連載
  杉と文学 第9回 『日本の杉』 高橋喜平 (全国林業改良普及協会発行)1973年
文/写真 石田紀佳
  (4コマまんがのおまけもあります)
 

「日本の杉」

   
 

月刊杉33号の北山杉特集で紹介されていた川端康成の「古都」を読むつもりでいたのですが、今回は時間切れ。伊豆の踊子くらいしか読んでいないわたしは「古都」も短篇だと思っていたのです。それが長編と知り、断念しました。
記事の冒頭に言い訳をもってくるのは避けたいのですが、夏に長編はなかなか読めませんよね。少なくとも東京23区内では夏休みの読書感想文ってけっこう酷ですよ。だから「古都」は読書の秋にとっておきます。

で、またもや文学ではなく(と毎度書きながら、文学ってなんだろうと自問しています)、本の紹介。いつかこの本について月刊杉編集部の人たちに見せようと機会をうかがっていました。杉本(すぎもとではなく、スギボン)を出そうといって何年かたちますが、この本をみつけたときには、あーもうやられてるよう、これ以上のものはなかなかつくれないなあ、と頭が下がりました。なんせ本の裏表紙には杉ぼっくりマークがあるんですから!

   
 
裏表紙
 
裏表紙
   
 

著者は20年にわたって数千枚の杉の写真を撮り、長年勤めた林業試験場を退職したときにさらに杉の旅を2ヶ月にわたって行い、この本を上梓しました(ちなみに杉の旅は家族総出で行われ、息子と娘は会社をやめて参加)。ちょっとやそっとではできない本なのです。

   
 
 
独自の視点で貴重な写真が多い。
   
 

一般の人に杉について近しくなってもらおうと、専門用語などは使わず書いてあります。そしてわたしが気にいっているのは「この本では杉を人間の友人としてとりあつかっている」というスタンスです。

   
 
 
目次のイラスト
   
 

項目はかなりしつこくて、

長寿の杉、上限の杉、林業地の杉、四季の杉、園芸の杉、縁結びの杉、杉の大杉
信仰の杉、天然の杉、極限の杉、林業の杉、栄光の杉、変身の杉、功徳の杉、受難の杉
はらみ杉、夫婦杉、越後の杉、杉の根元曲りの話、新たに発見された上限の杉、ウィルソン株、杉の葉の話、泉沢の一本過ぎ、縄文杉、太郎杉、杉の旅

となっています。もしこの方が御存命だったらスギダラの名誉顧問になっていただきたいものです。
この本、復刻されるといいのにな。
古本屋さんでぜひお探しください。

   
   
   
 
→おまけスギボックル その19
   
   
   
  ●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。
「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社
草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/
ソトコト10月号より「plants and hands 草木と手仕事」連載開始(エスケープルートという2色刷りページ内)
   
 
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