スギダラ広場
  にっぽん飫肥杉仮面ばなし/第14話「きんたろ」

文/ 河野健一

   
 
 
 

 皆さんご存知の金太郎。○の中に「金」の1文字が堂々と大胆に書かれた、赤いアレを身に付けている彼。あのアレの名前を知らなかったので、調べてみました。腹当て、腰当て、腰掛け、腹掛け、腹巻、裸エプロン、などなどたくさん出てきて、よく分かりません。アレの色は赤いので、きっと、ボクと同じカープファンなのでしょう。

 そんな、金と書いた赤い裸エプロン姿の金太郎は、山の動物たちと友達でした。毎日毎日、すもうをして遊んでいました。いつも勝つのは金太郎で、体の大きなクマでもかないません。綱引きもしました。金太郎1人と、山中の動物たち全員との勝負。クマ、ウシ、ウマなどの力持ちもいましたが、やっぱり金太郎にはかないません。動物たちからは「金ちゃん」と呼ばれています。

 とっても力持ちな金太郎ですが、動物たちから恐れられたり、嫌われたり、闇討ちにあったりすることなど、一切ありませんでした。赤い裸エプロンや、おかっぱ頭、まっすぐ前髪、むき出しのオシリをバカにするものもいませんでした。なぜなら、金太郎が、とても優しかったからです。動物たちが困っていたら助け、相手の心を思いやり。ものすごい力を発揮するのは、誰かを助けるときか、とことん遊ぶとき。

 秋になり、動物たちは金太郎を栗拾いに誘いました。金太郎は喜んで動物たちの後をついていきます。山道を進み崖の辺りまで来たとき、先頭集団が困っています。「どうしよう。橋がなくなっているから、向こう側へ渡れないよ」「よーし、ボクに任せとけ」金太郎は、近くにそびえ立つ太くてまっすぐな飫肥杉を見つけました。「ちょうどいいぞ!」と言って、その大きな飫肥杉に「ドーン!!」と体当たり。

 一撃目。太い飫肥杉がメトロノームのように揺れました。さすが、曲げに強くて船の材料としても活躍している飫肥杉です。しなりながら、びよんびよよん揺れ続けます。「ゴトッ」何かが飫肥杉の枝の辺りから落ちてきました。飫肥杉の上で昼寝をしていた飫肥杉仮面です。高所恐怖症のくせに、グッスリ眠れていたのでしょうか。「驚かせちゃって、どうも、スギマセン」

 「もう1回、やってみるよ」金太郎が言うと、動物たちが大声援を送ります。「金ちゃん、がんばれ!」「金ちゃんのドーンといってみよう」「金ドン!」「金ドコ!」「飛びます!飛びます!」

 金太郎は、さっきより勢いをつけて、飫肥杉に「ドーン!!」と再び体当たり。すると、衝撃に強くて丈夫な飫肥杉でも、金太郎のMAXパワーにはかなわないらしく、見事に折れてしまいました。金太郎がそれを軽々と持ち上げて谷に架けると、あっという間に一本橋のできあがり。「わーい。どうも、ありがとう」動物たちは大喜び。向こう側に渡れる喜びに加え、大好きな金太郎が架けてくれた橋を渡っているという、この最高の感動と感謝。あたたかな愛を感じています。

 おかげで、動物たちはたくさんの栗を拾うことができました。山に持ち帰った動物たちは、家族や友達らと一緒にホックホクの栗を食べ、おなかも心も満たされました。みんな幸せそうです。

 その後、強い力と優しい心を持った金太郎は、立派な若者になり、都のえらいお侍さんの家来になって、悪者どもを次々にやっつけたり、野球チームを結成して監督をしたりしたそうです。

おしまい

 
   
   
   
   
  ●<かわの・けんいち> 日南市役所 広報担当 / 日南市 飫肥杉課OB / スギダラ飫肥支部 広報宣伝部長・会員番号441
   
 
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