連載

 
吉野杉をハラオシしよう!〜“駆け出し”専務の修行日記〜第25回
文/写真 石橋 輝一
鍛え系杉連載。さぁ、吉野中央3代目と一緒に勉強だ!
 
   
 

こんにちは。連載25回目です。今月も奈良県吉野から元気いっぱいでお贈りします!

日頃、丸太を製材していると、いろんなモノに出会う事があります。
木は木なので、製材をして中を割ると、杉であれば綺麗な赤味が顔を出し、杉の香りが辺りに広がります。柱にしたり、梁にしたり、板にしたり、盤にしたり、様々な木材製品に製材していくわけですが、木は自然のものなので、全て完璧に木材製品が取れるわけではありません。今回は、中から出てきた“とんでもない物”をご紹介したいと思います。

まずは「鳥の巣」。

   
 
   
 
  杉の中に動物が作った巣!
   
 

写真をご覧ください。杉を製材したら、中から大きな空洞が出てきました。おそらく鳥が作った巣だと思います。写真は綺麗に穴が見えますが、製材をした直後は細かく裁断された木の皮や、食べ物の残りカスのようなモノが穴に入っていて、なんともカビくさい匂いがしました。この巣穴、本当に大きくて、赤味の部分がほとんど丸ごと無くなったような感じで、よく杉自身が折れずに残ったものです。
当然ですが、こんな大きな穴があると、柱や梁、造作材などの規格性のある製品には出来ません。原木市での僕の目利きミスとなるわけですが、この材は運よく、この杉を製材した翌日の工場に来てくれた奈良の家具職人さんが「これは面白い!」とお買い上げ頂きました。家具職人さんに要望で盤に製材し直すと、何とも面白い感じの杉盤になりました。

   
 
  板に製材すると、なんとも面白い感じの穴付き板となりました。
   
 

続いて「目割れ」。

   
   
輪に沿って、パックリと割れて抜けてしまいました。
   
 

以前に月刊杉でご紹介しましたが、「目割れ」です。目割れとは“冬場の水道管の破裂のようなもので、真冬に木内部に水が残っていて、それが凍って膨張し、木の繊維が分断されてしまった状態で、写真のように年輪丸ごと割れてしまうケースが珍しいですが、たまにあります。これまた僕の目利きミス。周辺部分で板などが取れますが、歩留まりがかなり悪いです。でも、人為的には出来ないモノなので、ある意味貴重かも!と思い、目利きミスを紛らわす事にしています。

さらに「虫」。

   
 
  白太の部分に産み付けられて孵化した虫!
   
 

これも以前にご紹介したと思いますが、夏場に丸太の状態で置いておくと、虫が卵を産みつけてしまいます。製材した後の木材は大丈夫なのですが、皮付きの丸太のままで放っておくとダメです。木の周辺部分の白い部分である「白太」が虫穴だらけになる事も少なくないです。
製材をしたら中から虫が出てきて、外に飛び出そうとして頑張っている様子は何とも感動ではあるのですが、白太が全く使えなくなるので、歩留まりが落ちてしまいます。夏場の原木仕入れと製材スケジュールの調整は非常に大事です。

   
   
 

綺麗な材が取れる時は勿論うれしいのですが、今回ご紹介したようなモノが出てきた時も製品にならないので損はしているのでガックリくる所なのですが、木の面白さ、自然の力にワクワクして、思わず仕事を止めて見入ってしまい、カメラを持ってきて何枚も写真を撮ったりしています。

つづく

   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴3年目突入!。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。
   
   
 
 Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved