まず、各原木市場からトラックに載せられて原木はやって来るのですが、荷降ろしの仕方が結構迫力があります。 (写真1、2)
運ばれてきた原木はまず種類別、用途別に分けられます。
(写真3)
山から出材する時に原木は玉切りされ、株の方から「元玉(もとだま)」、「二番玉(にばんたま)」、「三番玉(さんばんたま)」…と言われると以前お話しましたが、それぞれの部位で性格が異なり、価値も用途も違ってきます。牛肉のカルビやロース、マグロの赤身や大トロなんかに近い感覚です。
それぞれの特徴を探って行きたいと思います。
まず、元玉は何といっても「節が出にくい」という事が一番の特徴です。節が出にくいという事は、育林中の「枝打ち」という作業が関係してきます。枝打ちとは、生育中の木の枝を切り落とす事ですが、良材をつくる為に欠かせない作業の一つです。そして、この枝打ちが行われるのが地上から5m付近くらい迄が多いというのがポイントなのです。だから元玉は節が出にくいのです。
ここで少し話がそれますが、枝の跡が節になる過程を少しご説明しましょう。
木は成長する段階で下の方の枝は自分で落として行きます。これは上部の枝の葉にしか光が当らない為で、必要のない枝は自然に枯れて落ちて行きます。この枝の跡は木が成長する中で木自身が自分の中に取り込みます。何十年も経てば、枝の跡は木の中にすっぽりと覆われてしまい、外から見ても分からなくなります。つまり枝打ちの有無に関わらず、枝は自然に落ちるのですが、早い段階(木が細い時)で枝打ちを行う事で、枝の跡である節は「木の中心」付近でしか出ないので、無節の高級品が取れる可能性が高くなります。枝打ちがされていない木は「木の外周」付近で節が出るため、一等に近い等級になってしまいます。
話は元に戻ります。元玉には欠点もあります。
株に近い為、曲がりが見られます。木は平面に生えているわけではなく斜面に生えているので、垂直方向に伸びようとして、株の部分で曲がるわけです。これは木の曲がりの問題だけでなく、株に近い部分の木目は根杢(ねもく)と呼ばれる複雑な木目となります。根杢は面白い形状をしていますが、スッとした感じが出ません。好みが分かれる所です。
(写真4)
また、元玉には目割れが多いと言われます。目割れとは木目に沿って「割れ」が入る事で、耐久性にも問題が出るので、製品にはなりません。目割れは寒さで起こると考えられています。つまり木内部の水分が凍り、水道管の破裂と同じような現象が起こるわけです。冬の寒い時期には木は水分を上部に吸い上げをせず、株付近で止まってしまいます。水の流れが止まる為に内部で凍結し破裂するようです。この目割れは白太の部分によく見られます。これは白太の部分が水の通り道になっているのが理由のようです。
さらに、元玉は葉節(はぶし)が多いと言われます。葉節とは、点状に見える細かい節で嫌われるのですが、これは株から2m位迄の部分でよく見られ、一説によると、根っこの一種ではないかと言われています。この葉節は針節とも書く場合があります。
(写真5)
さらにさらに、色が重いと言われる事もあります。やさしいピンク色が吉野杉の特徴でもあるのですが、色が重いとは杉の特徴でもある赤味の色合いが濃いという事なのです。杉の赤味は鉄分が空気中の酸素と結合して発色するものという話があり、株に近い元玉は鉄分が溜まりやすく、その含有量が多いからではないかと言われています。これには科学的な根拠がないのですが、言われてみれば、そうなのかな…と思ってしまいます。
昔は元玉で取った柱は最高とされていたようです。元玉は株がある為に上からの荷重に強いと考えられたからです。また元玉で取った柱の木目は「タケノコ杢」と呼ばれるタケノコがニョキニョキ生えていくような木目になり、見た目にも綺麗で縁起の良いものなので、非常に好まれました。元玉でしか取れない柱なので貴重品です。ですが、現在ではタケノコ杢という言葉も死語になってしまい、その価値は失われつつあります。
(写真6)
二番玉はどうでしょうか。二番玉の特徴として「木目がスッと通っている」事が挙げられます。回り縁や長押、鴨居・敷居などの造作材に使われる事が多いです。二番玉は節が出る可能性が高い事が難点です。 (写真7)
木にもよるのですが、原木の価格としては元玉が一番高く取引される事が多いようです。やはり節が出にくい木が一番重宝されるわけです。
元玉や二番玉という区別の他に重要なのが、長さ・太さの問題です。
もちろん無垢材なので、原木以上に長い材や太い材を取る事はできません。さらに、源平の造作(赤味と白太の混じる造作材)であれば、直径26センチ程度の原木で大丈夫ですが、赤の造作(赤味のみで作った造作材)を取る為には、直径34センチ以上の原木が必要になるという具合に、製品によっても必要な原木が異なります。 (写真8)
また、原木の外側の状態を見て、節の程度を想像し、節が少なそうな原木は化粧用構造材や造作材に用いられ、節が多そうなものは一等の構造材などに使われます。
このような要因を考えながら、各原木を用途別に分けるのです。すぐに使わないような原木は桟積みして置いておきます。風通しをよくして乾燥を促進させます。
(写真9)
原木の整理が終わりました。いよいよ製材に入って行きます。
ですが、その前に必要な工程があります。「皮むき」です。皮付きの原木のままでは製材しにくいので、皮を剥きます。皮むきには手作業と機械の2種類があります。
木材の皮むきの機械化は早く、40年ほど前に登場しました。当社で使用している皮むき機はカットバーカー式と呼ばれるものです。皮むきの様子を写真にてご説明しましょう。
(写真10〜25)
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