連載

 

スギダラな人びと探訪/第5回

文/写真 千代田健一
杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 

 

 


<スギダラ秋田ツアーに参加した人々>

 去る10月22日、23日にスギダラ倶楽部は秋田杉を訪ねるツアーを実施いたしました。
ということで、今回はそのスギダラ秋田ツアーに集まったスギダラな人びとをご紹介してまいります。
今年の3月に実施したスギダラ吉野ツアーの直後から画策していた今回のツアー、秋田在住の会員、スギダラ倶楽部秋田支部長、すぎっちこと菅原香織さんに全面的にご協力いただき実現いたしました。菅原さんは秋田公立美術工芸短期大学の産業デザイン科で助手をされていて、最初にスギダラにコンタクトがあったのはスギダラ本部の南雲、若杉両氏が参加しているデザインチーム「happi」のサイト経由でした。実は南雲さんとは以前新宿の展示会でご一緒したことがあったそうです。その時に南雲さんが出展してたのは言うまでも無くスギダラな作品だったわけですが、その作品名が「すぎっちょん」・・・「すぎっち」と似てますね。実はこのときからスギダラとは出会う運命にあったのでしょうね。
 菅原さん、元々は秋田の人では無いのですが、秋田杉にはまってしまっている杉フリークな方で、ご自宅を改装した際にも地元の秋田杉で杉キッチンをお作りになられたそうです。(随分前にスギダラ家の人々でご紹介してるんですが、覚えてる人いるかな?)
今回のツアーのためにいろいろと企画、段取りしていただいたのですが、訪問先へのお願いや問い合わせの時に、「日本全国スギダラケ倶楽部の菅原ともうしますが・・・」と名乗って活動してくれていたそうなんです。いやいや、参りました。そんな会員さん全国広しと言えど、すぎっちさんくらいですよ。(嬉) その話を聞いただけでも菅原さんの熱意ある人となりがわかると言うもんです。残念ながら、ああ、いやいや、小学生のお子さんを持つ2児の母でとても気さくで楽しい方なんです!

 

すぎっちこと菅原さん

   今回のツアー、日本全国から24名もの参加者がありました。宮崎から3名、大分から1名、高知から1名、大阪から1名、あとは首都圏から・・・かなりの大所帯だしどちらにせよ現地での移動手段も確保せねばならなかったので一部のメンバーは東京からレンタカーで行くことにしました。そんな無謀なプランに乗っかれない(根性の無い?)人々は飛行機での移動を選択しました。すぎっちさんには飛行機組みを出迎えに行ってもらったのですが、その時に写真に写ってるカードを持って出迎えてくれたみたいです。いやいや、張り切ってますね。

 今回は大館市と二ツ井町を中心に杉に関わる数々の名所を訪問することになっていたのですが、その二ツ井町で地元の杉材の普及活動を行っている「モクネット」という事業共同組合の代表 加藤さんに多大なるご協力いただき、各訪問先をご案内していただきました。モクネットさんでは地域の活性化を目指して自立した地域づくりを推進する数々の活動を精力的に行っています。モクネットのホームページ(http://mokunet.or.jp/)を見ていただくだけでもわかりますが、その活動の意気込み、志の高さは半端ではありません。こういった地域とつながりを持てたことは当倶楽部にとっても大きな収穫でした。 
 

   写真は大館市内の「日樽」という樽桶屋さんを訪問した時の様子で、中央がモクネットの加藤さんです。吉野でも樽屋さんは訪問していたので数名のメンバーは作り方や工具等に見覚えがあったのですが、ところ変われば若干違ったところもあるようです。
加藤さんのネットワークのすごさはこのツアー後にも痛感することになります。地元の新聞4紙に今回のツアーのことが紹介されました。日本全国スギダラケ倶楽部が始めてその名を新聞紙上に刻んだ記念すべき出来事でもありました。(「スギダラ家の人々」http://sugidarake.exblog.jpを参照)

初日は主に大館市で杉に関わるものづくりに取り組まれている地場産業の現場を訪問しました。
 

   こちらは杉でカヌーを製作されているカヌー工房NAKADAさんです。(http://www4.ocn.ne.jp/ ̄remake/)
中田さんの作る秋田杉のカヌーの美しさに参加者一同、感動していました。このカヌー、手作りキットとしても販売されているそうですが、購入した人が途中でギブアップするようなことは無いんですか?と言う質問に、今のところそういった事例は無いとのこと。結構難しそうな感じがしたんですが・・・

次はまげわっぱで食器を製作されている「栗久」さんを訪問。

 

