取り掛かりました。
   
  ココラボは中二階にあるので、入り口まで狭い階段を数段担いで屋台を搬入しなければなりません。男手だったら二人いれば十分持ち上がるのですが、きりたんぽの串より重いものを持ったことがないすぎっち以下女性陣では到底無理。予定では3時にはユイスの梱包を解いている杉臣くんと萩原さんにも手伝ってもらうはずだったのですが・・・いない!もしや電車に乗り遅れた?携帯に電話をしてもつながらず、一抹の不安がよぎったけれどいないものはしょうがない、いるメンバーでよっこらしょっと持ち上げて無事搬入完了。と、そこにひょこっと二人が現れたので、ちゃんと着いていたんだーとほっとしました。
   
  その後は萩原さんの指示でトークイベント仕様の会場設営をサクサクこなし、会場一時間前には準備完了。定刻に始まったトークイベントには秋田県内各地はもとより、青森や岩手からも駆けつけてくださった参加者も。最後にはつくし文具店の商品のじゃんけんプレゼントや道行湯椅子のサプライズプレゼント(杉臣くんにとってサプライズ!)もあり、ほぼ満員の大盛況でした。
   
  唯一のアクシデントといえば、前半の「ユイスのはなし」に続き座談会にはいるころ、起床後36時間目に突入して変なテンションになっていたすぎっちに幻聴と幻覚が襲ってきて、萩原さんが歩いて町を知る「歩路(ほろ)」という活動について話を始めたときに、すぎっちの脳内で「ほろ?→ホロホロ→ホロホロ鳥」という連想ゲームが勝手に始まり、ホロホロ鳥の着ぐるみを着た萩原さんが現れた時点で笑いをこらえなくなり、座談会を中断してしまいました。すみません。反省してます。結局二次会までしかがんばれず、42時間目にやっと眠りにつきました。
   
 
  梱包を解いてテキパキとユイスの展示をするスタッフの動きがすばらしかった。   トークイベントの会場セッティング完成までもう少し!
   
  会場入口にはスギダラトーキョーの手ぬぐいがのれん代わりに下げられて。   銭湯の入口みたい....中は混浴です(笑)
   
  銭湯の番台・・・じゃなくて、受付です。   ユイス展inAkitaのポスター
   
  中から見るとこんな感じです。   今日の当番は「はぎわら しゅう」さん。テーマは「ユイス」
   
  画面一番左の女性が北秋田市から2時間かけてきてくれた武藤君の後輩。   このときは嵐の前の静けさだと知る由もなく、ほっと一息。
   
  開場とともに次々とお客さんがいらっしゃいました。   受付にはスギダライベント初デビューの涼ダラとasugi。
   
  学生さんから社会人、ショップオーナーなど40名近くが参加されました。   ココラボ主宰の笹尾さんの司会で、定刻通り18:30にスタートしました。
   
  今回、秋田と東京を結んでくれた武藤さんあいさつ。   いよいよ萩原さんのトークが始まります。みなさん身を乗り出して聞いていました。
   
  熱心にメモを取りながら聞く学生の姿も。   ワルシャワから中央線沿線までグローカルで楽しいお話でした。
   
  いつの間にか着替えて登場。ユイスデザイナー、カタル。   道行湯椅子は、このときから別名「ひもつき」というニックネームに。
   
  なんだか実演販売みたいになってきました。と苦笑いしつつ、しっかりプレゼンする杉臣。   萩原さんが手がけてきた様々なプロジェクトについても話が及びます。
   
  4面に座れるようにしたユイスの誕生エピソードに、会場の女子の多くが同意。   第2部はビール片手に座談会のはずが・・・
   
  会場全員の自己紹介+お気に入りのユイス発表会となり大盛り上がり。   ひもつきの正しい持ち方を伝授。
   
  二ツ井からカトさんも駆けつけてくれました。   つくし文具のプレゼントじゃんけん大会!
   
  最後は全員参加の道行湯椅子のサプライズプレゼント争奪戦に!   が、勝者がなんと萩原さん!結局、最後に負けた学生にプレゼントされました。
   
   
  さてご存知のように、スギダラではメンバーの人生の節目があるごとに数々の伝説のサプライズが仕掛けられてきました。温ダラにとって結婚は人生の節目であると同時に、生まれ育った秋田を離れることになる節目でもあります。ということは!・・・そうです、北のスギダラの貴重なメンバーがいなくなってしまうのです。(涙)すぎっちにとっては、相棒を、片腕を、奪われるようなもので、正直いって素直に喜べない自分がおりました。(温ダラ、ごめんね、でもこれも愛だよ、愛。)
   
