「杉モノ・デザイン展」 報告
 

杉モノ・デザイン展に参加して 2

文/ 牛島智子
 

溝口さんから杉モノデザイン展の案内を頂いた頃、近くの水車が20年ぶりの付け替え工事をおこなうということで、水車ファンとしてはこれからも水車を力強く維持して、再評価されたく慣れない仕事ながら、御披露目会やら講演会の準備をしていました。

福岡県八女市上陽町にある馬場水車場主の馬場猛さんはご夫婦で杉の山守りもしながら杉葉を集め杉葉粉をつくってあります。
今回新しくなった水車は軸の部分は20年使った今までの楢の木を使い他の部分は杉材です。
杉も水車の円弧を出すためにまっすぐな杉ではなく崖や道沿いにせり出して育ったような木を捜して使うのだそうです。今回は日田の方から切り出された杉を使ったとのことでした。

   
 
  水車の動力を使って杵を搗き、線香の原料となる杉の葉を粉にしている「線香水車」。
   
 

また日本で多く使われている線香は大きく分けると白檀や伽羅、丁子などの香木を楠の木科のタブで繋いだ線香と杉の葉の線香があるそうです。私は蚊よけ線香として使っています。夏場は一日中蚊がいる仕事場なので気管支があまり強くない私にはとても重宝です。水車でついた杉の葉粉という素材で見るといろんな使い方が出来るのではないかと思ったりします。

馬場水車場では線香の材料として業者に卸してあります。しかし業者に渡ると現実仕方のないことも多々あるのですが、いろんな経営努力から香料が入ったり、色がついたり、煙が出なくなったり、とても安い値段になったり他々してしまうので、馬場さんも還暦を迎えて最後の付け替えだということもあり、馬場水車場でついた杉の葉だけで線香を作り、出来る範囲のパッケージで線香の記念品も作ろうと根気のいる慣れない作業をしていました。

そしてそんな作業中気になるのが杉モノデザイン展の印刷物、よくできている、おもしろそう。
「ねえ、これも杉よね」

関内が溝口さんに連絡を取ると、「どうぞ無理のないところで参加ください」とのこと。
飛び入り参加は申し訳ないと思いつつ、会期も始まっていましたが、乾燥した杉の葉と水車でついた杉の葉の粉と線香と少しの資料を送らせて頂きました。

自己紹介遅れましたが関内が木工をやっており、牛島が美術に携っています。
で、せっかくなら行ってみたいということで牛島は15日、関内は15、16日最後の土日に線香立て、杉の葉線香を並べて、線香作りのワークショップをやらせてもらったのです。

厳木の道の駅のすぐ前の道を降りていき、コミュニティセンターの脇をすり抜けていくようにあるこの感じがいい。「白水」が出来た時期とコミュニティセンターが出来た時代が随分違うのか空間の段差が出来ていて何があるんだろうと気持ちをくすぐるのです。

会場では先に送った線香をたいて展示をして頂いていました。
雲行きが怪しくなってぽつぽつと来ていた雨が一日中本降りになり客足が大変だろうなと心配もありましたが、雨が葦ぶきの屋根をしっとりと見せてくれ、湿度は土の匂いをもたらし、くぐもった外光は逆光になることがなく、電球の灯りが寄り添うように展示物を見せてくれました。
こういう建物は雨の日も晴れ以上に楽しませてくれる気がします。
有馬さんご両親も素敵な方で建物が人を作るのか、人が建物をつくるのか、この家にしてこの家族なんだなと思いました。

そんなしっとりと落ち着いた展示の中、線香作りワークショップの場所や案内板をササッと作っていただいたのは申し訳ないやら嬉しいやらでした。
ワークショップに参加した人は年齢もいろいろで興味をもって作っていかれるのが『やってよかったなあ』と思いました。

スギダラ北部九州の方にはお世話になるばかりだったのですが、また機会ございましたら声かけてください。杉の葉っぱ粉持って伺います。

   
 
 
  親子で、兄弟で、友達同士で夢中になって杉線香を作っています。早く家に帰ってお香をたきたい!そんなことを考えているのでしょうか。
   
   
   
   
  ●<うしじま・ともこ> 美術家 となりの仕事場
となりの仕事場は美術作家の牛島智子と木工家の関内潔の仕事場が隣同士なのでつけた名前ですが、二人で何かやるときあるいは、隣のとなりの仕事場が気になるときに使っています。
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved