ATELIER MUJI有楽町『木を見て森を見る!』展(前編)
  怒涛の二ヶ月

文 / 小山裕介

   
 
   
 

torinoko 小山です。
皆様こんにちは。株式会社 良品計画(無印良品)でインハウスデザインをしながら個人でも活動をしています。今回は、コイヤのデザイナー兼事務局兼良品計画との繋ぎとして「木を見て森を見る!展」に参加させていただきました。兼任ばかりしているので、コウモリ野郎感が半端なかったですが、、、、
せっかくページをいただきましたので、舞台裏では何があったのか報告させていただきます。
(※コイヤについては、また別の機会に)

   
 
  開幕
 

発端は若杉氏。コイヤの展示会をしよう!展示場所を無印良品でできないか?相談してみてくれないか?と声かけられた。これはいつもの始まりだ。きっと板挾みになるに違いない。
でも有楽町で展示ができれば、知名度も上がるし光栄な事である。
ボス達に駄目元で聞いてみたところ、意外と二つ返事でOKだった。それどころか、これからフィナーレを迎える有楽町店のアトリエスペースを約2ヶ月間、閉店まで展示していいと承諾を得た。長い間、無印良品の顔として支えてきた有楽町店で、、、光栄どころか恐れ多くなってきた。
ただもう引くに引けない。それは苦難の始まりだった。

   
 
  序盤戦
 

アトリエメンバーとの打ち合わせ。個性豊かな方が多いので難航するかと思いきや、とてもスムーズに話は進む。大枠のコンセプトが1回目の打ち合わせで決まり、詳細を少しずつ詰めていく。この頃から展示会ではなく展覧会になった。(展覧会の定義とは?{鈴木さんの文章を読んでください。})
展覧会のコンテンツやイベント内容はサクサク決まった。お客様たちと作る展覧会。僕達らしい展覧会だ。日本中の産地から、コイヤメンバーがやってきて、毎週ワークショップしながら会場を作り上げていく。床やキッチン、椅子を作り、クリスマスオーナメントをつくる、ドキドキワクワクとても楽しそうな感じ。大きい物や、小さい物を毎週ごとにメリハリをつけて組み上げていく。各地方からやってくるので、この週は北海道、この週は宮崎・・・講師やサポートしていくメンバーの予定が大まかに決まり、形が見えてきた。ただ、その頃アトリエメンバーから連絡が入る、「有楽町店の閉店日が決まらないらしい・・・」不穏な空気が流れ始める。
詳しい内容は大人の事情で割愛するが、想定より1ヶ月前倒すなどの情報があり、閉店日が決まらないためコイヤメンバーのスケジュールが決まられない。メンバーは日本中からやってくる。一体どうすれば良いのだろうか。パワープレイスの方達と相談し苦肉の策として1ヶ月の短縮版スケジュールも用意して、両軸で予定を詰めていった。ご多忙な方、あまり頻繁に連絡の取れない方、日に日にスケジュールが動かせなくなっていく、講師のスケジュールだけではなく、印刷物を中心としたコンテンツの遅れもあり僕たちは焦り始めた。いい加減スケジュールが動かせなくなり、短縮版でやっていくしかないと決め始めた頃に閉店日が決まった。当初通りの12/3だった。時すでに遅しで一部はもう元に戻せない。若干の不本意な部分がありながら短縮版を元にしたReスケジュールで本番を迎える事になった。ただ、短縮版スケジュールのおかげでオープニング時には、コイヤ主要産地が揃うという奇跡が起きたのだった。

   
 
   
 
  中盤戦
   
 

イベントのスケジュールが決まると次はワークショップ内容の精査。本イベントで作るアイテムは品質保証部に全てチェックしてもらうことになった。正直簡易チェックで終わるかな、と思っていたが、さすが一部上場企業。ほぼ全てのアイテムに簡易ではあるが試験を行った。

   
 
