連載

 
新・つれづれ杉話 第7回 「デザインは本当に身近なものになったのか?」
文/写真 長町美和子
杉について、モノづくりについて、デザインについて、日常の中で感じたモロモロを語るエッセイ。
 

 
 

今月の一枚

※話の内容に関係なく適当な写真をアップするという身勝手なコーナーです。

数年前、仕事で出かけたパリで見つけた落書き。なかなかいいでしょ、特に右が。

 
 

  「デザインは本当に身近なものになったのか?」
 

●人混みが苦手で去年も行かなかった「100%デザイン」に行ってきました。いやー、やっぱりすごい人だった。それもごく普通の「デートの途中で来ちゃった」みたいなカップルがいっぱい。3時頃には当日チケット売り場に長蛇の列ができてて、会場の外側までぐるりと回っていました。デザインって今や立派にお金のとれるイベントになるのね、とちょっと驚き。入場料も高いけど、出店料もかなり高額だと聞きました。でも、金を払えば誰でも参加できるのか? というレベルのモノもいっぱいあって、なんだろねぇ、と思ったりもしました。表参道の露天商じゃあるまいに、一人でアクセサリー売ってる人もいるんだから。それが単なる展示だけのブースよりも人気があったり、食べものを配ってるブースに人が群がっていたりして、ちょっとむなしい……。
 ところで、そんな人いきれムンムンのテントの中に、「馬路村」というなつかしい文字を発見! 近寄っていくと、並べられているのはスギダラの実直かつ剛胆な路線とはちょっと違って、モナカの皮みたいに軽く薄くふくらんでる杉のトレイ。馬路村と杉という二つのキーワードさえあればもう大丈夫、とばかりにつかつかと寄って行って、おもむろに名刺を渡し、スギダラのPRをしてきました。何者だと思うよね(笑)
 何年前になるのか、二日酔いの関根さんとミロモックルの視察に行った時、そういえば「エコアス」にこのトレイも飾ってありました。馬路村、本当によくやってます。総務企画課の井上さんからいただいた名刺も杉の突板でした。
 最近、とある企業の合併に際してカタログや会社案内、広報誌の製作のお手伝いをしてるのですが、外部に対していかに情報を発信していくか、どのようなイメージを持ってもらうべきか、これまであんまり意識したことがないらしいのです。日頃当たり前だと思っていることが、会議で話してもすんなり伝わらないもどかしさ! 考えてみれば、「誰にどんな気持ちを伝えるためにどんなモノをつくるか」ということって、いちばん基本の「デザイン」なんですよね。それが、プロダクツや建築空間に関係あることだとわかりやすいみたいなのですが、営業ツールなどの実務上必要なモノの話になると「デザイン」なんて誰も気にかけない。「わかりやすければいいじゃないですか」になっちゃう。
 この自分が置かれた現状と、100%デザインの熱気あふれる空気とのギャップに苦しんだ1日でした。

 


  <ながまち・みわこ>ライター
1965年横浜生まれ。ムサ美の造形学部でインテリアデザインを専攻。
雑誌編集者を経て97年にライターとして独立。
建築、デザイン、 暮らしの垣根を越えて執筆活動を展開中。
特に日本の風土や暮らしが育んだモノやかたちに興味あり
 
 
   
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