連載

 
スギダラな人びと探訪/第6回ーかみざきの人々
構成 千代田健一
杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。
 


 今回は宮崎県北方町上崎地区のスギダラな人々をご紹介いたします。また宮崎 からー??? と思われるでしょうが、やはり旬な話題からお伝えしたいので ご容赦くださいね。宮崎にはこれだけ杉に関わる話題が満載ってことですね。 さすが、杉の木材生産量日本一の県というところでしょうか!
 去る12月3日、宮崎県東臼杵郡農林振興局主催で延岡市に近い北方町上崎地区で、地区住民の皆さんと地元の九州保健福祉大の学生、われ等スギダラ一派と の交流会が行われ、本部のスギダラ3兄弟も参加してまいりました。
イベントの最大のメニューは杉の伐採体験。現在同地区に建設中の上崎橋の手 摺りに使う杉材の切り出しを兼ねた伐採イベントで、多くの参加者が初めてチ ェーンソーを握り、上崎地区の皆さんの指導の元、杉の伐採に挑戦しました。
 実はスギダラ3兄弟も伐採計画やるぞー!なんて、かなり前から言っていたわ りには初めての伐採を体験だったんです。それまでは2度ほど練習したくらい で・・・ これで、チェーンソー使いとして仲間入りができたかな、梶谷さん? そんなに甘くないですよね。
  さて、本題に入りましょう。 今年の9月猛威を振るった台風14号により、今回訪問した上崎地区も大き な被害を受けました。付近を高千穂鉄道が通っており、川にかかった鉄橋はも のの見事に流され、線路のレールが痛々しい姿で横たわっていました。それだ けを見ても鉄道の復旧はかなり困難なことがわかります。でも、何とか復活さ せたいですね。来年、上崎橋が開通することもあり、村の活性化を図るために地区住民の皆さ ん、振興局の皆さん共々頑張っています。
  今回の訪問記は一緒に参加したスギダラ倶楽部宮崎支部広報宣伝部長を務める春杉こと吉武春美さん(会員番号118)にお願いしました。 いやー、今回は楽だなー・・・うそ! それでは春杉さんよろしくお願いし ます。(ち)

 

●ふるさとづくりに参加して/吉武春美  
 
 

 さわやかな晴天に恵まれた朝、宮崎空港駅でスギダラ本部、南雲さん、若杉さん、千代田さんと日本産業デザイン振興会・Gマーク事業課の真鍋武志さん(会員)、崎田真央さん(会員)と合流。延岡までの列車の中、次回の杉コレの話題や今後の展望などで盛り上がり、日向駅で日向市市街地開発課で活躍されている黒木課長と和田さん(会員)と合流です。行政をこえて個人として地域おこしに参加されるお二人に、なにか胸がジーンとなります。

 延岡駅に着くと農林振興局の植村さん、梶原さん、北方町役場の林田さんらがマイクロバスでお出迎え。林田さんが北方町上崎地区に向かうまで、北方町のこと、9月の台風の被害のことを話して下さいました。北方町は十二支になぞらえる地区があるということ、そういえばトンネルなどに各十二支の絵があったのを思い出します。途中あの9月の台風で大きな被害があり、報道でもよく取りあげられていた高千穂鉄道が流されているところや、町役場、五ヶ瀬川の木々や橋などかなり上まで浸水した跡が、現在でもわかりました。このような台風の被害を乗り越えて、地域おこし、ふるさとづくりに向かう地区住民の方々との交流、どのようなドラマが展開していくのでしょう。途中で大分から池田陽子さん(会員)と、福岡から佐藤薫さん(会員)と合流。お二人は、小学生からの友人だそうです。

 上崎地区に着くと、すでにミカン狩りを終えて地区婦人部の手作りのおにぎりと漬け物をいただいた九州保健福祉大1年生の学生12人と先生、日向木の芽会の海野さん宮崎県木材青壮年会連合会(以下木青会)延岡支部の田丸さん、地区住民の方々がお待ちかね。ここで、到着した私たちの簡単な自己紹介1回目。婦人部のおいしい漬け物とおにぎりをほおばりながら、伐採する杉林まで歩きます。杉提供者甲斐靖さんのご挨拶、日本の木材の現状、杉の厳しい現実のお話、内容もさることながらお話が上手なことに驚きます。なんとも頼もしい。学生達も野外講義を受けているかのようでしたが、かなり個人的なお話もされ(非公開とさせていただきます(笑)、その場をなごませて、スギダラ3兄弟を上回るくらいのお方なのでした。

