不定期連載

かみざき物語り 第6回
文・写真 / 植村幸治
もうすぐ橋が架かる上崎地区、架橋を通してまちが動く!?
 


なんだかんだいいながら、上崎橋は今秋11月に開通を迎えます。
今回のかみざきものがたり6回目は、事業者である宮崎県東臼杵農林振興局の植村さんにお願いしました。
現場からいつもとやや違った視点で報告していただきます。南雲勝志


 
●突然、私が「かみざき物語り」を書くことになった理由

 先日、日南・油津ワーキングに参加するため、南雲さんが宮崎にみえたので、少し時間を頂いて宮崎県庁で上崎橋の最終仕上げと竣工イベントへ向けての打合せを行いました。
5時になってエアコンも切れたので 、県庁横の居酒屋「のらくろ 」に場所を移し、打合せの続き(?)をしていると「植村さん、今度の月刊杉に掲載するかみざき物語りを書いてくださいよ〜」と南雲さんが横でつぶやきました。
心の中では、「かみざき物語りの第1回では、僕のことを頼りにならないとか書いているのに、何で頼むんだよ」と思いながらも、少し酔った勢いも加勢して簡単に「良いですよ」と答えてしまいました。
 そんな訳で、今回の第6回目は宮崎県東臼杵農林振興局の植村が担当します。
とはいっても、物語として報告する程の話題とボリュームを探しきれない乏しい私の観察力では、最近の話題だけでは紙面を十分に埋めきれないと思いました。
 そこで、これまでの5回の「かみざき物語り」は比較的美しい(順調な)物語として構成されていますが、違った視点から「上崎プロジェクト始まりのもう一つの理由」と 「前祝いと開通式」について述べ、最後に「工事の近況」を報告します。


●上崎プロジェクト始まりのもう一つの理由
   

 2年前の4月、私は今の職場へ異動になりました。異動先の職場では「平穏な日々を過ごそう」と心に決めていた私ですが、前の職場(宮崎県油津港湾事務所)の堀川運河で出会った南雲さんの熱さが忘れられず、何となく物足りなさを感じながら、新しい職場での数日を過ごしていました。
 このような時、同じ係で仕事をしていた梶原さんが担当していた上崎橋の詳しい話を聞いていると、林道工事を初めて担当する私にはあまりにもショックでした。というのも、私にはこの橋が人口80人余りの上崎集落と対岸の国道を結ぶためだけに架けられているようにしか見えなかったからです。
(本当は、林産物の搬出や広域的な林道ネットワークを形成するうえで重要な橋です。)
 丁度、新たな刺激を求め始めていた私は、「林道橋だから、県産材を使う理由が十分にある→県産材利用を前提に橋梁高欄等のグレードアップを図ろう→とにかく県産材、そのための予算だったら何とかなるはず→そうすれば、日向市などで杉を虜にしている南雲さんを呼べる→また、何か楽しいことができるかも」などと勝手に頭の中で勝利(?)の方程式を組み立てました。
 梶原さんとの間では、「県産材利用→住民参加の橋づくり→住民の橋への愛着が醸成→橋を使った地域づくり→橋を架けて良かったとみんなが思える」などと良いことづくめの方程式を組み立てて、何とか周りを説得し、周辺景観や木製高欄デザインの検討を行うための予算を獲得することができました。そして、私にとってはめでたく南雲さんとの再会を果たすことができたのです。

 

●イベント(前祝い)と開通式
   
 開通イベントの日程が11月19日(日)と20日(月)に決まりました。19日は木製手摺の取付、トロッコやリニューアルした上崎駅のお披露目(地区の人達は前祝いと呼ぶこととした) 、そして翌20日(月)はそれなりの関係者を集めた開通式を行うことになりました。
 これが決まるのに大変苦労しました。「何で2日に分けて開通式をしなければならないのか」上崎地区の一部の人には理解して貰えませんでした。 「手摺の取付で開通を祝うより、それなりの人達を呼んでくるオフィシャルな開通式の方が重要だ、手摺なんか形式的に2、3本取り付ければ良いじゃないか」と言う出す地区の人もいました。これには参りました。
「上崎地区は地理的に孤立していた分、まとまりが有る」と自負していた地区の人達を今回のプロジェクトが原因で二分してしまったような気がしました。そして、ついつい私も「地元が嫌なら無理にしなくて良いですよ、どっちにしても橋はできますから」と投げやりに言ってしまいました。
 しかし、さすがは孤立しているが故に、これまでも色んなことを自分達で解決してきた地域の伝統なのか、地区内での打合せを重ね、前祝いの重要性を理解してくれました。
 
 さらに、これまでは行政主導で進めていたワークショップもすべて地元の若手主体で構成された「ふるさとづくり推進協議会」で開催することになりました。早速、これまで2回のワークショップ(WS)に参加してくれた九州保健福祉大学のボランティアセンターに連絡をとって、掲示板にチラシを張ってきたそうです。(上)
 世代を越え、色々な感情のぶつかり合いを重ねる度に、またひとつ地域のまとまりが増したように感じられます。
 先日、「予算と人に恵まれたスペシャルプロジェクトではなく、上崎みたいに日本全国どこでも有りそうな小さなプロジェクトから何かを発信することが大切だと思う。」と南雲さんが言われてました。同感です。
 これからが本番です。まだまだ、やらなければならないことがたくさん有ります。

 

● 上崎橋工事の近況
   

これまでの2回の上崎WSで伐採、玉切り、搬出したスギは、マルウッド(田丸さんの工場)で加工したあと、防腐処理工場へ送り込まれ、先日、マルウッドへ戻ってきました。表面の仕上げを行えば、いよいよ取付を待つばかりです。
現場は、橋梁の塗装が終盤を迎え、橋梁の取付道路の仕上げ工事が本格化してきました。

 
手摺用木材

 

親柱用木材。

現場の近況。ようやく養生が取れ始め地区民と一緒選んだ色が徐々に見えてきました。 格好いい。最高です。(上崎地区から望む)
地区の人達も 「結構良いね」 「国道の下流側から遠目に見ると、これまたかっこいいね」なんて、言ってました。

● 高千穂鉄道に関する記事
   
  冒頭の南雲さんとの打合せを行った日の地元紙の朝刊に高千穂鉄道に関する記事が出ていました。 即座に廃止では有りませんが、非常に厳しい内容です。

高千穂鉄道の台風の被害に関しては07号で飯干淳志さにも語っていただきました。
 
 
 
去年の台風14号で流失直前のTR鉄橋。

  記事はクリックで拡大します。


   
●<うえむら・こうじ> 宮崎県東臼杵農林振興局

   

   
   
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