特集 祝!グッドデザイン賞受賞
  汗と涙と鼻水と
文•写真/渋谷 知宏
   
 
  今までに撮影したことのないバスターミナルという建築物。
どの角度が一番美しく見えるのか?
どうすれば木のぬくもりが出せるのか?
時間の制限や期限がある中、あれやこれやと考え、試行錯誤の繰り返し。
でも、撮影している時はいつも気持ちはワクワクでいっぱいだった。
   
 
   
 
   
  撮影は、人のいない深夜から早朝にかけて。
竣工写真には人が写り込んではいけないからである。
10月ということで、とにかく寒かった。
連日、鼻水を全力で垂らしながらの撮影。
洋服の袖が鼻水でコーティングされた。(ばっちぃ話ですいません)
と、いうことで、これらの写真は、汗水よりも鼻水垂らして撮った写真だったりする。
撮影条件が厳しく、どう撮っていいのか悩んで半泣きになったときもあったようななかったような。
   
 
 
   
  ライトアップされた深夜のバスターミナルは、とても不思議な空間だった。
通常は決まった時間で消えてしまう照明だが、バスターミナルが完成したその日だけは深夜遅くまで点いていたのだ。
静寂の中、あたたかい光の中でゆーっくり360度回ってみたり。
どんな想いがここに詰まっているのか考えてみたり。
今考えると、あの空間に自分一人だけがいるというのは、とても贅沢な時間だった気もする。
   
 
   
  通常、竣工撮影では撮らないような写真もたくさん撮らせて頂いた。
案内板やベンチ、ドアの取手や照明器具、さらには木の木目など。
自分が魅力的だと感じる部分を切り取り、写し込んでみた。
バスターミナルの活き活きした雰囲気を出すため、あえて人を入れてみたりもした。
これがほんと楽しかった。
短いけれど、充実の撮影期間だった。
   
 
 
   
 
 
   
  「バスターミナルを撮ってみませんか?当たり前じゃない竣工写真撮ってみませんか?」と、声をかけて下さった間建築研究所の堀井さんをはじめ、協力して下さった皆様には本当に感謝しております。
この撮影を通して、貴重な新しい経験をさせて頂きました。
気がつくと「グッドデザイン賞・金賞」という素晴らしい賞にも携わることができていました。
微力ながらこうして協力できたことを嬉しく思います。
このバスターミナルの魅力が、秋田の魅力がもっともっと広まることを願っています。
   
 
   
 
 
   
   
   
   
  ●<しぶや・ともひろ> シブヤスタジオ
   
 
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