連載

 
あきた杉歳時記/第5回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 

 いま、秋田は山菜祭り! 今年は雪解けが遅かった分、いつもより生えてくるのは遅かったのですが、行者ニンニクに始まって、かたくり、さしぼ、こごみ、うるい、タラの芽、うど、わらび、あいこ、しどけ、ほんな、根曲がり竹、そしていまは、「みず」が最盛期を迎えています。土日ともなると、里山に山菜を採りに行くのが地元の恒例行事になっています。
  夢中になって採っているうちに、帰る道を見失ったり(経験済み)、クマに出くわしたり、遭難する人もいて、たかが山菜採りと侮ると、命取りになるので要注意! でも収穫の喜びを味わうと、やみつきになることまちがいなし。最近スローライフとかロハスとか横文字がはやって?いますが、ここ秋田では、あたりまえすぎて見えなくなっている、里山の暮らしに埋もれた「宝物」が、まだまだたくさんあるように思います。

  そんな宝物を探しに、5月19日、スギダラ秋田支部営業部長の明杉さんと一緒に、県北部にある八峰町の手這坂茅葺き民家集落を訪れました。ちょうど桃の花が満開!あたりは甘い香りが漂い、川のせせらぎとウグイスやカッコウの「本物」の自然のBGMまで聞こえてきます。江戸時代の三河の紀行家、菅江真澄がこの地を訪れ「桃の花が咲き誇り、まるで桃源郷のようだ」とその眺めを讃えたのもうなずけます。
  ここには4棟の茅葺き民家がありますが、残念なことに2000年4月から無人となり荒廃がすすんでいました。江戸時代の面影が集落単位で残っているところは大変貴重であることから、4棟の保存と再生を図るために「手這坂活用研究会」が2001年に発足、桃の植樹、屋根の葺き替え、家屋の補修などを実施してきました。 
  再生後の農地では、米作りやそば・麦などを栽培して農業体験ができる「手這坂日曜農学校」を開催、春は桃の花見、夏はホタル観賞、秋の桃源郷まつり、ミニ雪灯籠の冬まつりなど、ボランティアの手による復興の活動が行われています。
  この日も県内外から訪れるひとがひっきりなしでしたが、「私有地だと知らないで断りもなしに入ってきて草花を踏みつけて歩き回る人や、写真を撮るマナーの悪い人がいて困る」(明杉さん談)とのこと。たしかに、芽を出したばかりの水仙が無惨にも踏みつけられていてかわいそうでした。マスコミなどに取り上げられることは活動を広めていく上では大切ですが、有名になった分、心ない観客も増えてしまうというのはちょっと悲しいですね。もし残したいなと思ったら、是非一緒に活動してもらいたいねーと話しながら桃源郷をあとにしました。

  さて、次に訪れたのは能代市の常盤地区。米代川の支流の常磐川が流れる地区にある毘沙門憩いの森という公園に、明杉さんが地区の方達と作った炭窯を見に行きました。この公園にはキャンプ場、バンガロー、アスレチック、多目的広場、テニスコート、 遊歩道が整備されているのですが、平日の日中ということもあり辺りは静寂に包まれていました。穏やかな天気で、水鏡に映った毘沙門沼のまわりの美しい景色に見とれていたのですが、なにげなく、「やっほ!」と叫ぶと、なんと反響してこだまになって聞こえてくるではありませんか! また一つ宝物を見つけたような、うれしい発見でした。

  今回ご紹介したルートは、日本風景街道(シーニック・バイウェイ・ジャパン)のモデルルートに先日選ばれたばかり。この日のショートトリップの最後の「使命」は「里山の風景の保存と木の香る道づくりを通して、元気な地域づくりに結びつけたい」と活動しているのしろ白神ネットワークのみなさんに、スギダラプロダクト紹介し、ぜひ風景街道づくりに役立ててもらおうと、明杉さんとプレゼンをしてまいりました。その結果は……来月号に続きます。乞うご期待!

 
  

手這坂から杉木立の向こうに茅葺き民家の集落が見え隠れする昔話に出てきそうな風景

 

一本の木に紅白の花が混じって咲いていました

 
 

田植えを待つ水田に映る茅葺き民家と杉木立

 
  明杉さんたちが作った炭窯第2号。本格的!

常磐川の両側はスギダラケな里山が続きます。

毘沙門沼のほとりで「やっほ!」と叫ぶ。これが結構気持ちいい 。


   
●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長
   

 
   
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