不定期連載

かみざき物語り 第3回
文/南雲勝志
もうすぐ橋が架かる上崎地区、架橋を通してまちが動く!?
 
 
●第2回ワークショップ  
写真/吉武春美
 

玉切りと運搬
去る2月18日上崎地区に再び訪れた。今回のWSは前回上崎に訪れた時に伐採し、葉枯らし状態にしておいた杉を上崎橋の高欄に使うサイズ、約2mちょっとに玉切りし、軽トラの入る林道まで運搬し所定の場所までの移動が主な内容だ。

参加メンバーは九州保健福祉大学(以下九保大)が前回を大幅に上回る15名ほど。スギダラメンバーも東京支部から7名ほど、宮崎支部からやはり5〜6名、福岡大分から4名とこちらも前回以上の参加となった。一体何がここまで人を集めるのだろう。

さて今回は、東京から直行ではなく前泊していたため、朝はゆとりであった。と言いたいところだが、実は27日スギダラ三兄弟は宮崎の杉とデザインと題し、宮崎県工業技術センターで講演をしていたのである。そのあとたまたまヨシダケ先生の講演があり、今度はそちらに移動、たまたま?飲み会となってしまった。

五ヶ瀬川沿いを登りいよいよ上崎地区に到着。すでに九保大の学生達、池杉さん達、福岡大分組は到着していた。そして玉切りの現場へと向かう。初参加のウチダラさん、ヨシダケさん、剛杉さん達とともに足取りは軽い。何かハイキングでもするかのようなウキウキ感が漂っていた。ところが現場に行くと倒れた杉の半分近くが沢にあり、足場も悪く、玉切りのあとはねる危険性もあり、素人には危険な箇所も多いと素人目にもわかる。地元の方々にはずいぶん気を遣って頂いた。怪我がなくよかった。

スギダラチームは前回、上崎橋高欄に使用するもの以外も伐ってよろしいとお許しをいただき、伐って伐って伐りまくったのだった。でも何に使うか決めていないので(無責任)あまり短く切っては使い勝手が悪いし、小屋だって作れるよう4mを基本に玉切りをした。そのあとの運搬をどうするか? しばし考えあぐねていたが、「足場が悪いこともあり、これは担いで運ぶしかない」と誰かが言い出し、5〜6人でチャレンジした。ところが重いのである。葉枯らしをしたとはいえ、恐らく水分量は60%はあるのではないか? 祭りの御輿などよりずっと思く、肩にずっしり食い込む、クラクラしながら林道まで運んだ。

ふと脇を見ると学生達はロープに繋ぎ、綱引きのように楽しそうに引っ張っている。若杉さんが睨むようにボクを見た。「なぐもさん、あーやって運ぶんですよ、本当は。もう勘弁してよ〜。体力全部使い切っちゃったよ〜」とこぼしていた。そうかーと思いつつ、でも沢や足場の悪いところは地面を引っ張るわけにはいかないわけで、いずれにせよ、担いで運ぶ必要は半分はあったと思う。そして杉は軽いという先入観をみごとに覆し、杉の重みを実感した瞬間であった。

そのあとの軽トラへの積み上げなどはみんな元気がなくなっていた。地区の方もそれを察してか、「はーい、それでは今日はここまで!」と締めてくれた。集積場に杉を集め、寸法ごとに整理して今日の労働は終わった。ただし今日やり残した分は、あとで地元でやると言われ少し申し訳ない気持ちになった。
それにしても、伐採の指導や木の扱いにおいて地元の方は本当に熱心にやっていただいた。単に迷惑だけかけたのではもし分けない。これは何らかのカタチでお返ししないと改めて感じた今回であった。

 
  意気揚々と現場に向かう東京スギダラチーム。

 
  沢に倒れている杉が多く、玉切り運搬はやっかいだ。

 
  チェンソー初参加。スーパーウチダラへ返信か?

