特集 ようびの日用品店&裸笑庵 OPEN!!
  裸笑庵(らしょうあん)プロジェクト
文•写真/田中良典
   
 
 

今回、「ようびの日用品店」の記事を書いて、って話を頂いたとき、とっても嬉しかったのですが、「俺、なに書こう・・・。」ってなりました。
というのも、僕は、もうひとつのプロジェクト「裸笑庵プロジェクト」を担当していて、ショールームへの関わりが少なかったのです。というわけで、この期に、勝手に、この裸笑庵のことをレポートしてしまうことにしました!

日用品店オープンの水面下でも、着々と進めておりました裸笑庵プロジェクト。
先日10月18日裸笑庵秋祭りが開催できました。

   
 
  山に守られた、古民家。
   
 

【裸笑庵プロジェクトとは】
ようび×西粟倉 木匠塾による 築100年を超える古民家リノベーションです。西粟倉村の引谷集落にある古民家でようびの代表である大島の移住の決め手ともなったこの建物は、「山神守りの家」とも呼ばれていたという歴史の深い建物です。移住してから約5年、やっとこの夏、プロジェクトとして手を付けることができました。私たちがこの建物に新たにつけた名は『裸笑庵』 。ある方に「裸で笑っているみたいだ」と言ってもらえたのが嬉しかったのが名前の由来です。

大島家の自宅でもあるのですが、ようびのゲストハウスにも使用したい、というのはようびに関わる大切な人達をちゃんとおもてなししたいという想いから来ているものです。

そして西粟倉木匠塾も、この建物をきっかけに関西学院大学の山根ゼミの学生を中心に、立ち上がりました。木匠塾とは木造を学ぶ機会が少ない学生に、現場で作業を通じて、設計から施工のみならず、材料発注などの運営も含めた建築生産を学ぶプロジェクト。大島奈緒子が学生時代に情熱を注いだ多賀木匠塾のDNAを、西粟倉で引き継ぎました。昔自分がいろいろな人に学ぶ機会をもらった分、いつか自分も与える側になりたいという奈緒子の想いもこれを期に実現。ようび、学生、地元の方々、その他遠方から協力してくださる方々のたくさんの想いが詰まったプロジェクトです。

 

【プロジェクトの活動】
プロジェクトは今年の5月下旬、現地調査からはじまりました。僕もこの建物をはじめて見る日、前情報は「築100年をこえる古民家」のみ。どんな家なのかドキドキしながら引き戸を開けた時の衝撃は今でも忘れません。目の前にあるのは住居というよりは廃墟という方がしっくりくるような状態でした。床は踏んだら崩れ、柱や土台は腐っているどころか土と化していました。本当にここがまた住居になり得るのかと不安に思ったのが本音です。

本格的に作業がスタートしたのは7月中旬、建物の解体から取り掛かりました。解体を進めていくに連れて、どんどん建物が生き生きとしてくる、壊しているのに生き返っていくのは本当に不思議な感覚でした。天井を落とした時に見上げた時の茅葺き屋根がとても力強くて、美しくて、この建物がきちんと直せば素敵な建物に生まれ変わると確信したのもこの時でした。10名以上の学生が一斉に解体する集中合宿なども行いましたが、作業はなかなか進みません。僕自身も建築に関してはプロではなく、そんな中、学生を指導しながらの作業に頭を毎日悩ませました。学生にとっても特に解体等の普段一切しないであろう肉体労働に、疲れ果てるまで取り組んでくれたのは、作業後のみんなの顔を見ればひと目で分かりました。だんだんと一輪車で土や端材を運び出す姿が様になっていき、短期間での成長とたくましさを感じていました。今は、どーんと座っている沓脱石は、庭においていたため、みんなの休憩ベッドになっていて、努力の汗を吸っています(笑)

一緒に奮闘して下さったのは地元の大工さんや土建屋さんも同じでした。何度も改修された建物はまっすぐな柱や梁は一本もなく、それらを直しながら柱を1つ1つジャッキで持ち上げていくのは本当に気の遠くなるような作業でした。大黒柱以外全て持ち上がった建物の状態で台風を迎えたこともありました。深夜に大工さんと見回りに行ったりもしました。朝、建物の無事を確認した時には本当にホットしました。

ようやく大工工事に入れたのは9月のこと、それからはもう必死で進め、毎日作業終了後はフラフラでした。壁の小舞かきのワークショップや土壁塗りのワークショップ、秋祭り前日には熊本からちかけんプロダクツさんにお越しいただき、会場を彩る竹灯りまで沢山の人たちの力をお借りしてなんとか作り上げて行くことができました。荒れていた裏山にも、吉野さんが入ってくださって、「食のある山」づくりが始まっています。

   
 
 
解体中の様子。一番状態の良かった部屋でこの様子。   屋根裏から出てきた藁と岡山の土とを混ぜて壁土を作った
     
   
柱の足元はことごとく腐ってたので、つっかえ棒しながら直した。この状態での台風には正直びびった。    
   
 

秋祭り当日、人は来てくれるのか、みんなに楽しんでもらえるか、人口1600人の村にやってくるDJ、歌手、料理人、地元のかたのパフォーマンスという異種混合した内容に、やってくる村内外のお客さんは困惑しないか、など本当に心配でした。それに恥ずかしながら建物の工事が押してしまい、準備不足や至らない点も多々ありました。しかし素敵な音楽、美味しい料理とお酒、そして何より大勢のこのプロジェクトを応援してくださった方々の熱気で会場はとても盛り上がりました!

イベントの後も地元の人達から、「こんなに楽しいのは1年に1回あるかないかだ!」「次はいつやるんだ?」「来年も絶対行く!」など嬉しい声をたくさん聞くことができ、この数ヶ月間本当に大変だったけど、そんなことは忘れて、来年が楽しみになってしまうくらい僕自身も楽しい時間を過ごすことができました。

   
 
 
星空と竹あかりのもと、150人の人がお祝いに来てくれた。   世界的DJのイアンさんとシンガーのサラさんまで!
 
そして地元集落の獅子舞がオオトリ!   ここで裸の心で笑うのだ。
 

解体中に不思議だった、壊せば壊すほど建物が生き返っていくあの感覚はきっと、たくさんの人が建物に入り、関わることで蘇っていっていたのだなと、お祭りにたくさんの人が来て今までで一番生き生きとしていた建物を見て思いました。建物だけでなく、村も集落も同じだと思う。これからも自分たちがものすごく楽しんで、結果、村がちょっと元気になる、そんなお裾わけをしていけたらいいなと思えたプロジェクトでした。

ゲストハウスとして正式にオープンするのは、来春になりそうですが、作業のお手伝いは毎週末募集中、そしてワークショップの予定もまだまだ沢山ございます。すぎだらメンバーのとんでもないエネルギーを吸い取って、裸笑庵がもっと生き生きする日が楽しみでなりません!!みなさんのお越しを、心よりお待ちしております。

   
   
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