連載
  無欲のデザイン
文・写真 / 南雲勝志
   
 

 最近やることだけは増えていき、対応がすべて遅れ遅れになって片付かない。片づかないまま次の事に取りかかるから、どんどん混沌としてくる。加えてやたらと疲れやすくなってきたので情けない。そんな事もあり、 今回はさらっと軽〜い気持ちで書こう。

 ものをつくる仕事に関わっている関係上、工場に行く機会は結構多い。工場はものづくりの原点。何をつくる工場でも思わず興奮するする要素を持っている。働き手から見れば綺麗な環境の方が良いのは決まっているが、こちらから見ると秘密めいて暗闇の中で何をつくっているか解らないような怪しい雰囲気に出くわすとワクワクする。そしてそんな工場には、毎日使われ、ごく当たり前に存在している道具にハッとする時がある。主に工具や機械ではなく、作業員が作業をし易くするための脇役道具のようなものを指す。
 それは売るためのデザインでもなければ、話題にしようなどという欲も全くない。ただ必要だからという理由だけでそこに存在している。工夫をしてありものでつくる事がミソで、高価なものになってしまっては何の意味もない。というか製作が許されない。逆にいうとそれはなくてはならない強烈な必然性を持っている。そして既製品のように何処の職場も同じようなものを使っている訳ではなく、どちらかというとそれをつくる事も結構得意な人達が作っているわけで、仮に同じような機能を持つ道具でも工場によって少しずつ違い、個性もあり、オリジナリティーもある。
 共通していることは機能的で美しいこと、使い込まれているので味があること、そして相応しい素材を使い、無駄が無いことなどが上げられる。用途が極めて限定されていること、そもそも贅沢だとか、必要以上に高いお金をかける必要がないことがその理由であろう。
 今市場に出回っている様々なプロダクトはその対極にあるのかも知れない。均一、綺麗、味がない。あって良いかもしれないけど、なくとも困らない。マーケティングで生まれるそれらはそもそも必要でない物まで商品の対象になり、消費者はそれに踊らされる。
 傍らにひっそりと存在する必要なデザイン。それらは愛着があり、100年でも残っていく要素を持っている。そんな無言のメッセージを我々に送っているような気がする。

   
  1.鉄板をL字に曲げたスツール(1-4ヨシモトポール)   2.スチール端材用ゴミ箱
   
  3.溶接道具カート   4.薪コード置きテーブル
   
  7.歳材運搬用カート(以下9まで馬路村製材工場)   8.歳材運搬用カート
 
  9.板材(大板天井材)天然感想用スタンド
 

 どうですか。知恵と工夫の造形。なんだか忘れちゃいけないものづくりのハートと、懐かしく味わいのある風景が見えて来ませんか。

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  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
 
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