特集 杉コレ in 都城

 
都城から日向へ
文/南雲勝志
 
 
 

スギコレの終了から4ヶ月。不思議なものでその記憶はなかなか薄れない。
昨年末に関係者で忘年会を行ったせいかもしれない。月刊杉の特集を組んだせいもあるかも知れない。先日東大弥生講堂で行われたシンポジュウム「国産材の利用促進を目的としたシンポジュウム」のせいかもしれない。本当の理由はわからないが、関わった人達のその後の連携が続いていることがその理由の大きな原因だと思っている。やはり経済的な連携だけでなく気持ちの連携が大切なんだと思っている。
なんと、今年度のスギコレ「杉コレクション2008 in 日向」がすでに動き出している。この特集の最後に紹介されている。継続性と切れ目のなさに驚いている。 一度とぎれた緊張を再び盛り上げることはなかなか難しいからだ。シームレスでぐるぐる回っていくような繋がり感が生まれつつある。これも海杉流なのだろうが。

さて遅くなってしまったが、今回のスギコレのデザインについて簡単に振り返ってみたい。入賞作品の10点はいずれもユニークでそれぞれが相乗的に魅力を引き出していたと思う。性格の違う作品達がハーモニーを醸し出しあっていた。印象的だったのはグランプリ「森の待合所」に代表される、従来の軸組に捕らわれない空間のつくり方が多かった点だ。「密度操作からつくる領域」、「杉木立」、「木漏れ光橋」などがこれにあたる。これらの作品で提案された新しい工法を完成させる事は、そう簡単ではないと思うが、部材の標準化、加工技術の工夫をすることで、今までにない魅力をもった商品化への可能性も感じさせてくれた。そのあたりのチャレンジはぜひとも続けていってもらいたい。
「Glowth」や「ぐるりん」は公園内でそのまま現実的に機能していた。杉の柔らかい素材、十分なボリュウム感など杉の特性を上手く利用していた。また「杉のカマクラ」、「杉メロ」は構造材ではなく、遊具としての新しい可能性を伝えてくれていた。
一方「MC-1000」は完成度の高さと実用性で人気を得ていた。コストのかかる加工ではあるが、杉の家具は安いものという常識を覆すに十分な説得力があった。素材コストと技術力は本来別々に語られるべきで、杉に関わる優秀な職人技術といったものはぜひ継承していってもらいたい。 祭事や森林のシンボルとして「Simabandha-Prevention against evil」も魅力的だった。農業との関わりや神社など、神の力を感じさせる要素が杉にはもともとあるからだ。 いずれにしろ、10点全体として「こりゃすぎぇ〜」を伝えていた。

いくら潤沢に材料があっても具体的に、わかりやすく市民に伝えることが出来なければ、まさに宝の持ち腐れになってしまう。先人達から引き継がれたその宝をどう再認識し、社会に広めていくかがスギコレの大きな目的でもあると思う。今後その流れを全国的に加速していくために、スギダラのオープン化も視野に入れているらしい。しかし、その前に元祖宮崎で確固たる足掛かりと継続性を確立してもらいたいと願っている。



 

今となっては懐かしいが、
実はこのポスターをつくるのも大変だった〜(笑)



スギコレ2008も開催まで8ヶ月。また楽しい作品と多くの人々の出会いが生まれるだろう。次回のテーマはより具体的な商品化を意識した方向にシフトしつつあるようだ。挑戦から実践、そして徐々に蓄積へと進んでいって欲しい。
とにかくスギコレは宮崎から徐々に全国に発信し始めた。このままいくと5年後にはいったいどうなっていくだろう。考えるだけでわくわくする。と同時に、こりゃ大変だ〜!と思うのも正直な気持ちである。



 
  ●<なぐも・かつし>デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部

 
   
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