連載
  東京の杉を考える/第28話 「クラフトにできること」 
文/写真 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 

「クラフト見本市」が開催された。2008年11月21日、22日、23日の3日間。台東区のデザイナーズビレッジの体育館に全国から集まった約50組のクラフト品が並んだ。木工から漆、陶磁器、ガラス、布などの自然素材を活かした伝統の手業による現代のくらしの道具たちだ。この見本市は、流通やメディア関係者など、プロを対象にしたもので、良質な『作り手』と『使い手』をつなぎ、モノを売るだけでなく暮らしの価値観を伝えるような人たちを『結び手』と呼び、その関係を築いていくことが目的だった。

主催したのは、「財団法人クラフト・センター・ジャパン」(CCJ)。創立は1959年で、勝見勝さん、加藤達美さん、渡辺力さんなどそうそうたるメンバーが中心となっていた。1960年には、当時の丸善社長の司忠さんの多大な尽力により通産省(現経済産業省)管轄の公益財団法人として認可された。以来、優れたクラフト製品を発掘し、クラフトマーク商品として認定し、全国の丸善の常設展示場で販売し、一般の人への普及をすすめたきた。2004年に丸善が売り場を閉鎖し、スポンサーを撤退してからは、事務局を中野のモノ・モノ内に移し、リビングデザインセンターOZONEなどで展示会を開催してきた。

「クラフト・センター・ジャパン」は、来年50周年を迎える。これからの時代の「クラフト」を見つめ、地道な活動を続けていくことだろう。クラフトマーク商品の選定基準は、「技術的、造形的完成度があり、長期の愛用と鑑賞に耐えるもので、受注制作を含め反復生産に対応できること」を共通の条件として、「現代の暮らしの道具として、創意と活力ある提案性がある」「自然素材と手仕事が生きている。ただし、品質向上のための一部工業材料、機器の使用は否定しない」「土着性、風土性を創意ある視点で捉えている」「使い手への細やかな配慮がなされている」「作り手の労力と使い手の購買力の双方に配慮した、しかるべき価格設定がなされている」などの要素を評価している。

「クラフト」は「地域」と「暮らし」に根ざした活動である。そういう意味では、「スギダラ」の活動と似ていなくもない。大量生産、大量消費、大量廃棄ではないしくみづくり。生産者と生活者の顔の見える関係づくり。モノやお金だけに依存しない助け合いによる暮らしづくり。まだまだ、やるべきことはたくさん残されている。

   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て独立。プロダクト、店舗、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
   
 
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