越後杉も頑張るんジャー!

文/ 南雲勝志

魚沼の杉をどうする!?

 
 
  その出会いはひょんな事から始まった。

  2月17日、六日町はしんしんと雪が降り続いていた。遅い大雪だった。予想だにしなかった僕は駅から一歩も歩くことが出来ず、すぐにタクシーに乗って会場に行った。
その日は、魚沼出身直江兼続の生涯を描いた大河ドラマ「天地人」の放映を来年に控え、南魚沼市が開催した「大河ドラマを活用した地域振興シンポジューム」を聞きに行ったのだった。
 
 
地域振興シンポジュームが、ここ南魚沼市で開かれることに何か感銘さえ受けながら椅子に座った。あいにくの雪で観客の入りはイマイチのようだ。会場を見渡して、はじめから気になっていたのが「映像と舞台 直江兼続と地球泉隊のーりんジャー」の垂れ幕だった。

「ふざけてる・・・」内心そう思った。

井口市長の挨拶のあと、先進成功事例として長浜のまちづくりについて沢田氏の基調講演を聞いた。その次に登場したのは南魚沼地域振興局農林振興部のU部長であった。長靴を履きながら登壇した彼は腕を腰に組み、魚沼地域の農林振興の重要性を熱く訴え、先人直江兼続がこの地の農業にもたらした功績を説く。そして現代の我々が兼続の愛と義の精神をもう一度読み取り、未来に引き継ぐ必要性を感じ、「地球泉隊のーりんジャー」を結成した。と挨拶があった。
その後、兼続の亡霊のメッセージに感銘を受けた若者達がのーりんジャー結成するまでのいきさつの寸劇と、地域に貢献する彼らの活動が紹介され、最後はパフォーマンスまであった。
狐につままれた気分と、行政マンがでここまでやるのかよーという気持ちがが入り交じり、最初は少し混乱していたが、徐々にその存在が気になってしようがなくなった。

「これは、す、すごい!・・・」

疑心が感動に変わった瞬間だった。

 
  勇敢なのーりんジャー戦士達。胸には「の」の字、ヘルメットには直江兼続のシンボル「愛」の字が。

  その日の夜、シンポジュウム、天地人関係者の親睦会があった。たまたま隣に座っていたのが先ほどのU部長。のーりんジャーに感動したこと、そして実は日本全国スギダラケ倶楽部という活動があって、これこれしかじかの活動をしていて、多分通じる部分があると思うこと、ついては一度のーりんジャーとバトルをしつつ、魚沼の森林を語る機会をつくってくれるよう耳打ちした。
「そうですか、それはいい! ぜひやりましょう。さっそく予定を組みましょう!」
いとも簡単に承諾していただいた。

  翌日はひと通り現場を視察した。しかし、どこもかしこも雪で見えない。雪が溶けるとこうなります。そこでこういう事を考えています。その風景を想像するのだが、それにも限界があった。途中で視察を打ち切った。

そんな間も、昨日の「のーりんジャー」の残像がどうしても浮かんでくる。

 
どこがなんだかさっぱりわからない。
 

この話を誰かにしたくてしようがない。

視察終了後、吹雪のなか、若杉さんに電話をする。
「若ちゃんスゲー人達がいるよ〜、ステージで長靴で訴える人、行政マンなのにのーりんジャーとかいってパフォーマンスする軍団。僕らと同じ臭いがする。思わず今度会うことにしちゃったよ。事後報告だけど一緒に新潟に来てくれるかな〜」
すると
「そうですか〜、行くしかないでしょう! 今年はね〜ナグモさん、そういう運命の年なんですよ。やるしかないですよ〜」静かに、しかし熱く快諾してくれた。

東京に帰り、翌日さっそくU部長に電話した。
「例の件ですが、やりましょう!さっそく日にちを決めましょう。」
すると
「おぉ〜! 待ってました。了解です。こちらもすでに手を打ってあります。段取りを担当にスタートさせました。細かいことはそちらで詰めて下さい。」
さすがだ。そんな感じでとんとんと進み、3月14日越後杉セミナーが確定した。

スギダラのチーム編成は、最小部隊。東京からは三兄弟+デミ杉。新潟からは数少ない魚沼法人支部のフラワーホーム藤田社長、とその息子、満君。彼は実はICS時代の教え子だ。
セミナーの打合せはちっともしないが、若ちゃんとはこちらのチーム名で悩み出した。
やっぱりこっちは「飲むんジャー」ですかね〜? という僕のメールに返事が来た。

南雲さんへ
ととのいました。

黒霧、赤霧、白霧
ちなみにご存じない方のために、黒霧、赤霧とは宮崎都城にある霧島酒造の焼酎「霧島」シリーズの名前。 白霧とはクロ、アカに対して普通の霧島のことを指すときに使う。
宮崎出身 名付けて 「イモ焼酎飲むんジャー」
南雲さん「未来のために、朝まで飲むんじゃー  赤霧!」
若杉「今日も今日とて、切れ目無く飲むんじゃー 黒霧!」
千代田「出来ればカワイコちゃんと飲むんじゃー 白霧!」
3人合わせて「スギダラ全体 芋焼酎 飲むんジャー!」
・・・
  う〜ん、さすが。なぜ宮崎なのかは別としてもよくぞここまで考えた。しかも合ってる。
そんな調子でポーズまで決まっていった。 しかし、緑はどうする?ピンクは?紫は?
ほとんど意味のない悩みは尽きない・・・

