連載

 
あきた杉歳時記/第12回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
 

2月の秋田は、横手のかまくら、男鹿のなまはげ柴灯まつり、湯沢の犬っこまつりなど、県内各地では小正月行事が盛んです。雪景色の中で行われる幻想的なお祭りが多いのですが、今年は記録的な暖冬。雪による交通の不便さは解消されて人出は増えているようですが、祭りに使う雪をかき集めたり、山火事の心配などの影響がでています。このまま温暖化が続けば生態系だけでなく伝統行事なども変わってしまうかもしれません。

さて先日、能代商工会議所からの依頼で、秋田杉のブランディングについての講演をしてきました。もちろん秋田杉の専門家ではないので、秋田杉に関する文献やインターネットを調べたり人に聞いたりあらためて「秋田杉」について勉強する機会がありました。
まず「秋田杉」というと、たいていの人が「天然秋田杉」「三大美林」「高級化粧材」などのイメージを抱いているようですが、実際の「秋田杉」とはギャップがあります。 

  

さて先日、能代商工会議所からの依頼で、秋田杉のブランディングについての講演をしてきました。もちろん秋田杉の専門家ではないので、秋田杉に関する文献やインターネットを調べたり人に聞いたりあらためて「秋田杉」について勉強する機会がありました。

まず「秋田杉」というと、たいていの人が「天然秋田杉」「三大美林」「高級化粧材」などのイメージを抱いているようですが、実際の「秋田杉」とはギャップがあります。

 
  日本全国スギダラケ倶楽部秋田支部長として熱弁をふるっているところ(^-^;)
 

秋田杉は秋田県北部の米代川流域に産出する杉です。戦争や乱伐により天然秋田杉が希少となり、現在では「天然秋田杉」と一般材の「秋田杉」とは区別しています。ただし「天然秋田杉」といっても、江戸時代末期に人工的に植林されたもので、まれに、200〜300年の木が残っていますが、概ね樹齢150年以上のものを「天然秋田杉」といっています。いっぽう「秋田杉」は樹齢60〜80年程度の材で、その大半は天然林秋田杉の種から栽培された造林杉です。ちなみに、もともとあった天然林材に手を加えて育成した造林杉の産地には、秋田杉の他には、吉野杉(奈良県)、天竜杉(静岡県)、魚梁瀬杉(高知県)、智頭杉(鳥取県)などがあるそうです。
「天然秋田杉」の特徴は「樹齢を重ねてもまっすぐ成長するため、年輪幅が均等で細かく美しい木目が見られる。淡紅色の材質でツヤがよく、軽く弾力性に富み、香りがよい」とされています。でも「秋田杉」は「天然秋田杉」ほど年輪幅が均等で細かくないし、植えられた環境によっては色やツヤも様々で、「秋田杉」と聞いて思い浮かべられる共通の「こういう杉だ」といえるイメージや価値は実は定まっていないのです。
ただ天然秋田杉の特徴にしても、いわばマグロの大トロにあたる部分をいっているわけで、赤身や中落ちにあたる部分もあるのです。マグロもそれぞれの部分に旨みや栄養があるのと同じように、杉も様々な特徴を持った良い部分があるのに、大トロの評価しかないというのは、杉を粗末にしているようなきがします。昔の人はそれこそ最後は薪にして余さず大切に使ってきました。銘木や役物だけでなく、並材だってりっぱな秋田杉です。節があっても無垢材としてふんだんに使える秋田杉の新たなレシピ(使い方)を考えることで、これからの秋田杉へのイメージや評価も高まっていくのではないでしょうか。 

 



   
    菅原家の定番メニュー「とろろごはん」では杉のおひつが大活躍!   だいたい1人3杯はおかわりしてくれます。
  中央が味噌仕立てとろろ。左奥がほっけの開きにもやしとニラのナムル、ダシに使った野菜(ゴボウ、にんじん、干しシイタケ)、しもつかれ(宇都宮の郷土料理)  
  
 
     
  また、秋田杉が与えてくれる体験には「使う」「見る」「触る」といったほかにも、「知る」「人と交わる」といった、杉を通して「楽しむ」要素もあります。例えば山の仕事や道具のことを学べて、杉も自分もスッキリできる保育体験や、屋台を使ってのオープンカフェなどは新たな杉との関係としてもっとたくさんの人に体験してもらいたいですね。
さらに、人がどう杉とつきあってきたかという歴史をひもとく楽しみというのもあります。実は今回、秋田杉のことについて勉強するのに、野添憲治さんの著書が大変参考になりましたが、様々な発見がありました。それは「聞き書き 木都 能代の経営者」のなかに、昭和9年に秋田県製板同業組合で行った杉の産地を巡る全国視察旅行がきっかけとなって生まれた唄、その名も「お杉音頭」(!)です。静岡、愛知、高知、徳島、和歌山などの各産地を巡る旅行で、どこでも大歓迎。宴会では、小原節、串本節、東京音頭などが大流行していたので、秋田杉を宣伝するために唄を作っては?ということになり、作曲を中山晋平さんに作詞を時雨音羽さんにお願いしてできあがったのが「お杉音頭」なのだそうです。
中山晋平さんといえば、数々のヒットソングや童謡を作曲し、日本の大衆歌謡を代表する方じゃぁないですかぁ!そんなすごい人に頼んで作った秋田杉の宣伝ソングがあったなんて。しかもわざわざ能代に来て、芸奴に踊りの振り付けまでしてくれたとか。その後「お杉音頭」は能代の宴会で盛んに唄い踊られていたそうです。ぜひ秋田支部の宴会芸としてマスターしなければなりませんね。(笑)
ともかく、こうしていろんな人とのつながりが生まれていく魅力にとりつかれたら「もう杉はやめられません!」となるわけです。つながりが生まれたら、次はそこにふさわしい杉の舞台を用意する、そうしてスギダラケにしていこうという「戦略」がこれからの「秋田杉」にはふさわしいと思うのですが、みなさんはどう思いますか?
 



  今月の秋田の杉苗君
   

    2月なのに晴天が続き、杉苗君も日を浴びて気持ちよさそう。  
   
    むむっ!?なんとなく幹の部分が茶色くなってきたような。   枯れているわけではないですよー。大人になってきたのかな?
 

  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務
http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長
   
   
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