  そんな気持ちをどうやって伝えようか。やっぱり、あれだ。サプライズしかない!というわけで15日に向けて温ダラ祝結婚サプライズ作戦が南雲さん主導の下、辻さんが取りまとめ役となってくださって、合計21名のスギダラメンバーからのお祝いメッセージと40枚ほどの温ダラのスマイルショットの入ったアルバムと飫肥杉のスツールをプレゼントすることになりました。
   
  萩原さんを見送った14日、ウチダラ洋行から寄せ書きをして送られてきたスツールが職場に送られてきました。アルバムは15日当日に南雲さんが持ってくることになっています。ただ渡すだけではつまらない。せっかくだから、温ダラのとびきりの笑顔を花婿さんにも見てもらおう。というわけでスライドショーをつくり、カトさんにプロジェクターの手配を頼んで、結婚披露宴の二次会でサプライズを決行することとしました。
   
  15日、披露宴用衣装とパソコンと杉スツールを車に積み込み、12時過ぎに二次会の会場前で加藤さんと待ち合わせ。あいにく店はしまっていましたが、窓から覗き込むとスクリーンになるような壁がない!ということがわかり、急遽スクリーンを「誰か」に作ってもらうことにして、(そして涼ダラちゃんが大変な目に・・・)加藤さんは材料を調達にホームセンターに、私は13時に秋田空港に到着する南雲さんをお迎えにそれぞれ車を走らせました。
   
  ところで、南雲さんとは昨年の11月、宮崎日南の杉コレからの帰り、羽田空港で別れてから半年ぶりの再会。南雲さんはいつも会うときはカジュアルな服装なので、結婚披露宴にはいったいどんな格好をしてくるのか?割とカジュアルな格好でいらした加藤さんからは「南雲さん、どんな格好かな。スギダラ代表としての品格が問われるからなあ。俺も合わせなきゃいけないから、親分の服装電話で教えて。」といわれていたので、いつもTシャツの南雲さんだけど、ここはビシッっとフォーマルなスーツ?やっぱりTシャツにジャケット?それともまさかの紋付袴?妄想は膨らむ一方。ドキドキして到着口から出てくるのを待っていました。予想に反して南雲さんは、スーツにネクタイ姿で照れくさそうに登場。早速カトさんに「南雲さん、ネクタイしてきましたよ!」と報告して、ココラボに向かいました。
   
  ココラボについたときにはすでに2時近く。お茶をしながらサプライズの作戦を練りまししょうと南雲さんとカトさんと3人で二階の喫茶店へ。
   
  2次会のっとりサプライズ大作戦:
披露宴が終わった後、先に南雲さん、カトさん、すぎっちがこっそりパソコンとプロジェクターを持ってきておいて二次会に参加。ユイス展が終わりしだい、杉臣くんや涼ダラちゃんたちに二次会会場にスクリーンと杉スツールとアルバムを持ってきてもらい、ユイス展を宣伝するという設定で、二次会会場にきた温ダラの後輩である杉臣くんのユイスのプレゼンが始まると「それではスライドでユイス展の様子をごらんください」といって、温ダラのスライドを上映。花婿の知らない温ダラの笑顔、笑顔、笑顔。そして、南雲さんとすぎっちがアルバムと飫肥杉スツールをプレゼント!
   
  よし、筋書きはばっちりだ!ユイス展の会場に来ていた美短の学生にも声をかけ、サプライズ作戦を伝えて、南雲さん、カトさんと披露宴会場のあるホテルへ向かいました。
   
  披露宴詳細については温ダラのプライベートなので割愛させていただきますが、「スギダラメンバーの3人がいたテーブルが、終始一番うるさかった」と温ダラに叱られました(^ ^;) まあ、確かに三人とも、披露宴の進行そっちのけで言いたい放題に飲み放題。でも、かわいいメンバーが嫁に行っちゃうんですよ。飲むしかないじゃないですか。娘を嫁に出す父親の気持ちがちょっぴり分かるような気がしました。
   
  披露宴が終わってココラボに戻り、作戦の最終確認後(無茶振りされ)心なしか目が泳いでいる杉臣くんに「じゃ、あと頼んだよ!」とパソコンを持っていざ2次会会場へ。2次会は職場の同僚や友人などお若い方が中心ですこし気が引けましたが、そんなことぐらいでひるんではいけない!と、てきぱきとプロジェクターやパソコンのセッティングを始めると、進行役らしき人がすっ飛んできて「いったいなにをするんですか!?なにか映すんですか!?」と詰め寄られ、「花嫁に仲間からメッセージとプレゼントをしたいので」と説明すると「そういうことはちょっと聞いていないんですけど」(そりゃサプライズなんだから言ってないし)「じゃあそれは何分ぐらいかかるんですか?進行もあるのでビンゴの前でいいですか?」(温ダラがいなきゃできないじゃん)「花嫁が着いたら5分ぐらい時間をいただければ・・・」と、なんとかご理解いただき、サプライズ作戦続行となりました。花婿さんの職場は某放送局のN●Kということで、段取りにないことやスギダラのいい加減さはきっと許されないのだなあと、職場の厳しさを垣間見たような気がしました。
   
