連載
 

杉で仕掛ける/第29回 「造林用作業道横断溝」

文/ 海野洋光
   
 
自社の話をするのは、本当に難しい。下手をすると営業的な宣伝と受け取られてしまう。書きにくいのです。しかし、今回の連載で少しだけ、ほんの少しだけだが、成功している自社の事例を取り上げたい。どのようにすれば、木材が売れるのかヒントになるのでは…と考えるからだ。
   
  杉ダラケ倶楽部の趣旨は、「一家に一台杉の家具を…」だが、海野建設株式会社では、建設業でありながらも、廃棄ゴムベルトを再利用した資源循環型の木製品「造林用作業道横断溝」を開発(実用新案登録済)、製造販売を手がけている。
   
 
  造林用作業道横断溝
   
  山にも、建設業にも、木材行の方にも…。そして、環境にも!!
   
  造林用作業道は、植林や下刈りをして山を保全するための大切な未舗装の簡易道です。しかし、雨水が集中すると未舗装の簡易道路であるため、崩落や崩土災害が発生するのです。雨水を弊社の横断溝を設置することによって排水を分散し、雨水の集中を防ぐことができ、崩落災害は激減します。
   
  この製品は、「三方良し」の評判の良い製品です。森林保全事業に効果をもたらし、県下の造林用作業道が災害に強くなり、国産スギ材とリサイクル品の使用によってCO2削減に継続的効果を上げることができます。何よりも、国産材の消費を山で消費するということです。価格も従来品の3分の1となっています。地域に根ざす中小建設業の森林事業の新しいモデルケースとして注目を集めています。
   
  造林用作業道と書きましたが、民間でも結構使用しています。写真は、大分県の湯布院の高級ホテルに海野建設(株)の製品がひっそりと設置しています。
   
   
   
  看板だけですが・・・。是非、湯布院にお泊りの節は、ご利用ください。このホテル入り口の坂になにやら不思議なゴム板が斜めに飛び出している??ものが、弊社の造林用作業 道横断溝なのです。
   
  この製品は、90mmの角材にゴム板をはさんだだけのものです。(それだけではないのですが・・・)このゴム板にこの製品の特徴があります。
   
 
   
  造林用作業道は、未舗装の簡易道路であるため溝に土砂が堆積しやすく、コンクリート製の側溝の従来品は、定期的な除去が必要で、重機やトラックの通常の通行では、破損するため、目的地まで時間を要していました。弊社の木製横断溝は、2本の90mm角国産スギ材に廃材ゴムベルトをはさんだ逆T字型(上図参照)となっており、未舗装道でも土砂が排水を妨げることなく、大型車輌の走行でも破損しません。軽量なため人力設置ができ、施工性も良く、価格は、従来の1/3です。
   
  【定価 4m 15000円 3m 13000円(送料・消費税別)】
   
  もうひとつの大きな特徴は、工場などで使用できなくなったベルトコンベアーは、産業廃棄物として焼却処分されていました。弊社では、この廃材ゴムベルトを再活用して廃棄物を減らし、森林を守り、CO2の発生を減少させることができるのです。
   
  どうですか?廃材の処理に困っている工場は、喜び、災害に強い、壊れない作業道が作れ、しかも価格は、従来の三分の一で済む。政権交代で叫んでいる人たちよりも先に「コンクリートから木材を」もう10数年前から実践してきているのです。ここまで書くともう宣伝ですので、もう少し、分析してみたいと思います。
   
 
   
  なぜ、この製品が売れるのか?
   
  1. 木材だけに頼らない。
  林業者や木材業の方が陥りやすい罠に「何が何でも木材を使う」という考えがあります。確かに、全て木材だけ使用して初期の目的が達成されるなら、一番良いことですが、何が目的なのかをしっかりさせることです。木材を売ると言う目的ではなく、有効に使用してもらうと言う考えが大切です。
   
  2. 現場の意見を常に反映させる。
  この製品は、弊社が、作業道の開設作業をする際に生まれた製品です。販売するという目的よりも、「山を守りたい」、「災害に強い作業道を作りたい」という想いが、少しずつ改良を重ね、できたものです。簡単な仕組みのようですが、見えない技術がこの製品には、いくつかあります。現場の意見やアイデアを盛り込んだ製品作りという考え方が大切です。
   
  3. 環境と言うキーワード。
  実は、はじめから廃材のゴムベルトを使う予定では、ありませんでした。「環境にやさしい」というよりも、「価格を安くしたい」という発想からのスタートだったのです。しかし、県のリサイクル担当の方から絶賛され、保健所などの関係者が視察にくるようになりました。ただ、廃材のゴムベルトを集めるのは、容易なことではありませんでした。産業廃棄物ですから、なかなか、集まらないのです。杉ダラ流の交渉術が、役に立っています。
   
  4. 価格の設定
  この製品を販売するために価格の設定がかなり、重要なポイントになっています。ここを間違うと良い製品でも、まったく、売れません。リサーチが必要なのですが、「原価」がかかりすぎると設定価格に大きく影響します。「おっ」と思わせる価格にできるかまで、製品化では考えておかなければなりません。ちなみにライバル製品(コンクリート製)の3分の1は、設計者には、魅力的ですし、施工が簡単なため、施工業者にも喜ばれています。
   
  5. 販売方法・宣伝
  この製品は、宣伝をまったくしません。「口コミ」を中心とした購入されたリピーターからの再販が多いのです。これは、「良い物は売れるんだ」ということではなく、この製品が、特殊で使う人がかなり限定されるからです。(笑)でも、木材製品ってそんなところから売ることが大切なのでは、と思うのですが・・・。
   
 
   
  最後に
  全国向けに販売していますのでお気軽に下記担当までご一報いただければ幸いです。
   
  本件に関するお問合せは、下記まで。
 
会社名
 海野建設株式会社
担当者名
 代表取締役 海野洋光
携帯/電話番号
 090-8393-9915/0982-69-3174
HP
 http://www.miya-shoko.or.jp/togo/kaiin/umino/
メールアドレス
 umi@mocha.ocn.ne.jp
   
   
   
   
  ●<うみの・ひろみつ>木材コンシェルジュ
ほぼ、毎日更新しています。ブログ「海杉 木材コンシェルジュ」 http://blog.goo.ne.jp/umisugi/
2009年3月31日をもって、日向木の芽会 を卒業しました。
海野建設株式会社 代表取締役 / HN :海杉
『杉で仕掛ける』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_umi.htm
   
 
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