 ほとんどがチェンソーを扱うのも初めてのみなさんですから、杉を伐採前に、地区の方達の指導のもと玉切りでチェンソーの練習です。まずは学生たちから、男子達は慣れないながらも杉の粉を飛ばしながら活き活きと様になっています。女の子たちは、腰がひけている子がいたり、恐る恐るチェンソーを握るという様子。わたしたち九州スギダラ4姉妹も含め、初めてのチェンソーの爆音と振動にドキドキしながら挑戦したという感じです。ここで地面にチェンソーが着かないように気をつけること、石にあたると刃がダメになってしまうことなどを教わりました。私はチェンソーのエンジンからトライさせていただき、これがなかなか掛からないのです。これって瞬発力が必要?4,5回目でやっとエンジンがかかり、これがまたなんとも「カ・イ・カ・ン!」

 いよいよメインイベントの大物杉伐採へ、まず地区の方が杉伐採の見本。一人が倒す方向を定めて、前方半分くらいまで三角に切り込みを入れ、もう一人が後ろ側に切り込みを入れそこに後押しするようにくさびを打ち込み・・・緊張した空気の中、樹齢約50年、幹周り約110センチの立派な杉が静かにミシッミシッ・・・ズド〜ォオン!と定めた方向へ杉と杉のわずかな間に倒れていくではありませんか!静かな杉林に鳴り響く音と地響きの衝撃に自分の生きた年数以上の杉の重みを体感したような緊張感が。さすが手際よく見事な伐採!!見とれてしまいました。

 ようやく大物杉伐採体験です。杉を伐採するスギダラ本部3兄弟始め男性たち、その指導をして下さる上崎地区の地元男性たちのなんとも頼もしくかっこいいこと!静かな杉林の中、離れた場所で間隔をおいて次々にあの伐採の音と地響きの衝撃が響き渡ります。学生達が多いので、私たちスギダラ4姉妹まではまわってこないものと思っていたところ、ななんと甲斐さんの計らいで私たちスギダラ4姉妹を含めほとんどの参加者が伐採体験をさせていただけたのです。さすがに玉切りと違い立木の大物杉、樹齢年数の手応えを感じながら腰をすえてとりかかる、どこまで切り込んでいいのか角度がずれてないかなど気にしながらのチェンソー入れ、手がしびれるかのような感覚、地区の方に手伝っていただき前方の部分を切り終えることが、そして後方を崎田さんが切り込みを入れ、杉と杉の間にミシッミシッ、ズド〜ォオン!倒れた音を記録したかったと崎田さんの感想。杉クラフト家である池田さん、そしてスギダライベント初参加の佐藤さんも初体験!彼女は「普通のOL」から、「杉伐採をしたことのあるスーパーOL」にグレードアップしたと感動!

 長い歳月をかけて手入れし育ててこられた杉を・・・初めてチェンソーを使う杉よりもず〜っとか、ちょっと若い女の子(たしかそうだと思う)が数分で伐採するのですから!ここれは、誰もが体験できない貴重な達成感「セーラー服と機関銃」ならぬ「スギダラ4姉妹とチェンソー」ともいえるくらいの体験です!!ほんと命知らず?の上崎地区の方々に深く感謝です。

 伐採も終盤を迎え、最後の1本になると地区の方が「休憩前と終わる頃によく事故がおきる。みんなそこから離れて!」と、まわりに緊張が広がり・・・、そして誰一人ケガ無く、無事に伐採作業を終えることができました。上崎地区の方々、農林振興局の方々はここまでが、さぞかし心配されたことと想像します。ほんとうにお疲れ様でした。そして貴重な伐採体験をありがとうございました。

 
  山主の甲斐さん(右)と区長さん

  チェンソーのあつかいを、学生に熱心に説明と注意をしてくれる。

 
  まず地元の方が見本伐り。

 
  みごとねらったとおりの方向へドンピシャリ。

 
  玉切りに励む九保大の学生。ハラハラ見守る住民。

腰がすわってなかなかセンスがいい? 頑バル杉。

  これで私もスーパーOLに。薫杉さん

3兄弟もこのとおり。みんなしみじみ感動しているのでした。

 杉林を降りて地区公民館広場へ向かうと、上崎地区の婦人部の方達がバーベキューやおにぎりなどの準備をして待っていて下さいました。地区会長さんや婦人部会長さんらのご挨拶、私たちよそ者、ばか者、若者たちを迎えて下さった地区の方々、婦人部の方々の笑顔ともてなしがとてもうれしく思えました。 特にここに至るまでふるさとづくりおこしを準備してこられた振興局の植村さん、梶原さんたち、そして南雲さんなどは感慨深いものがあったのでは・・・。植村さんの多くの言葉にできない、言葉少ない「スーパー感動です。スーパーうれしいです。」に表現されています。会員でもある梶原さんも、たびたびスギダラケ倶楽部のHPのbbs(掲示板)にて、地区の取り組みの様子を報告されていて、地域おこしへの思いが伝わってきます。
 