 
  ヨシダケ先生も上崎は初参加。でも手慣れています。

 
  4mものを担ぐスギダラ軍団。このあと筋肉痛。
 
そうだ引っ張ればいいんだ。何で先に言ってくれない。

 

林道に出した杉はKとらに。だんだん覇気がない。

今日の収穫。玉切り運搬を終え、集積場に集められた。いあ〜疲れました。しかしすごーい充実感。

 
休む間もなくサイズによる区分け。学生はやっとこすっとこ?


  さて第2部、地区民との懇親会。学生が想いを語る。

懇親会
いつもの地区センターに行くと、上崎婦人部のみなさんがおいしい、おにぎりと漬け物、そして豚汁を用意していてくれた。肉体労働のあとは最高である。いつもいつもごちそうさまです。

そして食事のあとは第2部。地区住民、九保大学生、スギダラの面々による上崎の今後に対してのディスカッションが行われた。九保大の学生達は、彼らなりに考えた上崎地区のビジョンを一人一人一生懸命語ってくれた。長い目で学生達若者とこの地区の繋がりが出来上がって行って欲しいものである。車座になり、誰ともなく熱心な発言が相次いだ。地区の方々もそれぞれの思い、願い、現状を語ってもらった。

今回初参加のヨシダケ先生は、ワークショップでは高千穂秋元で長年関わっていて、経験がある。そしていきなり結果が出るものではないこと、非常に長期的な視野が必要なこと、地区の方、外から来るものの信頼関係がとても重要な事である。などなど、なるほどと思われる話をいろいろしていただいた。
また、竣工において、開通式はともかく前夜祭をみんなで楽しもう! という提案もあり、一同大いに盛り上がった。

 

MRT「ズバリ納得!みやざ木のくらし」
MRT宮崎放送で「ズバリ納得 みやざ木のくらし」という番組があり、(よく考えるとすごい番組名だ。スギダラも真っさお。)何度か取材を受けていたのだが、今回はその最終回。上崎の取り組みやスギダラの考えなどを取材してもらった。

スギダラチームで何かやれ、と言われ即座にスギダラなかけ声にチャレンジしたが、のりはまあまあだった。「スギっ!ダラっ!スギっダラっスギっダラっケぇ〜」という単純なものなのだが、ケぇ〜の部分がどうもキリッと決まらず、3回チャレンジしたのにもかかわらず、出来はいまいちであった。
長唄やダンスやかけ声など、いざという時のために仕込んでおくことがいろいろあるとだんだんわかってきた。

これらの模様はDVDで記録があります。いずれweb上でダウンロードして、みなさんで見られるようにしたいと思います。しまだらさんOKですか?

 
婦人部のみなさんの美味しい豚汁をごちそうになった。

学生と地区民の楽しそうなおしゃべり。

「ズバリ納得宮崎の暮らし」の一場面。

スギっダラっ スギっ ダラっ スギっ ダラっ ケぇ〜

ジカタビーズ
前回足場が悪い事を確認していたので、千代若コンビが地下足袋を用意してくれた。時価いくらしたか? 不明だがありがたい。そしてさすがに歩きやすい。というか、地面の感触が足の裏にダイレクトに伝わってくる。やっぱり道具は大事だ。と思いながら、5〜6人で地下足袋を履いた様子は頼もしく、本人達もうきうきし、山人になった気分である。さっそく地下足袋グループは誰が言ったか?ジカタビーズというグループを作ってしまった。こういうのりは恐ろしく瞬間的である。
 
今回結成されたジカタビーズ。地下足袋を履いていれば誰でも参加出来る。左から二人目我らが編集長!


