連載

あきた杉歳時記/第1回

文/写真 菅原香織

すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・

 
 

 この冬秋田市は、88年ぶりという記録的な豪雪で、仕事始め早々新幹線も電車もバスも全面運休、道路も除雪が間に合わず、おまけにあちこちで雪にはまって動けない車で大渋滞。一時は「陸の孤島」という事態にまでなりました。

 通勤の足を奪われてしまえば、あとは歩くしかないわけですが、歩道のほとんどは車道から寄せられた雪で覆われているので、車道を歩くか、標高1〜2メートルの歩道の「雪中行軍」を覚悟しなければなりません。

 雪道を歩くのがうまい秋田の人でも、今回ばかりは、相当慎重に歩かないと、足を取られて抜けだせなくなり「通勤途中で遭難」も真面目にあり得る話。実際ストックを持って歩いている人も見かけました。

 車で通勤できても、帰りには駐車場という「雪原」を踏み分け、すっぽりと雪に覆われた車を掘り起こさないと帰れないので、「スノーシュー(西洋カンジキ)」や「携帯スコップ」も通勤の新しい必須アイテムになりそうです。

 必須アイテムと言えば、雪道でモノを運ぶのに便利な「箱ぞり」。初めて実際に「箱ぞり」を使っているところを見たときには「これこそ雪国の必需品だぁ!」と感動しました。手すりを押して歩くので、ベビーカーやお年寄りがよく使う手押し車の代わりにもなります。でもこんな凸凹の舗道じゃちょっと厳しいかも。車庫から家の前の歩道まで雪寄せをしながらふと考えたのは、「昔は、どうだったの?」という素朴な疑問。

 そう、車のない時代は道路の除雪なんてしなかったよね?きっと。秋田生まれ秋田育ちの相方に聞いたところ、その昔は板状のカンジキやフミダラ(踏み俵)を履き、雪を踏み固めて道をつくったとか。除けるんじゃなくて、踏み固めるのかー。最初に踏む人は大変だろうけれど、あとに続く人が歩きやすいようにという思いを感じて、あったかい気持ちになるよねー。

 そこで思い出したのが、前号のつれづれ杉話でも紹介されていた2005杉コレクションの「杉下駄」。

 
  

正月明けの大学構内は冷凍庫。冷蔵庫のなかのほうが暖かい。

 

 

道路脇に寄せられた雪山の下に歩道が。

 

踏み俵、箱ゾリ、カンジキなど、冬の生活用具には、雪と共に生きるための智恵とやさしさが詰まっている。車社会の便利さと引き換えに失ってしまった。
(写真:秋田県立農業科学館所蔵品)

カンジキバージョンがあったら、いろんな動物の足跡で道を作れるし、朝一番の雪踏みも楽しくなりそう。冬眠しているはずのクマの足跡とか、なまはげの足跡とか(笑)その名も「スギーシュー」。うん、いいかもー!

 長い冬、雪に苦しめられるだけじゃつまらない!ということで、雪を楽しむ杉のアイテムをあれこれ妄想しながら、今日もまた雪との格闘は続くのでした。

里山の杉木立。伐採された斜面とのコントラストがおもしろい風景。(カラー写真です。念のため^^;)



●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長



 
   
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