連載  
  あきた杉歳時記/第30回 「秋のスギダラまつり弾丸ツアーin白水」
文/写真 菅原香織
  すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 

日向の杉コレの反省会が終ったのが午前2時。午後2時には秋田に着かなければならないので、翌朝6時出発。反省会に最後までつきあってくれたため、同じホテルに泊まった春杉さんとともに、日向駅に向かう。あの熱気に包まれた昨日の祭りが夢のごとく、駅前広場は日常の風景を取り戻していた。宮崎空港に向かう列車の中はサラリーマンや旅行者でほぼ満席だったが、春杉さんと通路を挟んで並んで座りながら、いろいろ話しているうちに宮崎空港に到着。佐賀での再会を約束して秋田への帰路につく。

 
 

主催者としてイベントを運営する立場から、スギダラのイベントに参加すると、「よぉーし、秋田でも頑張るぞー」と元気をもらう。同じ思いの仲間との交流はめちゃめちゃ楽しいし、勉強になる。と同時に、自分の非力さ、段取りの悪さ、配慮のなさ、徳のなさに激しく落ち込む。もっと出来ること、やらなきゃいけないことがあるじゃないか、という思いと、「でも・・・」とついつい出来ない言い訳を並べてしまう、自分への自己嫌悪。ただ、それも待ったなしの日常の業務に追われる中でついつい棚上げしてしまい、忘れかけた頃にスギダラメンバーから電話が入る。
「おーい、すぎっちー、元気にしてる?何で連絡しないんだよー!」まるでこっちの状況を見透かされたようなタイミング。電話の向こうは相当盛り上がっている様子。素面でハイテンションについていくのは大変だけど、いつのまにか気持ちが充電している。放っておかない面倒見の良さがスギダラ家の魅力なのだ。

 
 

杉コレから帰ってきて、あっという間に3週間がすぎ、11月7日。明日の午後から始まる杉モノデザイン展に行くため、秋田からは羽田を経由して最終便で福岡空港までいき、博多で前泊することになっていた。3時限目の授業が終り、空港に向かう前にメールチェック。するとウチダラさんからメールが。コンフォルトに掲載する杉モノデザイン展のレポート記事と写真撮影の依頼だった。正直告白すると「えっ?・・・ええ〜っ!!メール、見なかったことにしようかな」と一瞬頭をよぎったが、いつもさんざんご迷惑をおかけしているウチダラさんからのお願いを断るわけにはいかない。しかも南雲さんから「すぎっちが適任」と推薦されたとある。こうなったら腹くくるしかないか。心なしかちょっぴり重くなった鞄を背負って研究室を後にした。

   
  博多で前泊。中州の夜景。地元福岡出身のチヨダラさんの案内で、博多の屋台へ行き、長浜ラーメンを食べる。
 
 
 

翌朝、福岡空港で、スギダラメンバーと再会。杉モノデザイン展の会場は、お隣佐賀県の厳木(きゅうらぎ)という山間にある。車で一時間ちょっとで到着。会場近くになると「杉モノデザイン展→」の手作り看板が道案内をしてくれた。心憎い演出に期待感も否応無しに高まる。白水に到着し、当主の有馬一家のみなさんとごあいさつの後、ワクワクしながら会場へ。昔懐かしい民家の土間から酒蔵に入る。高い天井にはしっかりとした木組みが現れ、重厚な時の流れを感じさせる。かつて酒造りが行われていた場所に、新旧さまざまな集まった杉の道具たち。時間も忘れ一つ一つうっとり見ていると、昼食の準備ができたとのこと。お座敷に用意された心づくしのおもてなしにまたまた感激。午後からのセミナーではスギダラ3兄弟の絶妙なトークに湧き、その後の座談会では、参加した方々とかなり突っ込んだ話もできて充実した時を過ごすことができた。夜、食事会の際には好例の全員自己紹介、「Yes, We, Can . Yes, Sugi, Can!」のかけ声で締めくくったあとは、土間のいろりを囲みながら夜明けまでのスギダラ談義。半年間かけて準備してきたことが実現できた感動に、みな酔いしれていた。翌日にはスギコダマのワークショップを体験。杉の香りや感触を楽しみながら一心に削り、ペーパーをかける。みんな子どもに戻ったように、うれしそうに「こんなのができた!」と見せあった。

   
  杉モノデザイン展、案内板シリーズ
  杉モノデザイン展、会場の様子
 
 
  杉モノデザイン展、展示作品
 
 
  セミナー〜座談会〜食事会〜「Yes, We, Can . Yes, Sugi, Can!」
 
  スギコダマのワークショップを体験。講師は有馬晋平さん。一心に削り、ペーパーをかける。
 
   
 

帰りの飛行機、メモ帳をめくりながら、たった十数時間だけど実に濃かった一日を振り返る。

   
  億単位で開発しても短いサイクルで変わっていくデザインはなにかがおかしい・・・
人の知恵ととともに受け継がれる杉モノたち・・・
モノづくりには価値を認めてくれるユーザーや仲間の形成が不可欠・・・
デザインは人と人が集まって楽しいと感じる、生活の裏付けを作る仕事・・・
木が育ったときに木を使える人も育たないと・・・
大きな杉の話と小さな杉の話を融合させるヒントが今日の展示会・・・
自分が欲しいものは値段じゃない、そうやってモノは売れていく・・・
ワークショップは子どもたちに経験を作っていくデザイン・・・
感動を作っていくと価値観は変わる・・・
   
 

杉をきっかけに集まった人とモノの持つパワーが白水という媒体を通して多くの人の感動をもたらした秋のスギダラ弾丸ツアーin白水。頭(机上)だけで考えるのではなく、実際に見て、触って、味わって、楽しむ。共有した感動体験から、きっと新しい杉モノづくりが生まれるに違いない。

   
 

後日、コンフォルトの2月号が送られてきた。おそるおそるページをめくると、おおー!載ってる、載ってる。ウチダラさんの編集デザインのおかげで、自分が書いたとは思えないほどステキなページに。ふと、見開きの右側のページを見ると、スギダラメンバーの小町さんが書かれた記事が!きゃー、小町さんの隣なんて恐れ多い....でもおかげさまで良い記念になりました。ありがとうございました。

   
 

最後におまけ...杉モノデザイン展で採集したスギダラ語録
水も滴る杉イ男/どういうフリがいいですか?知らんぷりでいいんじゃない?/糠で拭いてぬか喜び/模倣ですよ、モーホーじゃないですよ/チェンソーって楽しいですよねー。そー。そー。/いいことやってるのに、移管式。/日南さってまた日南/運河にちなんだ、/マタギから直接聞いたから又聞きではない/ウラジミール・コルボショフ/オナゴスキー・ケンイッチ/スケベスキー・コウイッチ/ドスコイスキー・カオリッチ/ヒョットコスキー・デミズッチ/私をスギィーに連れてって/ゲソだけの唐揚げってアシカラ?/塩辛ありますか?・・・しおからしか!

   
   
   
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
 
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