   ここではとても六口(無口)な店主の方にまげわっぱの作り方について実演を交えた講義をしていただきました。自ら六口と言うだけあって、とても面白くテンポの良いお話に皆、聞き入っていました。(笑)
栗久さんの作る食器やおひつは美しく緻密。工作機械にも独自の工夫が凝らしてあってものづくりを本当に楽しんでいる様がとてもよく伝わりました。こういう素晴らしい地場の産業は継承してゆきたいもんです。

初日の最後は二ツ井町の方に入り、秋田杉で作った木造家屋のモデルハウスを見学しました。

 

   伝統的な工法で作られた建屋の構造体は力強く美しいのですが、サッシ周りは既製の工業製品を使わざるを得ず、ややデザインに違和感が残っていました。実用を重んじればそうなるんでしょうが、この辺はまだまだデザインの余地がありそうです。

さて、初日の訪問を終え、宿泊先の藤里町営温泉保養所に向かいました。ここでは食事は自前で用意しなければならないので、分担して買出しに行きました。宿に到着するとそこには二ツ井町の婦人部ならぬ青年部?の皆さんが集まっており、メインディッシュであるきりたんぽ鍋を作ってくれていました。

 
  いやー、この本場のきりたんぽ鍋、本当に美味しかったです。みんなお代わりしまくってましたね。
 

とにかく美味しいきりたんぽ

   このメチャうまのきりたんぽを食べながら、スギダラツアー恒例の自己紹介大会をやりました。今回の夕飯を用意していただいた二ツ井町、青年部の皆さん、お話聞いてると杉関係者は皆無。コンビニの経営をしている方やジーンズの仕立て屋さんがいたり・・・
 
   スギダラツアーのいいところは実はこの自己紹介し合うところであり、いくら時間がかかろうが、参加者みんなが一人一人自分の立場、杉に対する関心や想いを発言するところにあります。その他大勢という扱いは絶対にしません。それでこそ地域の皆さんともすぐに打ち解けられるんじゃないかと、私は自負?しとります。
 

   今回初参加の方は結構いましたが、その中でもヨシモトポール(南雲さんがデザインした街灯などの製作をしている会社)の工藤さん(写真左)は二ツ井町の近く能代のご出身ということもあり、わざわざ大阪から来てくれました。鈴木さん(写真右)も同じく能代出身でこのお二人にとっては里帰りも兼ねたツアーになりましたね。(笑)

さて、自己紹介の後は今後のツアーの恒例にしようとしている高千穂町秋元支部発「あひるのダンス」タイムです。参加した人は必ずやらねばならないのでその覚悟でご参加ください。

 

 



 さてさて、2日目はいよいよ杉山に入って行きます。午前中は近くの杉山で杉の枝打ち、下草刈りの実体験です。

 

 

 ここでもうお1人ご紹介します。モクネットさんとも連携して活動されている「里地ネットワーク」の竹田さん(写真中央)です。里地ネットワーク(http://satochi.net/index.html)は本部を東京に置く全国組織のNGOで、今回のスギダラツアーに竹田さん他2名のスタッフの方と参加していただきました。枝打ち、下草刈りの作業を行う中で里山や森林に関する様々なことを教えていただきました。
日本全国スギダラケ倶楽部なんて大層な名称を名乗っていますが、こういった実作業に参加するのは実は初めて。初めてながら参加者全員の動きは極めて良く、始めは人が歩ける隙間も無く杉の枝葉でうっそうとしていたところが見る見る開かれて行きました。加藤さんを始めとする地元の皆さんも我々の動きの良さ、仕上げの丁寧さを見て関心してくれてるようでした。

 

 

 最後に二ツ井町が誇る日本最長の天然杉の見学に行きました。樹齢150年を超える杉が立ち並ぶ杉林は、さすがに年季が入ってるせいか木の先端部も丸みを帯びており、どこかのどかで優しい雰囲気に包まれていました。

 

 

 このツアーを通して、秋田の杉材がなぜ高いブランド力を持っているのかわかったような気がします。森林や里山の保護だけでなく、うまく循環させてゆこうとする数々の活動と素晴らしい技術を継承してゆこうとする地場産業、地域の人々のネットワーク、あらゆるところで支えあっているのです。
スギダラ倶楽部としてもこういった地域とのネットワークを今後もさらに拡大してゆき、全国に広めてゆければ、と思います。何たって、日本全国スギダラケ倶楽部ですから・・・

 今回の秋田ツアーは本当に実りあるものになりました。スギダラ倶楽部秋田支部長の菅原さんを始め、モクネット加藤さん、里地ネットワークの竹田さん、二ツ井町の皆様のおかげであります。この場をお借りして御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 さて、次回はどこの杉産地を訪問することになるのでしょうか? 会員の皆様、スギ(次)なる素晴らしい出会いを楽しみにしててください。

 

  
  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
  
 

  
 
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