試験の種類は沢山あるが、今回のケースは高いところから落として細かい危険なパーツがでないかチェックする落下試験や、成分に有害な物質が含まれていないかを確認する素材試験を中心に行った。試験の合否は様々な要因があるため、これは試験受からないだろうと思っていた商品が受かったり、逆にこれは受かるだろうと思うアイテムが落ちたりする。試験は手配を含めて難航し展示会が始まる直前まで試験をしていたアイテムもあった。無印デザイナー小嶋(アトリエ担当)中心によく最後まであきらめず試験対応をしてくれたと思う。
品質保証部のOKもいただきnetに募集をかけると3日間ですべてのワークショップが埋まった。かなりのスピードである。正直、床貼りとか不安に感じていたが全然問題なかった。自分なら躊躇してしまうが、お客様の未知なるものに対する好奇心か、それとも無印良品ならではの安心感の勝利か。とにかくすべての日程が埋まり、後はやるだけだ。
 
   
 
  小さく作って欲しいとお願いしたのに、とても立派にできていた端材ガン。 小嶋と二人で開いた口が閉まらなかったが、無事合格した。
   
   
 
  終盤
   
 

設営は、少々のトラブルも発生したが、概ね順調に終わり怒涛の2ヶ月間が始まった。
当初は、ワークショップをこなしていくだけと思っていたが、すぐに問題が発生してきた。それはイベントまでに確認すべき事柄が不足していたということだった。例えば、荷物の量が初期段階から聞いていたものと違う、到着日が違う、置き場所がない、火は使えるのか、情報が錯綜する。有楽町店自体も閉店前でピリピリしている。毎週アトリエ事務所では問題が発生し、火消しの調整が行われていた。私の段取りが悪かったせいで多くの問題が発生している。現場に入っていればフォローできる部分もあったかもしれないが、基本は京都にいるのでドキドキしながら1日1日が無事に終わる事を待つしかできなかった。

 
パワープレイス・内田洋行チームを中心に、連日現場での最終調整・フォローをしていただき、ようやくワークショップが運営できるといった状況だった。この2ヶ月間は週末の度に心が重かった。特にフェイスブックを見ると生きた心地がしないので極力時間をおいて見たりした。毎週水曜日の出社の度に、小嶋と今週は大丈夫かな、、、と励ましあった2ヶ月だった。今回の救いは、ワークショップが告知から3日で全て埋まったように、お客様が期待を持って変なコトをしようとやってきている。かなり前向きな精神状態であり、講師の皆様の現場力の高さも相まって、無事2カ月間の展覧会が終わることができた。毎週のように姿を変えて会場が生きているような展覧会は、来る人々に驚きを与え、有楽町店閉店のフィナーレに花を添える事ができたと思う。  
   
 
   
 
   
 
   
 
  閉幕
   
 

今回の展覧会を通じて、プロトタイプからできるものづくりの可能性を感じた。
元々ノックダウン(半製品)で販売するキットのような商品を考えていたのもあるが、ワークショップで作ることで、お客様の反応を見て作りやすくする方法、改良すべきポイント等様々な検証ができた。パソコンのOSがアップデートするように、コイヤの商品もアップデートをしていけば良いと思う。商品を作り、ワークショップで検証し、アップデートして、また作る、繰り返す事でより良い完成形に近づく。またその過程でファンも生まれてくる。それは、今までの大量生産とは違う、消費者や生産者に寄り添ったものづくりと感じる。トライ&エラーを繰り返しながら、いつか、家ごと作れるような「木を見て森を見る!展」をやりたい。

   
 
   
 
  最後に
   
 

参加していただいた皆様、関係者皆様、今回は不慣れな点も多く大変ご迷惑をおかけしました。中でも尋常じゃない仕事量をサクッとこなしてくれたパワープレイス、内田洋行の皆様、特に細やかな配慮・フォローを常にしてくれた奥さん、最後までご尽力いただき本当にありがとうございました。反省点は大変多いですが、この展覧会があったからこそ、コイヤメンバーの繋がりがより濃いものになったと考えます。なかなか商品化までの道のりは長いですが、一つ一つの精度をあげて発表に向けて進めていきたいと思います。
引き続きどうぞよろしくお願いします。

   
   
   
   
 

●<こやま・ゆうすけ> torinoko代表

   
 
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