連載
2月の秋田は、横手のかまくら、男鹿のなまはげ柴灯まつり、湯沢の犬っこまつりなど、県内各地では小正月行事が盛んです。雪景色の中で行われる幻想的なお祭りが多いのですが、今年は記録的な暖冬。雪による交通の不便さは解消されて人出は増えているようですが、祭りに使う雪をかき集めたり、山火事の心配などの影響がでています。このまま温暖化が続けば生態系だけでなく伝統行事なども変わってしまうかもしれません。 さて先日、能代商工会議所からの依頼で、秋田杉のブランディングについての講演をしてきました。もちろん秋田杉の専門家ではないので、秋田杉に関する文献やインターネットを調べたり人に聞いたりあらためて「秋田杉」について勉強する機会がありました。 まず「秋田杉」というと、たいていの人が「天然秋田杉」「三大美林」「高級化粧材」などのイメージを抱いているようですが、実際の「秋田杉」とはギャップがあります。
さて先日、能代商工会議所からの依頼で、秋田杉のブランディングについての講演をしてきました。もちろん秋田杉の専門家ではないので、秋田杉に関する文献やインターネットを調べたり人に聞いたりあらためて「秋田杉」について勉強する機会がありました。 まず「秋田杉」というと、たいていの人が「天然秋田杉」「三大美林」「高級化粧材」などのイメージを抱いているようですが、実際の「秋田杉」とはギャップがあります。
秋田杉は秋田県北部の米代川流域に産出する杉です。戦争や乱伐により天然秋田杉が希少となり、現在では「天然秋田杉」と一般材の「秋田杉」とは区別しています。ただし「天然秋田杉」といっても、江戸時代末期に人工的に植林されたもので、まれに、200〜300年の木が残っていますが、概ね樹齢150年以上のものを「天然秋田杉」といっています。いっぽう「秋田杉」は樹齢60〜80年程度の材で、その大半は天然林秋田杉の種から栽培された造林杉です。ちなみに、もともとあった天然林材に手を加えて育成した造林杉の産地には、秋田杉の他には、吉野杉(奈良県)、天竜杉(静岡県)、魚梁瀬杉(高知県)、智頭杉(鳥取県)などがあるそうです。 「天然秋田杉」の特徴は「樹齢を重ねてもまっすぐ成長するため、年輪幅が均等で細かく美しい木目が見られる。淡紅色の材質でツヤがよく、軽く弾力性に富み、香りがよい」とされています。でも「秋田杉」は「天然秋田杉」ほど年輪幅が均等で細かくないし、植えられた環境によっては色やツヤも様々で、「秋田杉」と聞いて思い浮かべられる共通の「こういう杉だ」といえるイメージや価値は実は定まっていないのです。 ただ天然秋田杉の特徴にしても、いわばマグロの大トロにあたる部分をいっているわけで、赤身や中落ちにあたる部分もあるのです。マグロもそれぞれの部分に旨みや栄養があるのと同じように、杉も様々な特徴を持った良い部分があるのに、大トロの評価しかないというのは、杉を粗末にしているようなきがします。昔の人はそれこそ最後は薪にして余さず大切に使ってきました。銘木や役物だけでなく、並材だってりっぱな秋田杉です。節があっても無垢材としてふんだんに使える秋田杉の新たなレシピ(使い方)を考えることで、これからの秋田杉へのイメージや評価も高まっていくのではないでしょうか。