総出で歓迎して下さった上崎のみなさん。どうですか、いい顔してますねー。

  後ろは打合せスペース、兼資材置き場。

 上崎地区のみなさんと大学生・先生、日向市職員、木青会、スギダラ、振興局の人々が入り交じり、自己紹介を交えながらの交流会です。この広い場所の一角にある社を地元の杉を使い、地元の大工さんで造り上げたいいお話を聞くことができました。ちなみにここでは、ゲートボールは80代からでないとできないのだとか、その前の若い?70代はグランドゴルフとか。上崎地区は高齢者が多いけれど、農林業、果樹栽培などされており、体力年齢は平均よりはるかにレベルが高い!とみました。これこそふるさとづくりにおいて、とても心強いことではありませんか!
そして、この地区には、小学生は姉妹の二人だけで、その二人がトランシイバーを使って会話している様子が、印象的でした。上崎地区の方々は、シャイな方がほとんど(初対面のせい?)という感じでしたが、専属のカメラマンとみられた千代田さんに、自分たちから「写真撮って!」と記念写真です。みなさんの素敵な笑顔がいいですね。

 先に学生達が帰ることになり、元気いっぱいの自称スティーブユウイチくんが、バスから身を乗り出し「元気で、頑張りましょう!」と大きな声で手を振る姿に、若杉さんが「なんか俺らみたいにみえる」と一言。まわりで聞いていた私たちスギダラメンバーは、なぜか納得して爆笑。その心は、真剣に考えてなくて・・・でも元気だけはある。なんとも謙虚で正直な自己分析ではありませんか(笑)

 その後、暗くなっても、消防車のライトアップ付きで交流会は続き、焼酎がすすみ・・・帰り際、婦人部の方に「私の家は、今度新しくできる橋のたもとの家だから今度こっちに来たら、必ず寄らんね。」と厚く握手をして下さり、心までしっかり温まったのでした。

 そこに住んでいる方達には、あたりまえで気づかないその地区のすばらしいところ、上崎地区の豊かさがあるんですね。それは、私たちよそ者、ばか者、若者たちがたびたび訪れ、交流し続け、関わることにつながっていて。それがそこの地区の誇りになって、自信やエネルギー、パワーになっていく・・・今回の上崎地区のみなさんの素敵な笑顔に感じたことでした。それらは、一方的でなくお互いに認め合っている、お互いに必要なところで支え合っているってことでもあるのでは。そしてこの地域おこし、ふるさとづくりは、ここからスタートしたのではなく、ずっと前の別の繋がりからこの上崎地区に繋がっていて、今回参加された様々な面々、広がりからもみえてきます。それには、架け橋になった方達の努力があってのことだと思います。それらはどこまで繋がって深まっていくのでしょう。このような素敵な出会いがあり、繋がっていくのもこの日本全国スギダラケ倶楽部会員ならでは、これが杉絆ですよね、海野さん。これだからスギダラ会員はやめられませんよね。

 
言葉数は少ないがほんとに頼りになる男衆。

ハンドマイク片手に自己紹介する筆者。この拡声器がまた何ともいえないいい味出してました。

婦人部と一緒に記念撮影するスギダラ達。お世話になりました。

「今度は必ずうちに泊まってね」区長の奥さんに念を押され思わず握手をする杉王。ずるいよ、おれも泊まるー!と叫ぶ杉若丸。手前の大根の紫蘇漬けが美味しい!

 その後、地区の若い方々、農林振興局やスギダラメンバー等で4次会まで続き、スギダラ倶楽部恒例の挨拶タイムで盛り上がりました。3回目位の挨拶になると、愛をこめて他の人物になりきっての挨拶になり、スギダラには芸も必要!?なのでした。(笑)

 

  見て下さい、この精悍な人々を。すごいですねー。

 最後におまけのお話。それから私たち泊まり組のスギダラメンバーは5次会まで突入して・・・、その居酒屋のおかみさんがインパクト強かったのですが、おかみさんにしてみれば私たち九州各地、東京から杉伐採に地方の上崎地区に訪れたこのスギダラケ倶楽部メンバーが不思議で関心しきり。おかみさん本人も上崎地区に近い地元の方で、子どもの頃から杉を植えたり、間伐したりで、「この倶楽部会員になりたいわぁ、次回は私も連れていって」と大盛り上がりでした。「なんで上崎地区なの?」に、スギダラケ倶楽部会長の南雲さん「そこが必要としているからだよ!」と、さすが酔っていても杉王なのでした。そしてお店にスギダラケ倶楽部のサインをみんなで書き残して、この長い一日を終えたのでした。

 
左が居酒屋「幸」の名物おかみさん。スギダラメンバーは全員圧倒されっぱなしでした

 わたしは、このあと数日間は、スーパー伐採熱がひくことなく「♪さよならは別れの言葉じゃなくて〜♪また会うまでの遠い約束〜〜」とうなされ・・・(笑)。

 上崎地区ふるさとづくりのみなさん、またお会いしましょう



●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
  ●<よしたけ・はるみ>
生協 組合員事務局。
日本全国スギダラケ倶楽部 宮崎支部広報宣伝部長
HN:春杉
 
   
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