特集 杉道具 「暮らしをささえる杉の道具たち」

 
杉と桶作り
文/ 奥畑正宏 ・ 写真/ 阿部智穂
 
 
   

私が使う桶材の約半分が杉材です。意外に少ないと思われるかもしれませんが、これは、材積の話で、風呂桶等大きな桶にはヒバ材を使う為です。点数から言えば、八割以上が杉材ということになります。それだけたくさんの、杉の生活道具を作っていることになります。

おひつや寿司桶、味噌桶に漬物桶と、食に関する桶にはほとんど杉を使います。匂いがおとなしくて、軽いからというのが理由ですが、桶屋の立場から言えば、素直に割れると言うのが杉材を使う最大の理由です。六尺の原木を四つ割りにする時も、くさびを使えば思いのほか簡単に割ることが出来ます。木口に割金を当てて、軽く小槌でたたいただけで、自然と通直に割れていくような良材に出会った時などは、正に胸のすく思いです。

   
  【素直に割れる杉】
  くさびで割る   割った材とくさび
  くさびで割る   割った材とくさび
   
   
  また桶作りの道具にも、杉が使われています。刃物の柄は言うに及ばす、桶作りの定規である「型」、側板を削る為の治具である「馬」と「腹当て」、底板の削り台等がそうです。 杉に活かされて細工をし、その杉を活かすのが桶屋の仕事です。
   
  【桶づくりの杉の道具】   型
刃物の柄
  刃物の柄   桶作りの定規である「型」
   
  馬と腹当て   馬と腹当て
  「馬」と「腹当て」で側板を削る   側板を削る為の治具である「馬」と「腹当て」
       
  底板を削る   底板の削り台
  底板を削る   底板の削り台
       
  味噌桶底込み  

味噌桶底込み。底込みの棒は松。重さが必要だから。

   
   
  【南部桶正がつくる杉の道具】
  豆腐屋   飯切りとおひつ
  大豆を煮る時に大豆がふくらんで鍋からあふれないように側板だけの桶(底がない)。豆腐屋さんに頼まれて、古いものをみながらつくった。   生活道具の定番ともいえる飯切り(はんぎり=寿司やそうめんなどに)とおひつ。いずれも吉野杉。
       
 
 
  ●<おくはた・まさひろ> 南部桶正 http://homepage2.nifty.com/chi-ma/okemasa%20page/top.html
1965 大阪府堺市生まれ
1993 岩手県宮古市にて桶作りを学び始める
1994 岩手県早池峰山麓のタイマグラに工房を構える
   
   
   
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