連載
  私の原体験/第4回 
文・写真/ 南雲勝志
  干瓢(カンピョウ)づくり
 

カンピョウやゼンマイなど田舎料理の素材は、日常よく使うものなので大抵の家では加工して保存食にしていました。山菜は春、そしてカンピョウは暑い夏の風物詩でもありました。
今日はカンピョウができるまでの話をしたいと思います。

ご存じの方も多いでしょうが、干瓢は夕顔の実からつくります。名前だけ聞くと朝顔、昼顔、夕顔と、同じ仲間のように思いますが、夕顔は全然別物で、単に夕方に花が開くということから来ています。 夕顔の実はヒョウタンとの同じ仲間で瓜科です。もともと瓢とはユウガオ・ヒョウタンなどの総称で、干す瓢だからカンピョウ、ものを入れる瓢だからヒョウタンと呼ばれる訳です。

私の地域では夕顔の実のことを訛って,「ゆうごう」と発音していました。暑い夏の盛り、家族みんなでゆうごうを加工してカンピョウづくりをしましだが、割と手間が掛かるのと、やりようによっては結構面白いので子供ながらずいぶん手伝いました。 こちらは 参考画像です。

さてつくりですが、まず採ってきたゆうごうの皮をピューラーで綺麗に剥きます。結構長いので(60cmから80cm位)なかなか難しいです。そしてまず、縦に真っ二つに切ります。さらにそれを半分に切り4分の1にします。
次にヘタの部分を包丁の柄の下でトントン叩きます。ヘタはこれ以降切ることはなく、全体を繋ぐ役目になるので、そうすることでヘタが割れずに済むのです。

   
  皮を剥く   縦に二等分
 

次にヘタを繋いだまま、実の部分だけを八分の一に切ります。そこで初めて三角形委の瓜の芯の部分を削ぎ落とします。ここは味噌汁にすると美味しく、冬瓜とよく似た味です。そしてとても淡泊なので鯨の皮と一緒につくった味噌汁は夏の楽しみでもありました。

   
  さらに八等分  

芯のやわらかい部分をカットする

 

さて芯を取り、厚さが1cm程度になった皮の部分を今度は縦に細く(5mm程度)裂いていきます。長いので包丁を止めず、同じ太さでヘタの部分から末端まで一気に同じ太さで切るのは簡単では無く、上手い下手がすぐに分かりました。(笑) これを繰り返しして行くとカンピョウの下地づくりの準備が完了です。

   
  短冊状に次々に切る   すべてが乾くよう一定間隔に開き天日干し。
 

切ったゆうごうをざるに入れ、屋根に持って行きます。屋根は瓦ではなく、トタン屋根に干します。トタンのの熱がカンピョウをつくるのにちょうど良く働きます。 ヘタを中心に放射線状に並べ扇形のカンピョウ干しです。真夏であれば昼から干し、途中で裏返し、夕方まで。これを二日ほど繰り返すとひょろひょろになったカンピョウが出来ます。少し香ばしい ほんのりとした良い香りが懐かしいです。

なぜヘタを繋いでおくか、これは天気が急変し夕立がやってきたときなど、ヘタを掴むと一気にしまえるからです。何事も知恵があった訳ですね。仮に雨に当たってしまうともう一度干しても甘みが消えてしまうため、出掛けるときはカンピョウひとつに行動を左右され、ハラハラものです。最近はこのヘタに虫が溜まると言うことでヘタを繋がずバラバラに干すようです。 もっともトタン屋根もほとん無くなったし、時代の流れですね。

またネットで調べると大概は縦に裂かずに輪切りにしてピューラーで横に剥く方が一般的なようです。全然知りませんでした。地域によってつくり方もいろいろあるようです。

 
  今はこんな風にヘタは切り離してバラバラです。でもかろうじてトタンは使っています。
   
 
   
  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
facebook:https://www.facebook.com/katsushi.nagumo
エンジニアアーキテクト協会 会員
月刊杉web単行本『かみざき物語り』(共著):http://m-sugi.com/books/books_kamizaki.htm
月刊杉web単行本『杉スツール100選』:http://www.m-sugi.com/books/books_stool.htm
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