  遅れること1時間半、やっと花嫁登場。先に来ていた花婿さんとともに着席してスタンバイオーケー!別のテーブルに来て待機していたユイス展メンバーたちに声をかけ、場違いな雰囲気とN●K軍団のテーブルの間を「すすすすいません」といいながら杉臣くんが進み出て、まずはお祝いのことば・・・「えー本日はご結婚おめでとうございます。えーと僕は、花嫁の温子さんと同じ短大の後輩で・・・・」(無茶振りした割りにしっかりアドリブできてるじゃん←ひどい大人)その間に、涼ダラたち美短後輩がスクリーンを広げてプロジェクターの画像を出す準備をすすめるすぎっち。「じつは今、ココラボでユイス展という展示をやっているのですが・・・・」(もうちょっとで映るから、がんばって、杉臣!)照明が落とされ、涼ダラがユイス展の受付で午後いっぱいかかって縫い上げたスクリーンに80インチはあろうかというスクリーンいっぱいに温ダラの笑顔が流れる。BGMをバックに2分ほど会場しばしの静寂。スライドが一通り終わったところで、南雲さんが杉臣くんとバトンタッチ。南雲さんからスギダラのことを紹介して仲間たちのメッセージアルバムを、「一家に一台、杉の家具!」ということですぎっちから杉スツールを贈呈しました。
   
  結局辻さんの予感的中。サプライズやることで夢中になっていて、現場写真を誰も写真を撮ってなかったので、終わってからの記念撮影でごめんなさい。でも、みなさんから寄せられたメッセージは確かに伝えましたよ!この場をお借りして心からご協力感謝いたします。ありがとうございました。その後はサプライズ決行メンバー8名で成功を祝って三次会、四次会は夜明けのお好み焼きで締めて、スギダラらしく朝日の中でお開きと相成りました。
   
   
  披露宴用に変身!あれ?男子トイレにはいって、   女子トイレから?
   
  温ダラのお母さんと盛り上がる親分とカトさん   温ダラの後継ぎはお母さんに決定!
 
  笑顔満開の花嫁に、企み笑いの3人
   
  秋田駅西口の杉のバス停をチェックする親分。   花嫁の登場まで仲間うちの宴会芸で盛り上がる二次会。
   
  あきらかに悪巧みの最中って感じですねぇ。   決行の瞬間は撮り逃しましたがサプライズ作戦は大成功!
   
  温ダラ、スギ永くお幸せに。   温ダラのおかげで新しい杉絆が出来ました。ありがとう!
   
   
  16日の最終日、会場係の涼ダラちゃんをピックアップして会場へ。しかーし。杉臣くんの姿が見えず。電話すると、実家にいらっしゃるとのこと。お昼過ぎにお見えになるとのことでしたので、涼ダラちゃんと会場係を担当しました。たくさんの方がユイスを通して杉のこと、スギダラのことに興味を持ってくださって、本当に秋田で開催してよかったと思いました。また、ユイス展がきっかけで6人もスギダラに登録があったと聞き、びっくりです。アンケートも50パーセントを超える回収率で、反響の大きさをかみ締めることができました。
   
  お昼過ぎ、駅前のバス乗り場から空港行きのバスに乗る南雲さんから「シェルター、なかなかいいね」ってうれしいメールあり。午後もひっきりなしにお客さんが入って、5時で閉場の予定が、6時近くまでお客さんが途切れず、なんだか終わりにするのがもったいないような気持ちになりました。スギダラ秋田では、はじめてのデザイン系の展示会で秋田の人はどんなふうに見てくれるのかちょっぴり不安でしたが、アンケートの結果ではおおむね好評だったので、また新たな企画で杉モノ系の展示会ができたらいいなあと思っています。
   
  それにしても、なんと濃密な時間・・・・・これだからスギダラはやめられません!!
   
 
  ワクワク、ドキドキ、楽しくなければスギダラじゃない!
   
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
『あきた杉歳時記』web単行本 http://www.m-sugi.com/books/books_sugicchi.htm
   
 
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