  1ヶ月後、越後杉セミナー当日、高速を降りた六日町は減ったといえまだまだ1m以上雪が残っていた。こんな積雪を見たこと無いというデミ杉。やっぱりまだまだだなぁ。

会場に着くと、いきなりの企画にもかかわらず、農林、建築、行政から70数名の参加者が集まってくれていた。
 
 


  U部長の相変わらずの熱い挨拶、そして農林振興局から魚沼杉の現状を説明を受けた。続いて地元出身ということで僕から「人と人を繋ぐ杉とデザインの可能性」、そして若杉さん、千代田さんに全国のスギダラ活動紹介を紹介してもらった。WCが越後でも炸裂したのだ。この二人の最近のパワーはすごい。コンビを組んでからますますその勢いは増してきた。 会場からも「下手なコントよりずっとおもしろい」発言まで飛び出した。
どういう意味ジャー? (笑)

 
 

セミナー会場の様子。

   
 

南雲と・・・

  若杉、千代田のWCコンビ
  その後、地元の農林関係者、設計事務所の方々とパネルディスカッション。スギダラの話に感銘を受けながらも、地域、越後杉の未来はなかなか難しい。簡単には行かない。との意見も出た。しかしながらこの地、そして越後杉ならではの取り組みもあるはず。いくつかの具体的な活用論も出て盛り上がった。

いずれにしろ、地域の問題はその地域の人間だけでは難しい、これをひとつのきっかけに今後も力を合わせてやっていきましょう! ということで時間切れ閉会。

 
 

パネルディスカッションの様子。左は地元の木材、建築関係の方々。

  そしてセミナーのフィナーレは感謝の気持ちを込めて、なんとのーりんジャーが返礼パフォーマンスをしてくれた。
「スギダラには負けないぞ〜!」という力強い言葉も飛び出した。
残念ながら? 今回はセミナールームだったためか、長靴ではなくサンダルであったが、その他はフル装備。その勢いを間近で見られたことは感動であった。
 
机にはスギダラの正式名称の肩書きが・・・
   
 

魚沼の農林のために頑張るんじゃー。

  今後ものーりんジャーをよろしく。サラバじゃー!



 

三兄弟とのーりんジャー、全員揃って決めポーズ。




 


 

せっかくの出会い、のーりんジャーとスギダラ三兄弟と記念撮影をし、今後の結束と次の再開を誓った。 次は飲むんじゃーもフル装備で来るだろう。

しかしまだまだこれでは終わらない。
次は懇親会の会場、六日町ミナミスキー場にある旅館、「いろり庵」へと向かった。

 

恒例の自己紹介のあと、越後杉の未来について木材、森林関係、林業振興課の面々と激論した。セミナー時の具体的なプロジェクトの話もさらに加速していった。 ここまで盛り上がると、う〜んこれは行けるかも・・・
その席で、なぜかデミ杉は真っ赤な衣装持ち込みで、日向ひょっとこ踊りを披露した。
(画像省略)

 
 

最後は越後杉一本締めで決め、再会を約束して別れを告げた。
またひとつ楽しみが増えた。
寝る前にみんなで雪山を見ながら露天風呂へ。まだまだ妄想は続いていく。

出会いはいつもひょんな事から始まる。 しかし、それが無ければ始まらない。
今回の出会いからセミナー開催まで実現できたこと、それを心から喜んでいる。 きっかけとなった、ノーリンジャーやU部長始め、セミナーの実現に調整していただいた振興局の皆さん、WCとスギダラの面々、そして参加してくれた地元のすべての皆さんに感謝する。

さあ、俺たちも頑張るんじゃ〜! おおぉ〜〜!

さて、水面下ですすみつつある、振興局のIさんから提案のあった、あるプロジェクト。
キーワードは「ムリョウナノニタダミセン」あるいは「ミルダケナラタダ」
もうおわかりですね。時期が来たらその報告と、今度は魚沼ツアーで賛同者を募集します。

どうぞお楽しみに。

 

 

 

おまけ

 

  翌日は晴天。せっかく魚沼に来たから少しその辺を回ることにした。まずは隣町十日町にある内藤廣設計の十日町情報館へ。「さすがだね。」という言葉が漏れる。
そして十日町歴史博物館へ。石器時代から昭和30年代までの資料が並ぶ。古代農業社会から織物のまちとなるまでわかりやすく展示されている。資料もなかなか充実している。
一気に六日町に戻り、霊峰八海山神社へ。ここの杉並木も素晴らしい。スギダラの今後を祈願?したあと、八海山スキー場をちょっと見学。さすがに スキーはしなかったが、雪合戦をしてはしゃいだ。
次に「白の世界」富岡惣一郎(1922〜94)の作品を見に富岡ホワイト美術館へ、お昼に十割そばを食べ、東京への帰路についたのだった。

   
十日町情報館 図書館部。
 
   
八海山スキー場ですっかりスキーをした気分?
  八海山神社 入り口。
   
富岡ホワイト美術館
白と黒の世界







年度末の慌ただしい時期、一泊1.5日の短くも長い旅がやっと終わった。

  ●<なぐも・かつし>デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
 


 
 Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved