連載
  支えてもらうこと、支えてあげること、自分でやること。
文・写真 / 南雲勝志
  いま地域が生き残るために・・・
 
  先日6月14日、旭川で行われた「針葉樹家具促進セミナーin上川」に若杉さんと参加してきた。細かな事は次号月間杉の特集で報告できると思うが、そのセミナーのパネルデスカッション終了後、会場から質問があった。細かくは覚えていないが、「先進地域はそれなりのやり方で頑張っていることが解った、では我々は何に向かって頑張っていけば良いか教えて欲しい。」というような質問があった。僕は「そうですね〜。その答えが解ればどこの地域も苦労しない。正解があるんですからね。多分大切なことは正解で有ろうがなかろうが、それを自分たちで考え、俺たちはこれで行くんだ!という思いこそが大事なのではないか。」と答えた。
これからの日本、地域が元気になり、それぞれのアイディンティティを持ち、独自のやり方を求め実現していくことが絶対に必要だと思っている。経済主導社会では計りきれない。そのために何を言われようが、俺達はこの方法で行くという覚悟が必要だと思っている。そこで自分たちでは出来ないこと、それをよそ者や馬鹿者、そしてそれぞれの専門の人に応援を求めていけばいいと思う。大事なことは自分たちが目指すモノは何かをまず決めること。
 
  上川の製材所に積まれたトドマツ
  秋田杉恋はその宣言をした。その上で秋田市、秋田県、そしてスギダラや秋田の理解者に協力を求めた。つまり秋田で何をやりたいかというはっきりとしたビジョンを北のスギダラ示せたからこそ杉恋に向かう覚悟と求心力が出来たし、スギダラは全国から応援した。多分それは菅原さんが過去のスギダラやスギコレといった活動に対し、憧れ、同時に貪欲に研究し、いつか秋田で実行したいという思いがあったからだ。そのためにあちこちのイベントやセミナーに参加し協力をしてきた。スギダラだけに収まらず、GSデザイン会議の会員になり、土木景観系との繋がりもつくってきた。言いたいことは積極的に参加し行動し、自分の考えを伝えていればみんな見ているし、理解者になる。それが暗黙の味方をつくることになるということだ。やってもらうためにはやってあげる、そして自分で実行するという思いがあればこそ成立する。

以前、日向市富高小学校での出来事も似たような話であった。スギダラ3兄弟で6年生にみんなでいい思いをしようと一生懸命盛り上げる。初めはタジタジだが少しゆとりが出来てくると、今度は逆に自分たちで先生達を驚かしてやろう!とギアが一段あがる。当然僕らはびっくりしながらも大喜びし、よしこうなったらあいつらもうちょっと盛り上げようぜ、と次の仕掛けを考える。そんな事の繰り返しで夢空間は出来た。そして最終回に彼らが言った言葉は忘れない。「私たちは自分たちも一生懸命頑張ったけど、大勢の方々にお世話になって初めてこの夢空間が実現出来たと思っています。そしてこの課外授業で感謝ということを知りました。」と。僕らは「とんでもない、みんなの頑張りを見せてもらい、こんな感動を味わえ、こっちこそ逆に感謝だ。」と思った。

目的のために頑張り実行する、そして支え、支えられ、再びその思いに応える。信頼関係はそこから生まれる。家族でも、会社でも、社会でも多分そこは一緒ではないだろうか。支えてもらうこと、支えてあげること、自分でやること。順番はどうでもいい。自分の思いを描き、責任を持つこと、そして相手を理解し、信頼関係を築くことが出来れば思いは必ず実現する。
   
   
   
  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
facebook:https://www.facebook.com/katsushi.nagumo
   
 
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