特集  日南市子育て支援センター 『ことこと』 オープン!
  これまでにない“商店街再生”を目指そうぜ!

文 / 木藤亮太

   
 
   
 

 油津での商店街再生にとって、「子育て支援センター“ことこと”」の存在はとてつもなく大きい。プロジェクト期間の終了直後の完成、いわゆる“ロスタイムでの追加点”は、タイミングと言い、点のとり方といい、この上ない出来事だった。
 私が常に最重要視していたのは、地域の消費を持続するための供給と需要のバランス。この“追加点”はその効果を何倍にも高めた。

   
 
  2017年4月のオープニングセレモニーには多くの関係者が集まった
   
 

 「奇跡の商店街復活劇」と評価される油津での約4年間のプロジェクト。現場では今もなお模索が続いている。地方都市にとって人口減少は避けられない現実、今もなお年間700人のペースで右肩下がりが続くそんな中、商店街はどこに向かうべきなのか、どう再生するべきなのか、繰り返し考え続けてきた4年間であった。
 4年を通して私たちが気づいたこと、それは従来の「商店街」という看板を一度外して、柔軟な発想で「この一本の通りに何が求められているか」をしっかり捉え、一つひとつ具現化していく、という視点である。シャッターを開け新しくお店を入れることだけではなく、多方面からまちの魅力をつくりだし、内外からたくさんの興味を集め、まちが生まれ変わっていく過程を発信していく、そしてどんどんと人々が巻き込まれていく。そしてそこに「商店街」という看板を再び掲げ「どうだあの商店街がここまでやったぞ!」と発信する。このプロジェクトに関わる多様なメンバーは皆んなそのような感覚で日々格闘していたように思う。

   
 
 
商店街再生はとにかく試行錯誤の連続が続く    
   
 

 商店街再生のプロジェクトは2014年4月にかつて賑わっていた喫茶店の空き店舗をリニューアルオープンしたABURATSU COFFEEを皮切りにスーパーマーケット跡に屋台村(あぶらつ食堂)、空き地にコンテナ店舗(ABURATSU GARDEN)などいわゆる遊休不動産を活用した店舗をオープンさせ注目が高まっていった。しかしそこでぶつかる壁が「そもそもの消費人口の少なさ」である。小さいまちながらも供給と需要のバランスを如何にとっていくか、が大きな課題であった。
 ちょうどその頃、日南市ではIT関連企業のサテライトオフィス誘致の動きが活発化。事業後半の2016年度に入り、第一社目として誘致が決まった“ポート株式会社”はその頃までの商店街の変化とその基盤にある若い世代の台頭に魅力を感じ、アーケード沿いの空き店舗を改修し、地方では見られないような非常に素敵な質の高いサテライトオフィスをつくった。すると瞬く間に話題となり、結果その後1年の間に8つのオフィスが商店街に誕生することにつながった。すでに約50名のITワーカーがこの商店街にいる。彼らは朝8時頃商店街に集まりはじめ、昼食をとり、コーヒーを飲み、帰りに買い物をし、たまに飲みに出る。こういった消費人口増加の可能性は商店街にとっては大きな希望となっている。

   
 
  新規店舗のオープンと誘致企業の進出によって商店街に変化が生まれはじめる
 
 
   
 

 そして次のステップ・・現場でそれぞれのオフィスを覗けばその答えが見えてくる。働く場としての環境の充実、その先に「子育て支援」の重要性が見えてくる。
 「子育て支援センター“ことこと”」はそんな流れの中で必然的にオープンした。同じ時期に開設された小規模保育施設「油津オアシスこども園」もあいまって、若い世代の子ども連れの姿がアーケード街で目立つようになった。子どもも含めて安心して楽しく暮らせるまちは、遊びに行きたい、そして働きたいまちへと発展していく。
 “ことこと”は、週末はもちろん、平日も多くのファミリーで賑わっている。隣接する老舗百貨店のお弁当コーナーの売上げが上がり、商店街の反対側約300m離れた場所に位置するABURATSU COFFEEでも同じような客層が増え、商店街全体に波及効果が生まれている。アーケード通りがようやく一つにつながった。

   
 
 
  IT関連オフィスの前に保育施設が向かい合い、子どもたちが歩き回る姿をよく見るように
   
 

 これまで数十年かけて変わっていったまちをたった4年間で再生する?そんなこと簡単にはできるわけがない。
 でも関わる全ての方々が「これまでにない商店街再生を目指そうぜ!」とバカになり、強い気持ちで挑めばここまでできる、という発信はできた。そして「これからも変化しつづける」という可能性を感じさせる状況にはたどり着いた。

 まだまだ現場には課題は山積みであるものの、「来ると元気をもらえるまち」といっていただくことは我々関係したメンバーにとってものすごく嬉しい言葉である。ぜひそんな「元気」を感じに、油津商店街そして「子育て支援センター“ことこと”」に足を運んで欲しい。眼をギラギラさせた熱いメンバーたちが、商店街というフィールドであなたをお待ちしています。

   
   
   
   
  ●<きとう・りょうた>
テナントミックスサポートマネージャー・日南市油津商店街(2017年3月まで)
株式会社油津応援団 専務取締役

   
 
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