連載

 

スギダラ家奮闘記/第17回

文/ 若杉浩一
 
 
 

みなさんお元気ですか? なんだか久しぶりな気がします。
今回は、僕らスギダラ3兄弟が東京スギダラオフィス計画へと思いを馳せたスギダラ空間プランのお話をしたいと思います。残念ながら、実現はしませんでしたが……。


 

一つ目は、某日本のデザインを振興する団体のエントランスのデザインです。
昔から付き合いのある方から、当社の椅子を「購入したい、安く」と僕の方に連絡があり、川上元美さんがデザインしたチェアを紹介しました。その後、営業を通じて、この施設のエントランスホールの面白い提案が欲しいとお話があり、千代田君と手がけることにしました。
他のフロアや事務所はどうなっているのかと確認したら、びっくり。日本のデザインを振興する団体なのに、日本のメーカーの家具を使うと各社間で問題が起こるから、ということでイタリア製の家具を選定したとのこと。
「何で、外国なんだ? 日本の代表だから日本でいいじゃないか? なんだかよくわからんな、まあいいか、その分エントランスは日本代表にしよう!! そうだ!! スギダラ空間だ!!」
あっという間に決定しました。千代ちゃんも盛り上がりました。
「千代ちゃん、屋台を置こう!!」
南雲さんへ連絡し、僕たちはかねてから南雲さん(今や、日本を代表する屋台デザイナー、全体で3人ぐらいしかいませんが)に頼んでいたコンパクト屋台(エレベータに乗るサイズ)を迷わずここに置くことを決めました。そしてスギカウンタ(杉子の大型版です)で全体を構成することにしました。まったく、こういうのは早い!! 南雲親分も僕らもスギが入ると最優先になるのです(事務所では困ったもんだと言われております)。
「世界に通うずるデザインの窓口に杉空間、決まった!! 外人と屋台でパーティー、いいぞー!! スギダラいよいよ表舞台に!」と勝手に盛り上がっておりました。そして図面を描き、提案書を作成し、心待ちにしておりました。

 
 
 
 

結果はなんと……。残念ながら某有名デザイナーが「僕がやる」と仰ったようで、おそらくイタリア風モダンインテリアになっているのではないかと、がっかりしております。そう簡単ではありません。業界には、本質よりネームバリューが優先される風潮がまだ横たわっています。
僕らは、そんなことには慣れております。へこたれないどころか、勇気と使われない次回へのアイデアの在庫が増えていくことを楽しんでおります。そうです、こんな話が僕らに来るようになっただけでも、凄いと思うことにしています。スギの道のりは永いが、今まで忘れてしまったものを取り戻すには時間がかかる。愛と一緒です。

 



 

もう一つは、スギダラ仲間から依頼があった仕事です。関連事務所をスギダラ化したいとの要望を受けました。これも盛り上がりました。話をしたらなんとノリちゃん(石田紀佳さん)も参戦。南雲さんもご意見番になり、プランをつくりました。現状を考えると、やや受け入れ側に負担がかかるかもしれないという思いはありましたが、現状で出来る限りのアイデアと、仲間の協力を前提として計画をつくりました。事前に関係者に協力を仰いだところ、快く了解してくれました(まったく、ありがたいもんです)。
依頼してくれた仲間達も、何とかスギダラデザインを実現したいとの思いがあり、僕たちは頼まれもしない余計なところまで含めてデザインしました。
「これが出来たら東京スギダラスポットが増えるね」
「集まる拠点になるよ」
一緒にデザインした仲間の間で盛り上がりました。しかし、やはりそう簡単ではなかった。スギダラを理屈や合理性、ましてや入札で判断するのは難しい。まだまだ壁があります。こちらも結果は残念でしたが、参加できることだけでも、数年前までは考えられなかったことです。


 

 

 

 

 

あせらなくてもいい、時代が解決してくれる、それよりも大切なものがある。それは、人です、仲間です。理解し支えてくれる仲間、それが事実を創ってくれると信じています。
ちょっと前まで僕達は、スギの家具をこっそり作って南雲親分や仲間と盛り上がっていただけでした。それがわすか2年弱でこんなにも話しや配慮をしてくれる仲間がいる。これこそ、スギの魅力。そしてダメでも一所懸命に応援してくれる仲間に感謝。あきらめませんよ、僕たちは。ダメから学ぶ未来がある。幾つものダメをみんなで埋める、余計なお世話をこれからも続けよう!! 
お〜〜!1


  ●<わかすぎ・こういち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない
活動を行う。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長




   
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