連載
  杉と文学 第17回 『厠のいろいろ』 谷崎潤一郎 1935年
文/ 石田紀佳
  (しばらくまんがは休止します。)
 

小便器に杉の葉、については「陰翳礼讃」にも書いてあるが、そこではほめるばかりなのが、こちらの随筆は。
「朝顔へ杉の葉を詰めたのが最も雅味があるけれども、あれもどうかと思うのは、冬だと夥しい湯気が立つのである。それはその理屈で、杉の葉があるために流れるものが流れてしまわずに、悠々と葉と葉の間を伝わって落ちるからであるが、放尿中生暖かい湯気が盛んに顔の方へ昇って来るのは、自分の物から出るのだからまだ辛抱ができるとしても、前の人のすぐあとなどへ行き合わせると、湯気の止むのを気長に待っていなければならない。」

風流にもいろんな悩みがあるものですね。
機会があったら杉の葉にぬるま湯をかけてみましょう。

それにしてもほんとうにこの方はユーモアのセンスも抜群。エロティシズムとウイットが融合している人ってすてきだなあ、と思いますが、実際にあったらくどいのかしら。

   
   
   
   
  ●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。
「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社
草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/
ソトコト10月号より「plants and hands 草木と手仕事」連載開始(エスケープルートという2色刷りページ内)
   
 
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