特集 函館空港木質化プロジェクト
  バリアアリー

文/写真  坂本 晃彦

   
 
 
 

HAKODAKEHALL,HAKODAKEHIROBAがオープンしてもうすぐ1年が経つ。別件で函館に来た僕は帰りにホールに立ち寄った。竣工後自分が携わった現場に来るのは嬉しい反面いつも緊張する。幸いこの日はビアガーデンがオープンしていた事もあり多くの人で賑わっていた。
安心した僕はお客さんを眺めながらビールを飲んでいると突然遠くの方から子供の叫び声がする。
「ギャ〜〜〜〜!!!!」「ワ¨〜〜〜〜!!!!」「ブゥギャ〜〜〜〜〜〜〜!!!」泣き声のような強烈な叫び声が繰り返し空港の吹抜けに響き渡る。これはやばそう声やな・・・一気に酔いが覚めHAKODAKEHIROBA(キッズコーナー)に駆け寄ると叫び声の主達は物凄いスピードで鬼ごっこをしている。
いろんな所に潜ったり隠れたり、一人は頭をぶつけたのか手で頭をさすりながら笑って逃げ回っている。一通り走ったらスローダウンして休む、そしてまた絶叫しながら走り回る。近くにいるお母さんは嬉しそうに子供達を眺めている。
オープニングの時と同じ光景だった。僕はニヤニヤしながら写真を撮りまくった。さぞかし怪しいオッサンだったことだろう。。。

   
 
絶叫しながら走り回る子供達 45°すべり台も既に攻略している。
 
 
疲れたら杉のフロアでゴロゴロ~   すべり台の下の隙間を協力して通っている。完全に想定外、、汗
   
 

HAKODAKEHALLはただの木のキッズコーナーではない。
角だらけの柱、子供しか通れないトンネル、45°のすべり台、棒がくるくる回ってなかなか上れないはしごなど。もちろん設計上最低限の安全基準は満たしているが、怪我のリスクを第一に考える通常のキッズコーナーとは全く違う造りである。
プレゼンで若杉親分がこう言っていた。
「子供は自分で痛みを知って自分で学びます。過保護な大人達は怪我させまいと安全なものを与える。でもそれは責任を逃れようとする大人の都合!子供たちにとってはつまらない空間なんです!このハコダケヒロバは子供に自然の、社会の厳しさを教える今までにない"木育"空間です!!!
子供に優しいなまぬるいキッズコーナーはいらない!!!バリアフリーではなくバリアアリーです!!!!!!ガオーーーー!!!!!!!!!!」
ガオーは僕の妄想だったかもしれないがそれぐらい勢いのあるプレゼンだった。
今までみんなが抱えていた不安が一気に消し飛んだ。これでいいんだ!一筋の光が見えた瞬間みんながそこに向かって突き進む。時間もお金もない、問題は山積みだったがいざ走り出したら細かいことは気にしない。
それから怒濤の3ヶ月、詳細設計から竣工まであっという間にハコダケ広場が完成した。

   
 
  全景のアイソメ左が広場、右は小学生の作品を展示するギャラリースペース
   
 
   
 
 
  45°のすべり台、真っ暗なトンネル、大人もワクワクする細長い通路
   
 

出来上がった広場は想像以上のバリアアリーだった。45°のすべり台、短いのに物凄い早さで落ちる。僕は脚が間に合わず勢い良く尻もちをついた。同時に脳が揺れ一瞬視界がチラついた。フラフラした僕をみて周りは爆笑。痛い!けど楽しい!僕もめちゃくちゃ笑えた。
函館空港の石田さんが見に来た。「流石にやりすぎましたかね〜〜」おそるおそる尋ねると「全然問題ないっしょ!怪我させたくない親は入らないで下さいという張り紙をしとけばいい」石田さんは既に試作確認の時にぶら下がり棒で鼻を強打し涙を流されている。普通こんなことがあったら止めさせられてもおかしくないがこの人は違う。函館会組長の覚悟はハンパではない。

   
 
  親分3人組左から函館空港ビルデング石田さん、パワープレイス小林さん、若杉さん
   
 

函館チームは本当に純粋で熱い人達ばかりだ。楽しみも苦しみもみんなで共有しみんなで解決する。本当に家族の様な結束力だった。どんな無理難題も身を粉にして助けてくれた、ハルキの鈴木さん、裏でいろんな敵と戦いながら地元の子供達と繋いでくれた振興局の佐藤さん(ツーさん)、函館空港石田さん、太田さん、石井さんには本当に何から何まで(笑)お世話になった。
今回このプロジェクトの中でもバリアアリーがいっぱいあったが、新しい未来に向かってみんなで一緒に走れた事は最高の思い出だ。 次は函館の病院木質化プロジェクト!またみんなで爆走しましょう!!!!

   
 
  上段左から渡島総合振興局岡田さん、佐藤ツーさん、ハルキ鈴木さん、パワープレイス小林さん、若杉さん、函館空港ビルデング石田さん、鈴木さん、左下函館空港ビルデング太田さん、上川総合振興局の樋口さん、パワープレイス坂本、函館空港ビルデング石井さん
   
   
   
   
  ●<さかもと・あきひこ> パワープレイス株式会社 リレーションデザインセンター
   
 
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