天草下浦フィールドワーク2014
  情熱で焼かれた石
文•写真/ 千葉友平
   
 
   この度は「下浦フィールドワーク」大変お疲れ様でした。終わってみると本当にアッと言うまも無く過ぎ去った熱い三日間だったように思います。下浦サイドも今回初めての経験でしたが「何はともあれ下浦のためにやってみよう。やれば次の課題が見えてくる。」と半年ほど前から実行委員会の皆さんと話しあい準備に取りかかり…そして迎えた本番当日。

 参加者約60名を目の当たりにし…僕は少しビビってましたが実行委員会の皆さんや民泊受入れ先の方々、女性部の皆さんそして賛同して下さった地元住民の方々のおかげでどうにか自分を見失う事無く(飲み過ぎて自分を見失いそうにはなりましたが…)無事「第一回下浦フィールドワーク」を終了する事が出来ました。そして同時に次回の第二回目へ繋げる「反省と課題」も見つける事が出来たように思います。来年さらなる飛躍を目指し皆さんと共に改善して行きたいと思います。

 そんな僕が生まれた、熊本県天草市下浦町は「石工の里」ですっ!!…と!?。自ら意識するようになったのは実のトコロ僕が専門学生の頃位からでした(遅い!?)。実際ソレまではあまり何とも思っておらず、逆に子供の頃は下浦どこを見ても彫場(工場)だらけで、親父の知り合いも石工さんが多かったので「日本じゅう石屋さんがどこもこんなふうに沢山あるんだろうな〜。」とまるで当たり前・人事のように考えていました。しかしソレなりの年齢になり周りを見渡すと、これまで当たり前だと思っていた事が実は大間違いで、逆にこの小さな下浦町にこの石工(石材店)の密集率は「異常」ではないのか!?一体なぜだ!?と思うようになりだし、少しづつではありますがこの下浦町に興味を持ち出し始め、結果的には僕も跡を継ぐこととなり今に至ります。

 跡を継いで早十年、まだまだ親父と比べ半人前にも及びませんがボチボチ石工をやって来ました。同時にこの十年で数件の下浦石工さんが彫場を畳まれました。体調を崩してしまったが後継者は居らず仕方なく…。都会の大きな墓石会社に仕事を取られて経営が立ち行かなくなった…。など理由は様々。そして何より僕が小さい頃からそこに当たり前のように存在していた彫場がある日、更地になっている光景は何とも言えない物悲しさがあります。聞き慣れた職人さんの声は無く、石を切る音や鑿を叩く音も無い…ただ風の音だけが耳元をかすめます。

 しかし今回フィールドワークが下浦で行われた事により、とても良い意味でこの町に「波風」が立ったように僕は感じました。約60名の「よそ者・若者・ばか者」がウロウロするとさすがに町の住民や下浦石工の方々も興味が湧いて来たのではないでしょうか。「こんな大勢の人達がこの下浦に何をしに来ているのだろうか…」「そういえば大きなポスターがそこらじゅうに貼ってあったがソレと関係あるみたいだぞ…」「どうらや下浦石工がドウコウ言ってたらしいな…」などなど…。聞いた話しですが実際アチラコチラでそのような井戸端会議が行われていたそうです。コレも…もしかすると一つのフィールドワーク効果と言えると思います。井戸端会議の内容は人それぞれだったかもしれません、しかしこうやって町が「ざわめく」事が先ず第一歩として何より大切な事だと実感しました。

 最終日、各グループから提案されたアイディアはまさに刺激される内容ばかり。まるで心の中に情熱で焼かれ真っ赤になった石を投込まれた様な感覚を覚えました。僕が下浦に生まれ幼い頃から見て来た場所や遊び場が…外からやって来た人から見るとコンな風に見えていたのか…今まで当たり前だと思っていた事が実は当たり前では無くとても貴重なものだった…という事は…。こんな素晴らしいものが下浦に現在もまだ残っている!と言う「事実」…。その事に気付かされ、先ずはこの貴重なモノを残していく必要性があるのでは?と強く思い。なにより掘ればまだまだ素晴らしい発見が眠っている予感をも感じる事が出来ました。そしてこれから、この熱い情熱の石が下浦とコラボしながらこの先どのような化学反応を起こそうとしているのか…そして起こるのか今からワクワクが止まりません。

 また来年も開催される「第二回下浦フィールドワーク」の時には今回の成果と反省をふまえ、また何か一つ成長した下浦で皆さまをお出迎え出来る事を願いながら、皆で一つになり取り組んで行けるよう努力して行きたいと思います。このたびは誠に下浦FWお疲れ様でした!そして心から御礼申し上げます!本当にありがとうございました!

 また来年も皆さんとお会い出来る事を楽しみにしています。

   
 
 
時が止まったかのように佇む石柱に興味しんしん…。   今年は小さな子供さんも参加してくれました!
   
 
  会場にいる皆で盛り上がったアヒルのダンス!
   
 
  地元の方々とも仲良くなり記念に一枚!
   
 
  各グループの作業風景…皆さん真剣です。
   
 
 
さまざまなアイディアがどんどん…。   暑い下浦で発表された熱いプレゼンの数々…。
   
 
  皆さん本当にありがとうございました!来年もまたお会い出来ることを楽しみにしています。
   
   
   
   
  < ちば・ゆうへい > 下浦石工
   
 
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