連載

 
杉暦 11月 おまけもあります。
文/写真 石田紀佳

季節ごとにうつりゆく杉の姿を紹介。杉ってこんなにも表情豊かだったのです。

 
 
11月の杉暦

 ついにこの時が来たのです。あれは忘れもしない11月27日、午後からは19度まで気温があがるという小春日和でしたが、もう小杉日和といったほうがいいかもしれない感動の日でした!
先週は「ちぇっ、まだか、でも連載があるから一応写真は抑えておこう」ってな状態だったので、この日は朝から落ち葉掻きにいそしみ、定点観測杉をチェックしないでいたんです。というのは落ち葉掻きと焚き火はエンドレスに楽しい仕事ですし、なかなか変わりばえのない杉ぼっくりに翻弄(ほんろう)されるのは悔しいでしょ?

  でもなぜか前髪を引かれるように、気がついたらカメラをもって定点観測杉に向かって歩いていたのです。たぶん、あのとんがりツノアンテナによばれたのでしょう。見上げれば、あまり視力のよくない私でもわかるほど、杉ぼっくりが茶色味を帯びて、杉の木全体の発するものが先週とはまったく違うのです。季節ってこんなふうに変わる、杉の時間ってこんなふうに流れるんだ〜、としみじみ感じ入りました。

  かたわらではもみじが紅く燃え、山椒の葉は黄色くまぶしく、主のいなくなったジョロウグモの巣が破れながら輝いて、そんな秋の終わりに杉ぼっくりは満ちて、次の世代をつなぐのですねぇ。
うろこが開きかけた杉ぼっくりを慎重に選びとって、半分に切ろうとしたら、ぱらぱらと小さな種がこぼれました。
   
 
   
  杉11/19 杉心と秋の空 なかなか茶色にならない杉ぼっくりだが……

  杉11/19葉 葉っぱはところどころ黄色く、茶色く

 
 
 
杉11/19とんがり哀愁 
どことなく人生のたそがれを思わせる

  杉11/27黄金 
一週間で木の全体が発するものが変わりました

   
  (上)杉11/27
種ひと粒の大きさ(ぼけててすみません)

(左)杉11/27
ぼっくり茶 とうとう杉ぼっくりになりました




     
  ●<いしだ・のりか>フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
 

  
  →おまけ
 
 

 
 
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