連載
 

東京の杉を考える/第34話 「どうしたい にっぽんの家具デザイン」 

文/ 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 

6月17日。旭川家具産地展で、「どうなる にっぽんの家具デザイン」という鼎談の司会をした。話をしたのは、旭川の家具メーカーのカンディハウス会長の長原實さん、椅子研究家で東海大教授の織田憲嗣さん、全国を飛び回る元気な家具デザイナーの村澤一晃さんの3人。3人は、それぞれに持論を展開し、この鼎談がどのような方向にいくのか司会のぼくにもわからない緊張感のある時間だった。

長原さんからは、グローバルな時代であり、環境問題も無視できない現代における日本でのものづくりの方向についての提言があり、織田さんからは、生活者の立場に立った美しいものをつくるべきだと言う話があり、村澤さんは、既存の枠組みのとらわれないそれぞれの立場の人が同じ目標をめざして連携する必要があることを訴えた。

また、次世代を担う人材を育てる場の必要性や、家具を修理して長く使う習慣を根付かせる取り組みや、もっと家具づくりの情報を公開すべきだとか、家具の開発に時間をかけるべき、そして売り場との連携の必要性、あるいは家具デザインの批評が必要など、限られた時間の中で、様々な提言がなされた有意義な時間だった。

聞きにきた人は、それなりにヒントをつかんで帰ったことだろう。しかし、問題は、このあとに具体的にアクションをおこせるかだと思う。そもそも、「どうなる」というのは、他人まかせな言葉だ。本当は、「どうしたい」が重要なのだと思う。現状を嘆くのではなく、現状を客観的に眺め、それぞれの立場で何ができるかを真剣に考え、実行していく必要があるのだろう。

ぼく自身、よく見えないのは、林業と木工の関係。現在の家具は、木という素材を使いながらも、林業とは関係ない地点にある。家具づくりの人たちが、本気で旭川の森の資源に目を向け、デザイナーが旭川の森の資源を活かした家具のデザインを手がけることで、林業と木工の新しい関係が築ける気がする。それは、一朝一夕にはいかないかもしれないけど、そこに大きな可能性が隠されているのだろう。

7月16日、17日、18日、はじめての「旭川木工コミュニティキャンプ」が開かれる。東京から約25人、旭川から50人以上が参加する。ここでのテーマは、きっと「どうしたい にっぽんの木工デザイン」になることだろう。

   
 
   
 

「どうなる にっぽんの家具デザイン」
http://www.asahikawa-kagu.or.jp/event/2009show/teidan.html

「旭川木工コミュニティキャンプ」
http://www.mokkocamp.org/

   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
http://www.tsu-ku-shi.net/
   
 
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