●上崎橋の桁とアーチの色検討

 

 
 

第2回WSからちょうど1ヶ月後の3月18日、再び上崎を訪れた。主な目的は4月以降塗装の準備に入らなければならないため、東臼杵振興局としても17年度中に色を決めておきたいとの事であった。事前にやりとりをし候補色を決めておいた。

そして当日その色の1畳大のサンプルを上崎橋の桁に取付け、検討会を行った。当日はあいにくの雨。にも関わらず大勢のみなさんが集まっていただいた。改めてこの橋の対する意気込みと良いものにしようという決意が伝わってくる。

地区住民のみなさんにその候補色に対するこちら側の説明、同時に地区の方々の意見を聞いた。簡単にいうと、ここの美しい自然、それは周囲の山々であったり、下に流れる五ヶ瀬川であったりするのだが、日常自分たちにとっては当たり前の風景かも知れないが、そこを訪れたり、通過する人にとって共通の財産であること、そしてその風景のために橋だけが目立つ存在になるべきではない、といった主旨を述べさせてもらった、幸い多くの方にその主旨には賛同していただいた。ただ色は難しい、今日は雨だがまた改めて晴天の日にも確認してもらうことにした。

そんなこんなしているうちに雨脚がひどくなった、地区センターに移動しましょうか?と植村さんが問いかけると、じゃあうちの車庫でやりましょうと区長さんが言ってくれた。そこで橋詰め周辺、及び親柱等の詳細について説明し、最終的な方向性を確認しあった。最後に橋梁工事現場の所長さんからも移動の挨拶があった。今まで地元の方々と一緒にここまでやってきたことはとても思い出深いということを言われていた。つまり淡々と仕事をこなすだけではない価値を感じたと。こうやってまた記憶の中にひとつひとつ思い出が増えていく。素晴らしいことだ。

 
  上崎婦人部のみなさん。今回も大勢の参加です。

 
  橋梁の色について基本的な情報を説明。

 
  桁に色サンプルを設置。畳一畳分といっても小さい。

これは実は1ヶ月前、2月18日の下準備。使われていないTR上崎駅のホームでの光景。見慣れた2名。
  親柱、及び橋詰め周辺の意見交換。
上崎の人々と上崎橋。いずれにしろ切っても切れない関係になる。


番外編

上崎でのひととおり打合せが終了。延岡でゆっくりしたいところだが、翌日、天満橋の現場に行かなければならない。その日のうちに宮崎に移動した。すると植杉さんやり杉さんもぜひぜひと同行することになった。そしてそこでみやだら(宮崎スギダラ倶楽部)の面々と合流、ヨシダケ先生、春杉さん、杉鼓さん、海杉、丸太さん、そしてMRTのしまだらさんと、なんとこれは全員上崎軍団ではないか! たまには静かにカタリ会おうといっていた当初の主旨に反し、楽しく熱い夜がまたやってきた。二次会のホルモン屋、そして3次会と続き、途中睡眠に入る者を覗き、楽しい夜会は延々と続いていったのである。みやだら強し!

 
宮崎でみやだらと合流。

 
二次会はいつもの家族亭。


  不覚にも三次会で寝てしまった人もいる。
さてさて、色検討は終わっていない。その後晴天の日に地区民と一緒に再度検討したとやり杉さんから報告が入る。
五ヶ瀬川の青、杉の緑を考えると深い青系が良いのでは・・・というコメントが送られてきた。その色はまさにこちらが望んでいた色であった。

最終絞り込みを行った青系二色。周囲とのバランス、耐食性などを考慮し、深い色(左)の色でほぼ意見がまとまった。


●竣工に向けて
 
 
先日竣工した宮崎市の天満橋では行政のイベントの前、二日間を市民が借り切って開通イベントを行った。(この模様は南のスギダラに詳しく載っている)行政だけに頼らない、任せない、そんな感覚を目の当たりに見てきた。これは本物だ。いける。ふと、上崎もぜひそんな市民イベントが出来たらいい。土日をみんなで楽しんで月曜にオフィシャルな開通式。

さてさて橋の完成は10月末頃。それまでに手摺りの加工イベント、そして取付イベント。そして年末のイベント本番。時間はもうあまりない。しかし今から待ち遠しく思っている人が大勢いるのも事実だ。スギダラで何が出来るだろう。
そして本当の本番は開通以後である。今は元気に明るく上崎の人々が未来に向かっていける下準備の期間である。
 


   市民イベントには一万人以上が参加した。
●<なぐも・かつし> デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。 家具や景観プロダクトを中心に活動。最近は人やまちづくりを通したデザインに奮闘。著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
  

 
   
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