連載  
  あきた杉歳時記/第44回 「五城目の朝市」
文/ 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
猛暑のあとの冬は豪雪になるという言い伝えが今年は的中し、秋田は平成18年以来の大雪で雪ダラケの毎日です。そんな中、1月11日にあるプロジェクトでスギダラ代表の南雲さんが来秋しました。氷点下の真冬日でしたが、日中は雪も小休止で青空となり、上空から雪景色のスギダラ王国をご覧いただけたとのこと。相変わらず薄着な南雲さん「やっぱり秋田は寒いね」(笑) (だからあれほど「防寒対策はしっかりね」って言ったじゃないですか!)
   
  さて、今回のプロジェクトとは、天然秋田杉の産地で知られる秋田県南秋田郡五城目町の自然文化や地域資源を生かした、杉モノづくりのプロジェクトです。昨年末にNPO法人秋田バリアフリーネットワーク(以下BFN)理事で仲小路ジャズフェスティバルの仕掛け人でもある芳賀洋介さんが「杉のことならスギダラに相談しては?」と、知人に紹介されてスギダラ本部にご依頼があったものです。そこでまずは五城目がどんなところなのか視ていただこう、ということで今回の五城目視察となったのでした。
   
  11日は今回のプロジェクトのまとめ役である芳賀さんが、秋田で多方面の活躍している仲間を誘って懇親会をセッティングしてくれました。懇親会まで3時間ほどあったので、今回試作に関してアドバイス等をいただこうということで、秋田市内にある萩原製作所を訪れました。萩原製作所では現在試作中の「杉エレキギター」を見せていただいたり、杉の家具に関する技術的なアドバイスなどもいただきました。
 
   
  懇親会開始時刻より少し早く着いたので、冷え切った体を温めるために川反のおでんや「江戸中」で軽く一杯のつもりがちょっぴり開始時間を過ぎてしまい、あわてて会場の醍醐へ。既に皆さんおそろいで、早速「練習」(秋田では先に着いた人が「飲み方の練習をする」といって先に飲んでいるのです)をしているところでした。南雲さんを迎えて改めて乾杯!その後、全員が揃うまで「練習」を積み重ね、かなり出来上がったところでスギダラ恒例の「全員自己紹介」。その後は焼き鳥「安さん」で2次会、最後の締めは「げっ、こく、じょう、お〜っ!!」と、「秋田下克上〆」でお開きとなりました。(懇親会の様子は北のスギダラで)
   
  五城目では毎月2,5,7,0のつく日の午前8時から正午ごろまで「朝市」が立ちます。秋田県内では最も歴史が古く500年前から続いており、季節の産物がたくさん並び県内外から訪れる人で賑わいます。もっとも冬の間は出店する屋台も少なく人通りもまばらですが、寒い中でも屋台を出している、父さん・母さん方との触れ合いに、ホッと心があったまる空間です。12日も時おり吹雪いて真っ白になる朝市通りを、BFN五城目観光推進事業部のメンバー5人の案内で散策しました。
 
   
  スタートは朝市通りの北端にある高性寺(こうしょうじ)。(昨年8月8日にジャズインプレッションが開催されたお寺で、芳賀さんも実行委員会のメンバー)五城目町の指定天然記念物の通称「夫婦ケヤキ」に降り積もった雪景色が美しい境内です。住職さんからありがたいお話を伺い、朝市通りをそぞろ歩きながら南端にある創業1688年の造り酒屋「福禄寿」を訪ねました。
 
   
 

福禄寿では酒蔵を開放しており、酒造りの現場を見学させていただきました。全国登録有形文化財にも指定されている酒蔵の中には、昔から使われてきた杉の道具が展示されており、興味津々。吟醸酒などの特別なお酒が眠っている蔵の付近はそれはもう芳しい匂いでした。「クラックラしそう!」と(^^;)ダラ洒落連発の代表に付き合ってくださった上に、新酒しぼりたての試飲もさせてくれて、南雲さん「これこそ、五城目の新酒、ゴジョーメーヌーボーに決定!」とお気に入りの様子。早速ご購入されていました。私は運転手だったのでお酒の元の湧き水で我慢(涙)・・・

 
 
   
 

午後は東北で唯一弓矢を作る「御矢師(おんやし)」の永澤弓具店を訪ねました。工房では選び抜かれた竹を一本一本炭火であぶりながら真っ直ぐに矯正していく作業の最中でした。茶道のお手前のように流れるような動作が美しい!弓道をやっている人にとっては、永澤弓具店の弓矢は、上達していつかは使えるようになりたい・・・と憧れの「的」なんだそうです。

 
 
   
  次に訪れたのは布川刃物製作所。包丁や鎌や鍬からマタギ刀など、さまざまな実用の刃物を作られています。もともとは自動車開発に携わっていたそうですが、埼玉から移り住み、500年の伝統を誇る秋田五城目鍛冶、鉦正刃物の故小玉正太郎氏に師事。2001年に独立されたそうです。ブログ鍛冶屋だよりのほうにも是非訪問してみてください。美しい写真とともに五城目と鍛冶屋の魅力が満載です。
 
   
  最後に訪れたのは五城目木工(有)。主に欅、杉、桐で民芸タンスを作っています。代表取締役社長の石井さんは五城目の活性化にも大変ご尽力されている方で、杉材を生かした五城目のモノづくりに大変興味を持ってお話を伺うことができました。
   
  今回の視察でも感じたことですが、秋田、五城目の地域資源は本当にたくさんあり、そのどれも魅力的です。ただ、現実的には高齢化率は、県内でも1位 上小阿仁村45.6%、 2位 藤里町 39.4% に続き、五城目町は第3位で37.7%と上位にあり、今後も進む高齢化の中での持続可能な地域づくりが必要です。ぜひプロジェクトを成功させて「地域が幸せになるモノづくり」につながるようにしたいです。
   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
『あきた杉歳時記』web単行本 http://www.m-sugi.com/books/books_sugicchi.htm
   
 
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