現在、年間の生産量は約8万挺で99%が輸出です。北米、ヨーロッパなどです。猟銃メーカーというと「自衛隊に納入しているの?」とか、「武器を製造しているの?」などと聞かれますが、弾は3発しか入りませんし射程距離もショットガンで50m、ライフルで300mなので、とても戦場では使えません。
また「警察などに納めるピストルを作っているの?」とも聞かれますが、銃身(筒の部分)が短いものは価格競争が激しく利益が生まれないので作っていません。高付加価値で競争相手のあまりいない猟銃の分野に特化しています。
猟銃を製造するにはいくつか要となる技術があります。
1つは、銃身にまっすぐな穴を開けることです。丸いパイプを使っていると思われがちですが、実は円筒形の鉄の塊に穴を開けていくのです。最初は細い穴を開けて、少しずつ太くしていき、まっすぐな穴を開けます。穴がほんの少しぶれても300m先ではかなり大きなズレを生じてしまいます。この技術を利用してガンドリルマシンという精密工作機械も作っています。この機械は自動車のエンジンやプラズマテレビの製造に使われます。
2つ目の要は、鉄を削り出す技術です。機構部分はとても硬い特殊な鉄で出来ていて、複雑な形状のものを精密に削り出していくことができます。この技術を使ってゴルフのパターのヘッドも作っています。ふつうヘッドの芯には周囲とは別の金属がはめ込まれているのですが、固定するためにビス類を使う他社のものと違って、ミロクのものは何も使わず形状だけで固定できるため、球の転がりが良く、ピンから遠く離れていてもよく入るそうです(相性がいい人は)。因みに1本7万円です。
3つ目は、鉄や木に彫刻する技術です。高価な猟銃は手作業で1ヶ月くらいかけて彫金・彫刻を行います。安価なものは型を押し当てて模様をつけますが、押し当てると金属がゆがむそうで、あまり良くないのです(目で見てもわかりませんが)。
最後の1つは木材を寸法安定させることです。猟銃に使われる木は、現在くるみの木(ウォールナット)です。木目が綺麗でねばりのある木ですが、かなりあばれます。この木を寸法安定させ屋外の使用にも耐えられるものにする為、木の研究をしてまいりました。その中で生まれたのが、「モックル処理」という特殊な木材保存技術なのです(やっとここまでたどり着きました!)。
ただ、猟銃にはこの処理は使えませんでした。なぜかというと、モックル処理を行うと木材が少し重くなってしまうからです。猟は鉄砲をかついで山を駆け巡る為、重量制限があります。処理をするとどうしても制限を超えてしまう為、現在は乾燥や塗装技術によって寸法を安定させています。
猟銃に使えなくても、猟銃の端材を有効利用することはできます。それでつくり出したのは自動車の内装部品。実は猟銃に使う木はとても高価で、1立方あたり1,000万円もする木材があるのです。とても無駄にはできません。その高級木材を使って現在はトヨタ向けのハンドルを中心に製造しています。